なぜオープンソースの検索エンジンなのか
これでこのプロジェクトのコンセプトは明快になった。だが、その背後にある動機について疑問に思う人もいるだろう。組織であれ、緩やかに形成された個人の集まりであれ、そんなプロジェクトを形成する理由があるだろうか。また、人々が自分のコンピュータの待機時間をこれに当てる理由は何か。以下にその理由を示す。
- 検索エンジンはOS同様プラットフォームであり、オープンであるべきだ。Riyaがやろうとしているようなオープンな顔認識アルゴリズムによって解決できるだろうと書いた。だが、残念ながら検索エンジンデータベースへのオープンアクセスをわれわれは持っていない。今あるのはディレクトリdmozだけで、明らかに不十分だ。現在、ほとんどの検索エンジンのAPIには1日あたりの検索回数があらかじめ制限されている
- より優れた検索結果の必要性:協調作業によって、よりよい結果を生成することができる。世界中の研究者やGoogleの競合企業が寄与するシステムを想像してみてほしい。これは、マウンテンビューのGoogle1社のものよりも大きな頭脳集団を作り出すだろう。これもまた、現在のWindowsに起こっていることに近い。Microsoftは自社の敷地内に世界最大級の技術者集団を抱えているが、世界全体と戦うことはできない。これが、Linuxがサーバ分野で明らかな優位に立っており、デスクトップ分野でも大きく前進している理由だ。最近のDellのUbuntu Linuxとの契約や3D Linuxデスクトップがその例だ
- プライバシが大きな懸案事項になっている。openhumanの創設者であるわたしにおいてこれは問題にならないが、ビッグGの目に監視されているのではないかという考えに怯えている人が多いのは事実だ。Googleの中国市場における妥協も、ユーザーが自分たちの雑多な、しかし役に立つ検索履歴情報をGoogleに渡していいかどうかを考える理由になっている。GoogleのMatt Cuttsは、最近同社のプライバシに対するアプローチについて興味深い記事を書いている。しかし、それでもまだわたしには疑問が残る。Googleは、裁判所からの命令があればその膨大な情報の集積を差し出さなければならないという弱点を持っている
- 競合他社の数の増加:GoogleのNASDAQでの躍進を喜ぶ人ばかりではない。その代表例が、最近のYahooとMicrosoft、eBayのパートナーシップ契約だ。Googleは、AmazonがArtificial Artificial IntelligenceプロジェクトやAmazon S3、Amazon EC2でやっているように新しい市場を作り出すのではなく、Yahoo、eBay、Amazon、Microsoftと激しく競争している。また、多くの新興企業は、彼らの事業をGoogleが混乱させており、自身のイノベーションに対する見返りが得られていないことをよく思っていない。一番よい例は、Googleカレンダーと、30 BoxesやKiko、その他の企業の破れた夢だろう。Google Spreadsheetsや、最近のGoogle ToolbarとStumbleUponの関係もそうだ。これもまた、Microsoftが80年代と90年代にSunやIBM、HPなどの企業の行く手を阻んで起こったことと同じだ
オープンソースのGoogleクローンを作るのは誰か
Google自身がこれを行う可能性もある。あるいは、AskやYahooなどのGoogleの競合企業かもしれない。また、P2P業界の大御所であるNiklas ZennstromとJanus Friisk次第かもしれない(彼らのJoostプロジェクトを除いてのことだが)。あらゆる可能性があるが、わたしの意見では、最も可能性が高いのは、Googleと直接競合する企業たちによるジョイント攻撃だ。実際、いちばんふさわしいのは伝統的に「クローズドソース」の企業であるMicrosoftかもしれない。これは、これまでMicrosoftの「邪悪な」クローズドソースのアプローチに対抗することをPRに活用してきたGoogle(例えば、同社の巧妙な「邪悪なことはしない(do no evil)」という主義)をちょうど逆にしたような反応になるだろう。これよりも不思議なことはいくらでもおきている。