ロボットとヒトの関係と未来--iRobot社会長ヘレン・グレイナー氏が語る - (page 5)

--今後、サービスロボットはどのように普及していくとお考えですか?

 われわれ自身のことをいっても、この「Roomba 500シリーズ」は、どんどん普及していくと思います。ただ、もっと普及させるためには、ここで手を緩めるのではなく、確実に使うべき人の手元に届けたいと思っているわけです。私たちも、製品を発売してから6年くらいになります。それより前にもいくつか「AIBO」をはじめとして、エンターテインメント系ロボットはありましたが、ホームユースというか、役に立つ民生用作業ロボットはあまりなかったと思います。

 これからは、サービスロボットでありながら、さっきから言っているかわいらしさなどの側面も必要になってくるでしょう。しかし、やはり一番大きいのは、先進諸国の高齢化の進行ですね。高齢化によって助けを必要とする人の数は、どんどん増える。もうこれはどう考えても、ロボットに頼らざるを得ない部分というのが必然的にあると思います。

 危険なことや、人間じゃない方がよりよくできること──例えば、あそこに危険物がある、あるいはそこに何かを設置しなければならないけど行くのが危ないとき。触っただけでも危ない化学物質や爆発物など、こうした場合に人間の犠牲を避けるためにロボットを使うというのは当然のことだと思うんです。家の中でも、洗濯機が普及して手洗いする人はほとんどいなくなりました。掃除についても同じような感覚で、ロボットがやることが当たり前になると思います。

--一方で、日本のロボット技術者は、ロボットの軍事利用について危機感を持っている人が多いと思います。確かに、地雷撤去などの防衛的なロボット技術は、人を救う技術だと思いますが、ロボット技術が攻撃的な用途に使われる可能性もあるわけですよね。DARPA Grand Challengeも、無人戦車などに転用される可能性はあると思いますし、そのあたりはどうお考えですか?

 受動的というか、非攻撃的というか──そうしたロボットがあります。でも、われわれが提供したロボットによって、現実に何百人という人々の命が救われているわけです。ロボットがなければ、死んでいたかもしれない。やはり、私は、ロボットによって仕事ができ、人間にとってそれが危険であるということがわかっているのに、人間を送るというのはむしろ非道徳的だと思います。ロボットだったら壊れても、人命は失われないですよね。軍事用途はおしなべて全部ダメということで、ロボットを送らないことのほうが私は道徳的でないように思います。

--ご自身では、ロボットをどのように活用されていますか?

 「Roomba」は、スケジュールを指定して、毎日決まった時間に、いちいち指示を出さなくても定時に出動して掃除を行い、また自分で充電ステーションに戻るというように使っています。プール掃除ロボットは、プールを所有していないので使っていません。雨樋掃除ロボットは、両親の家を訪ねるときに、両親のところは古い家なんですが、持って行ってあげると非常に喜んでくれます。また、旅行が多いので、「ConnectR」は、私もすごく楽しみにしてます。開発中なので、私自身もまだ実際に家では使っていないのですが。

--今後ご自身が作りたいロボットについて、教えてください。

 実をいうと、私自身はベッドメイキングをするのが嫌いなんです。シーツをのばしてきちんとベッドメイキングしてくれるロボットが欲しいですね。製品としては成立しないかもしれませんが、個人的にあったらいいなと思います。

 家事で好きなことは1つもないと言ってもいいですね(笑)。例外はガーデニングで、それ以外はすべてロボットが代わってやってくれるのがいいに決まってます。家事は全部ロボットに奪われてもかまわないんです(笑)。

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