デルの独自路線は実を結ぶか--ノートPCに見る製造戦略 - (page 2)

文:Tom Krazit  翻訳校正:DNAメディア2006年11月21日 17時45分

 おそらくDellは、PC業界の中でこの作業を最も効率化している企業だ。ラウンドロックにあるDellの工場は、効率の見本のような所だ。巨大な工場に吸い込まれた組立前の部品は、完成されたデスクトップPCとして出てくる。同社は、このような製造拠点を世界の数カ所に持つことで、デスクトップを各地の顧客に最短期間で配送している。

 ところが、ノートPCの場合こうは行かない。Hewlett-Packard(HP)のノートPC部門でサプライチェーン戦略ディレクターを務めるRoger Bhall氏は説明する。「例えば、1枚のデスクトップ用マザーボードは特定の製品ファミリーの最大8種類のデスクトップモデルに使用できる。しかしノートPCモデルの場合、使用する部品もサイズも1つ1つ異なるため、8種類のPCに8枚の異なるマザーボードが必要になってしまう」

 加えて、ノートPCとデスクトップでは流通モデルも異なる。デスクトップPCは船で輸送されるのに対し、ノートPCは空輸される。このため、組立作業を世界のどこか1カ所に集約したとしても、ノートPCを迅速に顧客の手に届けることができる。

 また、すべての部品を小さな筐体にきっちりと収めなければならないため、ノートPCの組立作業には手際を要する。「ノートPCのねじを強く締めすぎるといった単純なことで、深刻な問題が起こりかねない」とIDCのアナリストRichard Shim氏は言う。このため、デスクトップPCの場合とは違い、ノーブランドのノートPC、いわゆる「ホワイトブック」を組み立て、限定市場向けに販売する小規模システムビルダーは存在しない。

 HPをはじめとするノートPCメーカー各社の多くは、ノートPC製造プロセスの大部分を、Quanta、Compal、Wistron、Asustekといったパートナー企業に委託している。HPの場合、システムの設計構築と製造管理は同社が担当するものの、ノートPC製造工程のおよそ97%に当たる作業をパートナー企業に委託している、とBhalla氏は語る。

 しかしDellは違う。Dellの調達担当シニアバイスプレジデントGlenn Neland氏によれば、同社は最終組立作業をすべてマレーシアとアイルランドの自社工場で行っているという。Dellのプロセスでは、同氏が骨組みと呼ぶ、ある程度まで組み立てられた各システムが製造パートナーから納入される。そしてそれらを自社工場に移動し、プロセッサ、ハードドライブ、メモリ、その他のシステム部品の取り付けといった最終仕上げを行う。

 この方法によって、DellはノートPC市場でも従来の個別受注生産という戦略を維持できる、とNeland氏は説明する。販売方法として小売店舗などの間接チャネルの使用をあくまでも避けようとする姿勢に、同社の独自性が現れている。

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