この9月、日本に初出店したスウェーデンのカジュアル・ファッション大手H&Mの銀座ビルに連日、数千人の行列ができ、大きな話題となった。スウェーデンのH&Mと聞いて、思わずH&H(ハルワーソン&ハルワーソン)を思い浮かべた。
というのも、H&H が毎年11月に発表する欧州企業のウェブサイト・ランキングは、2001年から05年まで英有力紙フィナンシャル・タイムズ、06年から国際紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンをそれぞれパートナーとし、それぞれの紙面で大きく取り上げられてきただけに、その評価と影響力は大きい。
この11月もロシア、エストニア、ウクライナといった東欧の国々に始まり、トルコやスウェーデン、イタリアの企業ランキングが明らかになった。
H&Hは1995年創業、企業財務コミュニケーションと企業ウェブサイトを中心にクライシス・マネジメントやCSR、広報など企業コミュニケーション全般にビジネス提案を展開し、その目覚しい成長はまさに「サクセスストーリー」そのものだ。
そのH&Hが、9月末、米セージ・インターナショナル(セージ)に買収された。
セージは株主判明調査・議決権行使促進の米大手ジョージソンやIR大手コンピュータシェアの幹部だったオリバー・ニーダーメア氏がCEO(最高経営責任者)。
米国をはじめ欧州の国際企業を主な顧客とするセージは07年2月、米議決権行使サービス大手でIR業界の有力企業D.F.キング(1942年創業)と企業レピュテーションで知られる英ロンドンのMコミュニケーションを買収した。これまでD.F.キングと関係の深かったH&Hは、セージが展開する顧客ネットワーキングにその関心が向かった。
ストックホルムに拠点を展開するH&Hのセージ・グループへの参加は、ニューヨーク、ロンドン、ドバイ、ミュンヘンなどグローバルネットを用意する。
その国際的な顧客は1000社を軽く超えるのだ。H&Hによるアニュアルリポートの作成や企業サイトの構築は独自の強みがあり、セージ・グループの中でも際立っている。
「創業以来13年、われわれのビジネスは次第に国際的な分野が大きくなりました。セージ・グループへの参加は、H&Hにとって国際的に大きく踏み出す展開であり、当社の顧客にIRソリューションやコミュニケーション、アドバイスなどで、これまで以上にお役に立てる」(アンダース・ハルワーソンH&H会長)。
もちろんセージにとってもH&Hのグループ参加は願ってもない。セージは、この11月、米株主判明調査大手のキャピタル・プレシジョンも買収。1年足らずで米議決権行使、企業レピュテーション、株主判明調査、ウェブサイト・コンサルティングの有力企業を買収したのだ。
その結果、セージは顧客企業のIRプランや市場対応に、先端的な総合ソリューションを提案する大手IR企業となった。なかでも国境を越えた企業情報を構築するウェブサイト部門を担当するH&Hの動きが注目を集める。企業のグローバル化は誰も止められず、情報発信はますますウェブサイトに頼らざるをえないからだ。
H&Mは銀座の出店に続き、11月に青山表参道に第2号店を立ち上げ、来秋には新宿に第3号店を準備中だ。その勢いは止まることをしらない。H&H、H&M。しばらくは、この2つのスウェーデン企業から目を話せない。
◇ライタプロフィール
米山徹幸(よねやまてつゆき)
大和インベスタ−・リレーションズ(大和証券グループ)海外IR部長。近書に「大買収時代の企業情報〜ホームページに『宝』がある」(朝日新聞社)最近の論文に「ウォールストリートか、メーンストリートか」(『PRIR』08年12月号)、「ショートポジションが『報告義務』に」(「月刊エネルギー」08年11月号)など。
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