IBMの堅調なソフトウェア売上は、エンタープライズソフトウェア業界にとって明るい兆しだが、上向いているのは一部の分野だけだと、アナリストらは指摘している。
IBMは米国時間20日に、2004年の第4四半期および通年の決算を発表した。その中で同社は、サービス、ソフト、ハードといった主力事業が全般に好調だったと述べ、今年度についても楽観的な見方を示した。第4四半期のソフトウェア全体の売上は前年比7%増で、個別ではTivoliのシステム管理ソフトの売上が25%、WebSphereミドルウェアの売上が18%増加となった。
IBMの決算発表は、エンタープライズソフトウェア業界全体が低迷期を脱し、上向きに転じるのではないかとの期待を抱かせるものだ。IBMは、企業によるIT投資の堅調な伸びを背景に、2005年も利益の2桁増を目指している。
しかし、IBMが好業績だからといって、業界全体の売上が再び急増するわけではないとアナリストらは注意を促している。
IBMのソフトウェア売上は、他のエンタープライズソフトウェア企業と同様、2004年第2四半期に落ち込んだ。IBMは現状について楽観視しているものの、同社以外のソフトウェアメーカーはさほど楽観的状況にはない、と指摘するアナリストもいる。
Susquehanna Financial GroupアナリストのGregg Moskowitzは、「IBMの業績は大変好調にみえる。しかし、特に顕著な飛躍をみせたところはなく、(業界全体の)流れが上向いているといえるようなはっきりしたものはない」と語る。
企業によるソフトウェアへの投資増加で、業界全体の業績が一律に上昇しているわけではない。恩恵を受けているのは特定の分野/企業に限られており、今回の回復にはむらがあることが分かる。今年はセキュリティ、管理、インフラ、分析といった分野のソフトウェアで特に売上増が期待でき、それらの分野の大手ソフトメーカーの売上も好調だ、とアナリストらは述べている。
だが、実際のところ、2005年のエンタープライズソフトウェア市場は、一部の分野では引き続き好調が持続するものの、全体の成長は2004年に比べ減速すると予想されている。JP Morganが大企業の最高情報責任者(CIO)を対象とした聞き取り調査をもとに弾き出した予測によると、2005年の企業によるソフトウェア投資額の増加率は、2004年の8〜10%から4〜7%へと減少するという。
企業のソフトウェア投資額の増加率は低下しているものの、企業顧客は法規制への対応、ソフトウェアインフラの整備、ビジネスインテリジェンス・アプリケーションなどのソフトウェア関連プロジェクトに投資することから、一部のソフト企業は2005年も好業績が期待できると、JP Morganは述べている。
同社は今月発表した報告書の中で「エンタープライズソフトウェア市場は、大半の分野の成長が失速しており、すでに成熟が始まっている」とし、もはや高成長率は期待できないと指摘している。「つまり、今後も成長は続くが、それは限られた部門になるだろう」(同報告書)
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