全米IR協会(NIRI)は、9月4日、米大手企業100社のIRサイトを調査した結果を発表した。
これによると、プレスリリース(92社)や株価・株価チャート(89社)、動画/音声配信(87社)などがIRサイトで最も見かけるコンテンツに挙がった。
動画/音声配信は比較的最近のイベントを収録し、過去のイベントを集めたアーカイブを掲載する企業はそれほど多くないという。これにEメール通知(82社)や配当や株式分割の推移(それぞれ80社、77社)、過去の数値などの照合(77社)、投資リターン計算(62社)などが続き、ウェブサイトの機能を生かしたコンテンツが目についた。
調査結果から、NIRIはIRサイトの作成で10項目の「やるべきこと」を列挙した。「やるべきこと」として、まず「IRチームのダイレクト・コンタクト情報を掲載する」「コーポレートガバナンスの文書や情報へのアクセス」「取締役会と直接コミュニケーションできる(メールアドレスなど)アクセス情報の掲載」の3つが並んだ。どれも「アクセス」がキーポイントだ。
「外部リンク(電話会議の議事録、株価チャートなど)」も注意したい。その場合、ユーザーに「自社サイトから外部リンクしている」と知らせる告知を用意するのだ。そういえば、7月末、SECは自社ウェブサイトやブログでの重要情報の開示を承認するガイダンスを発表したが、そのときも、第3者情報へのリンクは争点の1つだった。
最高経営責任者(CEO)などのプレゼンテーションを伝える「動画/音声配信」は、同じ音声や映像を繰り返し発信し、その結果、ユーザーに対する魅力を失っていく。こうした逆効果に対して、アクセスを1回に限定するなどの措置をとらないのか―というわけだ。
NIRIが取り上げた「やるべきこと」には「デザインの活用」もある。
例えばパン屑(くず)ナビがあれば、ユーザーはサイト内でどこに自分がいるのか、その位置が分かる。また、続くコンテンツも分かる。
そして「コンテンツの表記はもっと一般的な表現で」という。IRサイトに掲載されるコンテンツ内容はほぼ同じで大差はない。それなら自社にこだわったネーミングではなく、「一般的な表現」の方がいいのではないかというのだ。
もちろん、「基本情報」も忘れずに掲載する。ウェブサイトは企業の現状ばかりでなく、業績の変遷や今後のロードマップを示すメディアとして活用する。
最後に、NIRIは「スクロールが長いHTML文書」なら、ページの上部に目次を用意し、リンクを張って、ユーザーの読みやすさを図る――と10項目の「やるべきこと」をまとめた。
他方、「やってはならないこと」も4つ指摘した。
その第1は「単独のコンテンツとして取り上げるべきテーマを、FAQ(頻出する質問)で詳述すること」である。
第2は「コンテンツや機能の選択で、目の前のウインドウズとは別に新しいウインドウズのサイトを開くサイトデザイン」。ともに利便さより煩わしさが先にたつ。
第3は「内容のないイベントカレンダー」。過去のイベントと今後のイベント予定を同じサイトで見られるようにしたい。
最後は「ユーザーに属性登録を多く求めること」である。いまだに、ユーザーの属性をたくさん書かせるIRサイトがあるが、これが原因でアクセスそのものをやめてしまう例は少なくない。NIRIはこうしたサイト作成は避けたいというのだ。
言うまでもなく、すべての上場企業のニーズを満たすIRサイトのフォーマットはない。それでも、この4月から7月まで、全米大手100社のIRサイトを調べたNIRIの調査が示すとおり、自社のIRサイトを見直すと、アクセスする人たちの満足度や好感度を高めるチャンスは少なくないのではないだろうか。
IRサイトは、株主や投資家はもちろん、社員や取引先、そしてメディアにとって絶対欠かせないレファレンス・ソースだ。それだけに、改善のインパクトはIR担当者の予想を超える広がりがあるにちがいない。
◇ライタプロフィール
米山徹幸(よねやま てつゆき)
大和インベスタ−・リレーションズ(大和証券グループ)海外IR部長。著書に『大買収時代の企業情報〜ホームページに「宝」がある』(朝日新聞社)ほか。最近の論文に「米『コールドコール禁止』で大盛況の投資セミナー」(『月刊エネルギー』08年9月号)、「スーパーIRO、キャロル・ディレイモの実力」(『PRIR』08年10月号)など。
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