先週、Appleが「近日中に」クラウド映画サービスを開始する予定だといううわさが流れた。このサービスでは、「iTunes」ユーザーはAppleのサーバからストリーム配信される映画を視聴し、それをほかのデバイスに再ダウンロードできるようになるという。だが、このうわさはよく言っても時期尚早のようだ。
米CNETが話を聞いた複数の映画業界情報筋によると、Appleは長編映画に関して、大手映画スタジオ6社のうち少なくとも4社とまだクラウドサービスの契約を締結していないという。米CNETが5月に報じたように、Appleは確かにそうした契約を求めているが、情報筋は、Appleが映画スタジオ6社すべてからクラウド関連の権利を取得できるまで、同社の交渉は何カ月にわたり続く可能性があると話す。情報筋によれば、サービス開始がすぐに実現することはないという。
クラウドコンピューティングとは、ユーザーが自分自身のPCではなく、サードパーティーのサーバ上でコンピューティング作業を実行する場合に用いられる用語だ。クラウドは次世代のメディア管理を担うと考えられており、多くの消費者だけでなくスタジオ幹部陣も、Appleがクラウドを使って何を実現するのか期待している。Appleは音楽のクラウドサービスを公開することをすでに発表しており、先週にはiTunesユーザーがテレビ番組を再ダウンロードできるサービスの提供を開始している。
しかしAppleにとって、映画のクラウドサービスはもっと難儀な問題になるだろう。それには、いくつかの理由がある。
理由の1つは「HBOウィンドウ」だ。HBOは特定の期間(映画業界ではよくウィンドウと呼ばれる)、大手映画スタジオ6社のうち3社の映画について独占的に電子配信する権利を有している。その3社とは20th Century FoxとUniversal、Warner Bros.だ。HBOのウィンドウ期間中、これらのスタジオがリリースした物理的なDVDを販売したい小売業者は、自由にそうすることができる。しかし、オンライン小売業者はこの期間中、HBOに独占権のあるスタジオ3社の映画のダウンロード提供が法的に認められておらず、それらのスタジオのタイトルをストリーム配信することもできない。つまりiTunesは現在、HBOウィンドウ期間中の映画はユーザーにストリーム配信することができず、ユーザーはHBOウィンドウの外でその映画を購入してしまっているかもしれない。
これらの契約は、Appleのクラウド型映画サービスの公開が遅れている理由の1つであるだけでなく、「UltraViolet」にとっても障害になっている。UltraVioletはDisneyを除いたすべての大手スタジオが支持しているクラウドプラットフォームだ。
さらに、業界消息通によると、Appleはスタジオ各社とさまざまなビデオオンデマンド契約について話し合ったが、先週流布した、AppleがNetflixに対抗するサブスクリプション映画サービスの提供で合意に達したという別のうわさについては、全くもって真実ではないという。
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