これらのことから主に導かれるのは、現在のクラウド動画の世界において、Time Warnerの最高経営責任者(CEO)であるJeff Bewkes氏こそが最も影響力を持つ人物の1人だということだ。メディアコングロマリットであるTime Warnerは、HBOとWarner Bros. Studios、およびCNNの親会社である。
複数の業界消息筋によると、HBOが映画のストリーミング配信を阻止しているのは、合法的に購入した映画をユーザーが手に入れることを妨げるという意図からではないという。HBOは自分の身を守ろうとしている。同社はクラウド動画サービスが登場するはるか前に、FoxとUniversal、Warnerを相手に電子配信に関する契約を締結した。それらの契約は手が込んでおり複雑だ。そしてHBOは、将来的に自らが不利な立場に置かれる羽目にならないことを確認しないままに、一定の権利を放棄したくはないと考えている。
HBOが避けたいのは、HBOウィンドウ期間中にペイパービュー方式で購入された映画のストリーム配信をサービスで可能にし、その後、サブスクリプション方式に変更して動画を販売する、というシナリオだと情報筋はいう。場合によっては、ライバル企業は緩和されたHBOウィンドウ期間を利用して、HBOの請求金額よりも安い価格でNBCやFox、Warnerの旧タイトルを提供し、HBOと競合する可能性もある。
これらはHBOが抱いているいくつかの懸念にすぎないが、それでも現在、Time WarnerとBewkes氏がクラウド配信と契約締結に向けて熱心に取り組んでいるといううわさが流れている。Time Warnerは大手スタジオの少なくとも1社と最終合意に達する寸前まで来ており、それが実現すれば、そのスタジオはHBOウィンドウ期間中のストリーミング提供の権利を販売することが可能になるという(時期については疑ってかかった方がいい。筆者は2011年春、夏の中ごろまでに契約が成立するという話を聞かされていた)。
したがって、Appleとクラウドストリーミング権の獲得を狙う同社の取り組みにとって視界は良好のようだが、時間はしばらくかかるだろう。HBOの独占配信契約の対象になっていないスタジオについては、現在の立ち位置は明確ではないが、情報筋によれば、Appleもこれらのスタジオすべてと契約を締結する準備が整っているわけではないという。AppleのCEOであるSteve Jobs氏はDisneyの最大の個人株主であるため、Disneyとの契約は確実に実現するように思える。Sony Picturesはクラウド配信とUltraVioletを積極的に推進しているので、Appleのパートナーになる可能性が高そうだ。
Paramountの場合、同スタジオの親会社であるViacomはデジタル配信に関して今までになく強気のようだ。ストリーミング動画事業ではGoogleやHulu、Amazon、Apple、Netflixが競争を展開しており、それによってコンテンツの価格が上昇している。ViacomのCEOであるPhilippe Dauman氏は先週、同社の収支報告の後でそのことに言及し、ケーブルや衛星放送事業者のような従来の映画配信業者もウェブ上での配信権の獲得を目指していると付け加えた。
したがって、ハリウッドが発しているメッセージは次のようなものなのかもしれない。誰がウェブ上で動画を配信するかに関係なく、コンテンツを欲するならば、お金を支払う用意をしておいた方がいい。なぜなら、お金を払わなければ、別の誰かが支払うことになるからだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
企業や自治体、教育機関で再び注目を集める
身近なメタバース活用を実現する
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」