タッチパッド全盛のノートPC業界において、ThinkPadは頑なに「トラックポイント」を採用し続けている。これについて、「トラックポイントならホームポジションから動かさずに操作できてスムーズ。タッチタイプしている人は、タッチパッドでポインターを動かすときに、手をホームポジションから動かさなければいけない」と、こだわりについて同氏は語る。
トラックポイントは、与えた力を前後左右にあるひずみセンサーで取り込むため、実際に指を動かさなくても力を入れるだけでX軸とY軸方向を検出するしくみだ。この抵抗値をアナログ信号からデジタル変換してPS/2信号にしてCPUに送る。
具体的な処理は、「斜めの操作などもあるので、Y軸とX軸を別々に取って、合成してからアナログ変換を行って、デジタル化している」という。当初は8ビットで処理していたが、現在は10ビット処理されており、2ビット増やされたのは「(トラックポイントがするすると動いてしまう)“ドリフト”の症状を軽減するため」だという。
このトラックポイントのラバーキャップを外すと、内側にかなり余裕があることがわかる。これは「クラッシャブルゾーン」として設けられている空間で、万が一本体の上に加重がかかったときに、パネルが割れないようにするためのスペースだ。ThinkPadの発売当初はこのスペースがなかったため、液晶が割れるという問題があったが、10年以上前に改良したという。
トラックポイントの動作原理は、前後左右のひずみセンサーで抵抗値を検出し、デジタル処理したもの | キャップの種類は標準装着されている「ソフトドームタイプ」のほか凹型の「ソフトリムタイプ」、旧来の「レガシータイプ」の合計3種類 |
同氏によると、「もうちょっとキレがあってもいい」と考えているという。半年、1年程度先の開発を手掛けており、今後、新製品のキーフィーリングが調整されてくることも考えられる。
耐久性は現在でも十分だと考えており、キーを打つ耐久テストも「100万回や200万回じゃなく、もっとやっている」と自信を見せる。ただし、文字のプリント部分は爪でたたくとどうしても割れてしまったり、テカりが出る。この部分を現在研究中で、「何年かかけて改良したい」と話す。
また、これまで開発してきたキーボードの中でどれが気に入っているかを聞かれた同氏は、「現在のキーボードはトータルバランスで優れており、初代のThinkPad 600などはクリックフィーリングはいいが、固定の仕方やメンテナンスの難易度などの点で設計者側から見ると少し足りなかったと思っている。私としては二度と作りたくないキーボード」とコメントした。
同氏は、「ThinkPadは“プロのための道具を提供する”という前提で使い勝手や耐久性を追求していくのはもちろんのこと、ある程度の華を持たせる“若干の遊び心”は忘れずに開発を進めていきたい」と今後の展開を語った。
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