企業向けソフトウェア市場に、「食うか食われるかの時代が到来した」ことは明らかだ。
企業のIT予算が削減傾向にあるなかで、ビジネスソフトウェア業界ではメーカー各社が少しでも多くのシェアを獲得しようと品揃えを拡大するしていることから、業界内の整理統合の動きが活発化すると専門家らが述べている。中規模企業だけでなく業界最大手の各社も業界再編の圧力に押され、わずか数年前には一蹴されていたはずの合併・統合計画を前向きに検討し始めている。
Sun Microsystemsの社長兼最高執行責任者(COO)、Jonathan Schwartzは今月初め、同社がNovell買収を検討していると発表し、業界に波紋を投じた。もっとも、このSunによるNovell買収構想については、多くの業界アナリストがあり得ないと一蹴したが、Sunの重役室で行なわれたこの議論は、ハイテク企業各社が劇的な動きを検討していることを示唆している。
Sunだけではない。BEA Systemsも、ライセンス売上が2四半期連続で減少したことに加え、一連の幹部社員の退社や組織再編の実施などの問題が相次いだことから、独立系ソフトウェアメーカーとしての長期的存続の可能性を疑問視する声が再び高まった。
実際、企業向けアプリケーションメーカーのPeopleSoftに対してOracleが敵対的買収を仕掛けた件について、Oracleが法廷で証言した際、同社はBEAも買収の標的企業の1社だったことを明らかにした。またMicrosoftとSAPも、OracleがPeopleSoftに対し買収の申し出を行なった後に、合併に関する打診的交渉を行なったと発表し、業界関係者に衝撃を与えた。
「(単独で)成長できない企業は、合併によって成長を目指したり、より有利な立場に立とうと努力する」と語るのは、JeffriesのBroadview部門のディレクターPaul Crisciだ。同社では企業の合併/買収(M&A)に関する助言を行っている。「現在、世界で最も割に合わない職業はソフトウェアウェアのセールスマンだ・・・市場ではあまりに多くの企業が、非常に少額となった企業のIT予算を勝ち取ろうと凌ぎを削っている」(Crisci)
大手企業に飲み込まれる小規模企業
大手ハイテク企業による小規模企業の買収が相次いでいる。Hewlett-Packard、IBM、Sun、Veritasの各社は、自社のユーティリティコンピューティング関連製品の品揃えを拡大するため、小規模な企業数社をそれぞれ買収してきた。市場関係者によると、株式市場に上場する機会は限られているため、新興企業の大半は、大規模な企業との緊密な協力関係の構築や合併といった、いわゆる「出口戦略」を検討する必要があるという。
実際、多くの小規模企業はすでに提携や技術統合によって業界の大手企業と緊密な協力関係を構築し、こうした戦略を進めている。同様に、大手の企業顧客も取引先のサプライヤを2、3社に絞り込んでおり、さらにアプリケーションを構築/実行するための技術プラットフォームも2、3種類に絞っている、と複数のアナリストが指摘している。
「解決すべき大問題が減少しているため、新しい技術ソリューションの市場は縮小傾向にある」と語るのはベンチャーキャピタル企業、Highland Capitalのマネジング・ゼネラル・パートナー、Paul Maederだ。
Maederは新興企業に対し、医療や輸送など、まだ十分にハイテク技術が浸透していない業界に自社技術を応用すべきだと提案している。顧客企業は自社のデータセンター向けの技術を選択する際、それまで製品の試用・試験を行い、信頼するに至ったサプライヤの技術を選ぶ傾向にある。それはすなわち、大企業がさらに巨大化する可能性があることを意味する。
「データセンターのような分野向けにソフトウェアを提供することは、そのソフトウェアがどんなものであろうと、当然別のソリューションの一部となるだろう」(Maeder)
ソフトウェア業界では、これまでも盛んにM&Aが繰り返されてきたが、顧客企業の横ばいもしくは微増のIT予算をめぐって、IT技術のプロバイダ各社がしのぎを削っている現在の状況が続けば、今まで以上にM&Aの動きが加速するだろうと一部の専門家は予測する。そして、ビジネスソフトウェア市場でさらに企業の淘汰が進むと、業界の様相が変化する可能性がある。
「現在名の通った企業でも数年後にはその大半が消えている、とわれわれは予想している」と語るのは、M&A関連のコンサルティング会社Martin Wolf Securities社長のMartin Wolfだ。「大半の企業が別の会社に合併され、その商品は他社製品の機能の1つとなっていくだろう」(Wolf)
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