6月12日、デンマークの首都コペンハーゲンでIRマガジンが主催する「IR北欧賞」の授賞式がホテル・ダングレッテールで開催された。
バイサイドやセルサイドのアナリスト、ファンドマネジャーなど180人あまりにインタビューした結果から、地元デンマークの大手銀行ダンスケ・バンク(=ダンスケ)に「総合IR大賞」「デンマーク・ベストIR賞」「IRベスト・テクノロジー賞」の3賞が授与された。
またダンスケのIRO(IR責任者)のマーティン・ゴットロブ氏も「ベストIRO」に選出された。
1カ月後ダンスケは、国際金融誌「インスティチューショナル・インベスターズ」が156社の1353人のセルサイド・アナリストにアンケートし、7月13日に発表した「ベスト欧州企業IRランキング」でも、デンマークでトップの評価を獲得した。
その理由として優れたウェブサイトが挙げられていた。中でも四半期決算発表で、フラッシュ・ビデオやチャート、為替の変換動作を採用し、ユーザビリティの高いプレゼンテーションを実施したことに評価が集まった。
そういえば、この4月29日、ダンスケは08年第1四半期の発表で、事前の予想をやや下回る発表を行ない、同時に年次予想も切り下げた。発表と同じ29日、CFO(最高財務責任者)のトミー・ティエリー・アンダーソン氏は自らCNBCのニュース番組に登場し、核心を衝く質問に答えた。
業績が芳しくないときこそ、市場の関心に的確に対応する。これがIRの基本だ。年初来の株価はさえず、金融部門では競合する他の銀行株に見劣りするパフォーマンスだというが、IRにとってそれは最大の困難ではない。
IRサイトのコンタクト先には、アンダーソン氏のEメール・アドレスが載り、誰でも直接メールで問合せができる。投資家の質問にはいつでも答えるというメッセージだ。もちろんIROのゴットロブ氏をはじめIR関係者のアドレスも並ぶ。
ここで忘れてならないのは「IR北欧賞」の「IRベスト・テクノロジー賞」を受賞したことだ。というのも、そこにダンスケが貫いた「ワン・グループ、ワン・システム」というIT戦略を見いだせるからだ。
この15年、ダンスケは他の金融機関の買収や統合で企業としての成長戦略を追求し、IT分野の大前提として掲げた方針だ。「ワン・グループ、ワン・システム」とは、各国で活動するダンスケが、業務やプロダクト、また国や企業の単位を超え、どこでも同じITプラットフォームを貫くというものだ。これは、文字通り、言うは易く、行うは難しい。
いうまでもなく、金融・証券分野はもっともデジタル化が進んだ業種だ。提供するサービスも商品プロダクトも、IT抜きには考えられない。それだけに、企業のフロント、バックを問わずITの関連業務で合理的なマネジメントをどこまで徹底できるのかが、大きな課題だ。金融機関の盛衰を見ると、この「ワン・グループ、ワン・システム」が意味する内容は深い。
それは企業のブランドばかりか、ベストの商品開発や市場への発信に直結し、IRの分野では、聴衆の属性を強く意識したユーザビリティの高いプレゼンテーションをもたらし、決算発表では同時性を意識する。
「IRベスト・テクノロジー賞」は、こうした年来の積み重ねに与えられた栄誉なのだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」