『モバイル特殊論』は過去の話、戦略的モバイルサイトの構築を--ネットイヤームーヴ

永井美智子(編集部)2007年05月14日 09時41分

 「モバイルサイトを考える上で『モバイルは特殊だから』というモバイル特殊論を掲げる人がいる。しかしそれは過去の話。いまは昔ほど特殊な世界ではない」――こう語るのはネットイヤーグループ傘下で企業のモバイルマーケティングを支援するネットイヤームーヴ代表取締役社長の石井浩之氏だ。

 ネットイヤームーヴはネットイヤーグループが4月に設立した子会社で、携帯電話を活用したマーケティングの戦略策定から、サイトやアプリケーションの企画制作、運用などを手がける。

 若年層を中心に携帯電話からのインターネット利用が増えており、モバイルからしかインターネットを利用していない人のほうが、PCだけからしか利用しない人よりも多いという総務省の調査結果もある。また、一般サイトのアクセス数は増加しつづけており、NTTドコモのデータでは2006年時点で公式サイトと一般サイトのアクセス比率は3:7という。

 こういった状況下で、「モバイルで何かをしなければ」と考える企業が増えてきた。しかしその一方、「何かをしたいが、どうしたらいいかわからない」という声も多い。これらの企業を支援するのがネットイヤームーヴの事業だ。

 携帯電話の場合、PCと異なり機種やキャリアによって端末のブラウザの仕様が大きく異なる。また、メモリの量が少ないといった問題がある。このため、モバイルサイトの制作は手間がかかるというイメージを持たれがちだ。

 しかし石井氏は「4〜5年前に比べて端末による違いは少ない」と話す。数年前は端末のメモリが小さく、通信速度も遅かったことから、いかにサイトを小さく作るかがモバイルサイトの制作者にとってのノウハウだった。少しでも1ページのバイト数を減らすために、改行はすべて取り除くといったことも行われていた。しかし現在では端末が高性能化し、以前のような「職人技」の世界は少なくなっているという。また、サイトの3キャリア対応についても、ミドルウェアが充実してきたことで以前ほどの負荷にはならないという。

 むしろ、現在ではシステム開発部分でのノウハウがモバイルサイトの制作会社にとって他社との差別化になるという。「他社では、集中アクセスに耐えられるとか、大人数のユーザーに対応しているといった点を強みにしている企業もいる。この点は、我々からみればPCサイトと大差がない」

モバイルサイトならではの壁

ネットイヤームーヴの石井浩之氏と佐々木裕彦氏 ネットイヤーグループ取締役の佐々木裕彦氏(左)と石井氏(右)。モバイルサイトはこれまでコンテンツ作りが中心だったが、企業の業務やマーケティングに基づいた制作が求められるようになってきていると語る

 ただし、モバイルサイトならではの課題はある。例えばモバイルサイトでは、cookieを使うことができない。PCサイトではユーザーの動向を把握するのにcookieを使うのが当たり前になっているが、モバイルの場合端末によってはブラウザがcookieに対応していないのだ。このため、ユーザーの動向把握は「動的にURLを生成して対応する」(石井氏)。また、IPアドレスはキャリアのゲートウェイに限られてしまうため、IPアドレスからユーザーを特定するのも難しい。端末の固有番号を使ってユーザーを認識する方法もあるが、一般サイトがこれを利用するにはいろいろな手続きが必要になる。

 PCサイトの運営者から見れば簡単にできそうなことが、モバイルでは難しいということはよくある。アクセス解析もその1つだ。「高度な解析をしようとすると、かなり複雑な仕組みが必要になる」(石井氏)

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