ヒナの雌雄を瞬時に鑑別する力が、記憶力と関係していると言われたら、「なぜ?」と思わずにはいられない。本書は、記憶とは一見関係がないように思える、意外な例えを巧みに用いた、記憶力をめぐるドキュメンタリーだ。
本書の著者は、「普通の記憶力」から「全米一の記憶力」の持ち主になった。桁外れの記憶力を手に入れるために、著者は多くの「記憶術の達人」と出会い、その技術を学ぶことになる。達人たちは、皆たいへん個性的で、そのやりとりはまるでドラマを見ているように展開される。
記憶力は訓練次第で良くなるようだ。だが、本書を読めば、その訓練が簡単なものではまったくないことが分かるだろう。自分が興味のあることは、訓練をしなくても簡単に覚えられ、なかなか忘れないだろう。しかし、自分がまったく興味のないことでも覚えていられるようになるには、それ相応の訓練が必要なのだ。
訓練で左右される記憶の話以外にも、生まれつき人並みはずれた記憶力を持つ人物や、手術や病気で記憶力をなくした人物も登場し、「記憶」というものの謎は深まる。記憶に対するさまざまな考察と訓練を経て著者が手にしたものは、本書で確認してもらいたい。
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