最近、媒体社のアドネットワーク事業への取り組みが目立ってきています。2008年の7月だけでも、マイクロソフト、楽天、So-net、ライブドアなどがアドネットワーク事業への新規参入を発表しました。
なぜ、今アドネットワークが注目を浴び、参入が相次いでいるのか、また、はたして日本においてアドネットワーク事業は成功するのかを考えていきたいと思います。
Advertising.comによると、米国ではオンライン広告配信形式の7割以上をアドネットワークが占めているといいます。また、eMarketerの予測によると、2010年までにはアドネットワークによる広告取扱額が50億ドル規模に達するとのことです。
さらに2007年から2010年までのアドネットワークの平均成長率は31%と見込まれ、同じ期間での検索広告の平均成長率23%、アドネットワークを介しないディスプレイ広告市場の平均成長率15%に比べても、その成長性は注目を集めています。
米国でアドネットワーク市場が伸びている理由として下記の3つが考えられます。
理由の1つとしてまずは、莫大なリーチを確保しているということが上げられます。下の表は、comScoreが2008年の4月に発表した米国メディアのUU数です。
順位 | Property | Unique Visitors | Reach |
---|---|---|---|
Total Internet:Total Audience | 190,728 | 100% | |
1 | Platform-A | 170,508 | 89% |
2 | Advertising.com | 167,749 | 88% |
3 | Yahoo! Network | 160,206 | 84% |
4 | Google Ad Network | 155,882 | 82% |
5 | Specific Media | 144,773 | 76% |
6 | ValueClick Networks | 140,930 | 74% |
7 | Yahoo! | 138,912 | 73% |
8 | Tribal Fusion | 135,113 | 71% |
9 | 133,528 | 70% | |
10 | Casale Media network | 127,184 | 67% |
上位10位のうち、7位Yahoo!、9位Googleを除いたすべてがアドネットワークです。上位10位はすべてUU数が1億を超えており、1位のPlatform-Aに至ってはUU数が1.7億、リーチが89%となっています。
この圧倒的なUU数、リーチが、様々なターゲティング技術の活用やセグメントを可能とし、様々な広告主のニーズに応える源となっているのです。
近年、「行動ターゲティング」や、「行動リターゲティング」などのテクノロジーが開発され、日々精度を高めていっています。
行動ターゲティングとは、ある特定の媒体に来訪したユーザーの行動履歴をクッキー付与によりトラッキングし、行動特性ごとにセグメントを実施、その後その行動特性にあった最適な広告配信を行うものです。
行動リターゲティングとは、行動ターゲティングの技術を活用して、ある広告主サイトに来訪したユーザーにクッキーを付与し、そのユーザーが特定のサイト及びネットワークに訪れた際にクッキー付与を実施した広告主の広告を配信するものです。
広告メニュー体系に関しても、配信方式ではインプレッション保証型、クリック課金型、成果報酬型など、配信フォーマットではテキスト、バナー、動画、ウィジェットなど多種多様なものが用意されており、これらの組み合わせにより様々なニーズに対応することが可能となっています。
米国では、広告主主導で広告枠を確保するということが進んでいます。日本ではまだあまり普及していない第三者配信サーバの利用とターゲティング技術の進化によって、「広告主サイトのデータを活用して広告配信を行うブラウザを特定する」という考え方が定着してきました。
このような広告主主導の広告出稿には、アドネットワークの膨大なUU数というものが重要となってきます。なぜなら、広告主主導のターゲティングを実施する際は、掲載面ではなくブラウザが対象となるため、小規模なアドネットワークではマッチングが困難だからです。
では、日本においてはどうなるのか、上記の米国事例を考慮し、日本市場への適合について考えてみたいと思います。
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