ここ最近EMCのCEO、Joe Tucciは多忙な日々を送っている。
マサチューセッツ州ホプキントンに本社を置くEMCは、Joe Tucciのもとでストレージ機器メーカーからの脱皮に挑んでいる。昨年7月にはストレージソフトウェアメーカーLegatoの買収を発表し、10月にはコンテンツ管理ソフトウェアメーカーDocumentumの買収に合意した。
さらに、数週間前にはソフトウェアメーカーVMwareの買収を完了。この買収はEMCにとって、ユーティリティコンピューティングへの進出をさらに加速させるものとなるだろう。
ソフトウェアへの比重を高めているEMCが、戦略の中心に据えているのが「情報ライフサイクル管理(ILM:Information Lifecycle Management)」だ。Hewlett-PackardやStorageTekといったライバルと同様に、Tucciも「効率的なデータストレージ」の宣伝に余念がない。CNET News.comはTucciにインタビューを行い、ILMと今後の戦略について話を聞いた。
---最近、ILMの話をよくされていますね。ILMについて、また従来のデータストレージとの違いを教えてください。
現在、ストレージ市場にはさまざまな製品が存在します。ハイエンドストレージ、ミッドレンジストレージ、ATAドライブを搭載して価格を抑えたタイプのミッドレンジストレージ、そしてもちろん低価格ストレージ。ネットワーク型ストレージ(NAS:Network Attached Storage)もありますし、テープストレージも健在です。ILMというのは、基本的には段階的なアプローチです。まずは情報の価値や必要なパフォーマンス・レベルを分析し、その条件に合った場所に、最小のコストで保管できるようにします。
第2段階では対象データのニーズを分析します。リカバリ・タイムが長くてもいいデータは、ディスクから直接テープにバックアップをとる。ビジネス・クリティカルなデータは、複製ディスクを同一アレイ内とリモート・サイトの両方に置く。それ以外の重要データはATAドライブにバックアップを取るといった具合です。ATAドライブへのバックアップはテープと比べてはるかに信頼性が高く、高速です。当然、リカバリ・タイムも短い。もちろん、テープに保存してもかまいません。
言うまでもないことですが、情報の価値は時と共に変化します。その変化に合わせて、情報をハイエンドストレージからミッドレンジストレージ、ATAストレージ、あるいは参照限定の不変コンテンツ用のCenteraストレージなどに移動することが求められます。これがデータのモビリティ(移行性)です。つまり、第2段階ではデータの保護とモビリティが実現されます。
第3段階では、このすべてを統括する管理環境が構築され、情報ライフサイクル管理が完成します。これにより、情報を必要性に応じて、効率的に保護することができるようになります。
---かつてはできなかったことが、どうして可能になったのですか。
昔はそのための技術がありませんでした。現在のようなATAストレージはなかったのです。必要な技術が本格的に登場したのは2003年です。
---シリアルATAのことですか。
いいえ、パラレルATAです。今ではテープを使わなくても、膨大なデータのバックアップをわずかなコストで作成することができます。速度と信頼性も桁違いです。
---ATAははるかに高速であるだけでなく、信頼性もはるかに高いと。
そうです。テープの形で保管する場合、データが利用不能になる可能性は少なくありません。ATA技術を用いれば、こうしたことは事実上起こりえません。
---データの価値を判断するという点についてはどうですか。これも無茶な目標だと考えられてきたのでは。どのデータが重要で、どのデータが重要でないかをどうやって判断するのですか。
もちろん、業務プロセスを知っているのは企業自身です。しかし、アクセス頻度や利用状況を分析することは可能です。こうしたデータがあれば、企業はそれをもとに業務プロセスを分析し、情報管理ポリシーを定めることができます。EMCのソフトウェアを導入すれば、こうしたポリシーに基づいて、情報の移動を自動化することも可能です。
銀行の口座振替という業務プロセスを考えてみましょう。大金が一瞬で動くわけですから、情報の重要性はきわめて高い。銀行もそう考えているはずです。EMCがこのデータに関するデータを提供すれば、銀行は2つのデータをもとに必要なポリシーを定め、EMCのソフトウェアを使って、データを移動させることができるようになります。
---ILMはどこまで実現しているのですか。まだ夢の範囲を出ていないのでしょうか。
階層型ストレージはすでに存在しますし、ストレージに関してお話ししたことはすべて実現しています。これは未来の話ではありません。どれも現実の話です。
---今はないが、あれば便利というものはありますか。ある種類のメタデータ(データに関する情報を記述したデータ)が欠けているということはありませんか。
一口にメタデータといっても、その種類は多岐にわたります。欠けているというより、取得しやすいかどうかの問題です。確かにこの分野はめざましい進歩を遂げました。しかし、最終地点に到達したわけではない。まだ進化の途上にあるのです。
ある統計によると、ディスク上のコピーを1とした場合、テープ上のコピーは8.5あるそうです。これは増分バックアップによるものです。今のところ、バックアップを1本のテープで済ますことができるような、強力なメタデータ・エンジンを構築するための実際的な方法はありません。増分はディスクに保存し、ある程度たまったらコピーを更新し、古いコピーは破棄することになるわけです。
---そうなれば、ストレージを効率化することができると。
そうです。効率化という意味で言えば、十分に活用されていないものはほかにもあります。たとえばプロビジョニングの簡略化。ハードウェアにジョブを割り当てることをプロビジョニングと言いますが、これはとても複雑な作業です。200GBのストレージを追加するだけでも、いくつものステップを踏まなければならない。EMCはこのプロセスを自動化するツールを提供しています。今後、この種のツールはさらに進化していくでしょう。
---企業は本当にILMを必要としているのでしょうか。それとも、ストレージ市場を活性化するためのキャッチコピーにすぎないのでしょうか。
企業はこのすべてを求めています。階層型ストレージ、情報のモビリティ、統合された管理環境、そして意志決定とポリシー設定を支えるメタデータ。
どれも企業が喉から手が出るほど欲しがっているものばかりです。要するに、我々はこのすべてをひっくるめて「ILM」と呼んでいるのです。
---ILM製品・戦略を提供している企業はほかにもあります。EMCの差別化ポイントは?
もっとも包括的だということでしょう。ILMの第1段階は階層型アレイ、階層型ストレージの導入だと申し上げました。この面で、EMCの製品ラインはどのベンダーよりも充実しています。ハイエンドストレージもあれば、ミッドレンジストレージ、ATAストレージもある。同一アレイにファイバチャネルドライブとATAドライブを混在させることも可能です。組み合わせも自由です。
そしてNASヘッドの種類も多い。ご存じの通り、当社はMicrosoftと協業し、NetWinシリーズを出荷しています。ほかにもEMC独自のCelerraシリーズ、不変コンテンツ用に最適化されたCenteraなどがあります。
では、第2段階のデータの保護とモビリティについてはどうか。データ移動の柔軟性では他社の追随を許しませんし、保護レベルの調整も細やかです。
第3段階の管理環境についてもEMCは抜きんでており、EMC ControlCenterは50%近い市場シェアを誇っています。また、EMCは規模と資金力の両方を備えたストレージの専業メーカーです。ほかの事業の片手間でストレージに取り組んでいるわけではありません。こうしたことが総合的に、当社のアドバンテージになっていると思います。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス