今回は、携帯電話による物販を中心とした、いわゆる「モバイルEC」について解説していく。以前の記事で取り上げた通り、モバイルECビジネスの伸びが著しいことから注目を集めているが、その実態はPCのECビジネスと大きく異なっている。
モバイルECをPCでのECと比較した場合、大きな特徴として挙げられるのが、テレビをはじめとしたマスメディアの情報の影響を受けやすく、売れ筋も旬な商品に偏っているということだ。若年層に強いメディアであるためにトレンドに敏感な点も当然あるが、商品の情報に触れて「欲しい」と思った瞬間にサイトを訪れ、すぐ購入できるという携帯電話の特性も影響している。
ユーザーの行動としては、「衝動買い」「目的買い」「単品買い」が多い。衝動買いが多いのは、前述した通り思った瞬間にすぐ買えるという点が大きい。また、画面が小さいため商品を比較しにくいユーザーインターフェースや操作性になっており、これがさらに衝動買いを促しているといえる。
マスメディアなど他のメディアが購入動機となることから、サイトアクセス時点で購入する商品が決まっている「目的買い」が多いのも特徴だ。事実、当社で行った調査では、サイトにアクセスする前から購入する商品が決まっているという人が、およそ8割を占めている。
目的買いが多いためか、商品を単品で購入する人が多いというのもモバイルECの傾向といえる。まとめ買いをさせるためには、ファッションであればあらかじめコーディネートした洋服をセット販売するなど、カートに商品を追加させるのではなく、一括で購入させる工夫が有効だ。
売れ筋商品の傾向にも大きな違いが見られる。PCインターネット中心の人(PCメインユーザー)と携帯電話中心の人(モバイルメインユーザー)、双方のユーザーについて当社が調査したところ、モバイルECではPC以上に化粧品や健康食品など、頻繁に買い換える商品を多く購入する傾向が見られた。自分が普段使っているものや、衝動買いが可能なものがよく売れるようだ。
この傾向は客単価に影響を与えている。当社がモバイルECの平均単価を3年間定点観測したところ、ボリュームゾーンは常に1万円以下だった。PCの利用者がモバイルECも利用するようになってきたことで、購入商品のジャンルが広がり、購入単価が向上する兆しは見えてきている。ただ、可処分所得の低い若年層の利用が多く、携帯電話上での商品比較が難しいといったユーザーインターフェースの要因もあり、まだ大きな変化は見られない。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス