アカデミー賞の季節となった。ダニー・ボイル監督の「スラムドッグ$ミリオネア」など注目したい映画も多い。2月22日(日本時間23日)の発表が楽しみだ。
さて、IR業界も同様に、年1回の表彰を行っている。
例えば、全米IR協会(NIRI)は毎年6月に開催する年次総会の冒頭で全米各地の33支部から最優秀支部を表彰しているし、日本IR協議会(JIRA)は12月のIR東京大会で「IR優良企業賞」の授賞式を行う。英国IR協会(IRS)では審査対象をウェブサイトとアニュアルリポートに限った「ベスト・プラクティス賞」を用意している。
昨年11月末、IRSは「ベスト・プラクティス賞2008」を発表した。ウェブサイトは「FTSE100」「FTSE250」「時価総額が小さな企業&AIM(新興市場)」「インターナショナル」の4部門に分かれる。
いずれもイージーアクセスや財務情報、各種レポートにアクセスできるプロアクティブなツール、カンファレンスやイベント関連、株主向け情報、コーポレートガバナンスに関する明快なガイダンスなどが審査の基準となる。
IRSのジョン・ドーソン氏をはじめ、ファンドマネジャー、ジャーナリスト会計士など各界から5人をメンバーとする審査委員会で選考された。
「FTSE100」部門では大手タバコのインペリアル・タバコが受賞した。同社の業界動向を追う投資家には格好なウェブサイトとなっている点に審査団の評価が集まった。年金問題では詳細な財務情報を用意し、その全体的な理解を助けている。
「FTSE250」部門にはエンジニアリング大手のクックソン・グループが受賞。ファクトシート、プロダクトのプロファイル、取締役会に関する豊富な情報など、自社を明快に説明するコンテンツが高い評価を得た。デザインもすぐれ、ありのままの同社を分かってもらう情報ソースを提供している。
そして「時価総額が小さな企業&AIM(新興市場)」部門にグローブオブ・フィナンシャル・サービシーズが選出された。
ロンドンとニューヨークに本社をもつフィナンシャル・テクノロジー企業だ。テクノロジーが自社のコアビジネスだけにサイトは感応度が高く、大手企業をしのぐ詳細な決算情報を掲載しているのが印象的だ。
「インターナショナル」部門ではベルギーの材料テクノロジー企業ニルスターが受賞した。シンプルなウェブサイトで、自社の業務と戦略を明快で説明する。サイト空間をよくデザインし、すぐれたレイアウトとなっている。
先ほど審査の基準となる項目をいくつか挙げたが、じつはIRSは「15の基本原則」をIRサイト構築のトップアジェンダに掲げている。中には耳の痛い項目もある。
例えば「アクセスする人たちに自社やその戦略、事業分野を教育し、投資する理由を用意する」という項目だ。「投資する理由」と問われ、即答できるIR担当者はどれだけいるのだろう。「ウェブサイトが貴社と業務分野でのポジションに関する決定的な情報源となるようにする」という項目は、IRサイトがめざす到達点を示している。
注目は「フューチャー・プルーフ」を求めている点だ。ウェブサイトは時間の経過で変更は避けられない。それだけに、将来、コンテンツや機能性が変わっても対応できる「フューチャー・プルーフ」を織り込んだデザインが求められる、とIRSは指摘している。
つまり、ウェブサイトをその場かぎりの対応でこなすには限界があるというわけだ。各社のIR現場で当然のことが「基本項目」となる。現場の声に耳を傾けているのだ。そこにIRSの「ベスト・プラクティス賞」がもつ魅力がある。
◇ライタプロフィール
米山徹幸(よねやまてつゆき)
大和インベスタ−・リレーションズ(大和証券グループ)海外IR部長。近書に「大買収時代の企業情報〜ホームページに『宝』がある」(朝日新聞社)最近の論文に「『株主総会白書』が語るIRの軌跡」(「月刊エネルギー」09年2月号)、「金融危機が新興国のIRを導く」(『広報会議』09年3月号)など。
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