行動、売れ筋、顧客単価--あらゆる面でPCと異なるモバイルECの世界 - (page 3)

金井統、原田紀子(ドコモ・ドットコム)2008年04月23日 12時55分

鍵を握る商品リコメンド

 モバイルECサイトを運営する上でもう一つ重要なのが「メルマガ」(メールマガジン)である。携帯電話は欲求が生まれた瞬間にサイトにアクセスでき、衝動買いをしやすいメディアなので、メルマガで商品を訴求して欲求を生み出すのが、最も売り上げの増加につながりやすい。著者の経験上、メルマガ会員数の多いECサイトは売り上げも順調に拡大している。

071004_rakuauc.jpg HTMLメールで配信される、楽天オークションの携帯電話向けメルマガ(画像をクリックすると拡大します)

 当然ながら、メルマガは興味のない人はすぐに退会してしまうため、会員を集める努力をしてもすぐに減ってしまうことは多い。だが、少しずつ買ってくれる人のリストを積み上げて、良質なメルマガ顧客リストを作って行くことがモバイルEC サイトの安定的な売り上げを築くために最も必要な努力となる。

 最近ではメルマガに「デコメール」などのHTMLメールが利用されるようになり、内容が「チラシ」へと変化しつつある。HTMLメールにするとレスポンスが倍近くに伸びることから利用する事業者も増えており、現在ではメルマガ専用のバナーや画像を用意するなど、クリエイティブの部分にも力を入れるようになってきている。画像とキャプションによる商品訴求のクリエイティブが売り上げを左右する。

 携帯電話向けのメルマガは開封率も高く、ユーザーに対して有用なコンテンツを提供できるよう内容を磨いていく努力が重要だ。

 サイトの構成については、情報量が少なく商品の比較が難しいというユーザーインターフェースの特性上、サイト内でいかにユーザーに対して積極的に商品をリコメンドして、より少ないクリック数で購入できるよう導線を作るかが大切になる。

 まず、トップページ(最初の画面)では、サイトのアイデンティティとなるロゴ、サイトの内容を示すユーザーガイド、さらには旬な商品をリコメンドする特集スペースという3つの要素が必須だ。その上で、トップページから購入までの導線を、ステップを少なくして簡潔な遷移にする。

 また、商品詳細ページにも配慮が必要だ。購入の意思決定を後押しするために必要な細かい情報や、商品のアップ写真だけでなく、いくつかのアングルから撮影した複数の写真を用意しておけば、購入に結びつきやすくなる。 今後は、ユーザーの属性やタイプに応じたカスタマイズをして、小さいスペースを有効に生かすサイト構成が求められていくだろう。メルマガや売れ筋ランキングなどにおいても、ユーザーの性別や年齢、嗜好などによって細かくセグメント分けし、それぞれのユーザーの欲求に合った情報を提供できれば大きな効果が得られる。

モバイルECが抱える課題

 順調な伸びを示しているモバイルECだが、いくつかの課題がある。1つは利用者層の広がりだ。モバイルECの売り上げ拡大は自社の既存顧客の購入量増加が支えている部分が大きく、モバイル市場における新規顧客に「はじめの1歩」を超えさせるには至っていない。また、現在は目的買いのツールにとどまっているので、モバイルECでウィンドウショッピングを楽しんでもらえるようなユーザーインターフェースの工夫やサイトコンテンツの充実により、非目的買いの増加を促す必要がある。

 もう1つの課題はモバイルECに対する事業者側の理解の低さだ。モバイルECに対する取り組みは企業によってまちまちで、担当者が1人しかいないというケースもある。ここまで説明してきた通り、モバイルECはPCとは大きく異なるので、担当者が「ついで」で取り組むのは困難だ。売り上げを伸ばすにはモバイルEC専門のチームと人材を用意し、モバイル向けのマーチャンダイジングや販売促進に取り組む姿勢が求められる。市場拡大にあわせた現状の売り上げ増加に満足せずに、現状ではまだ機会ロスが数多く存在することを認識して、企業側が積極的に取り組むことが今後のモバイル市場のさらなる拡大を促すだろう。

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