YouTube日本展開に著作権の壁、どうするGoogle?

2007年8月6日 10時40分

 YouTubeが日本でもパートナー契約を推し進めていますが、前途は多難のようです。ミクシィや吉本興業など6社と協力体制を築く一方で、著作権関係権利者団体との協議は物別れに終わっています。YouTubeにアップロードされている違法コンテンツに対して「フィンガープリント」による技術的解決を図るGoogleですが、権利者団体からは日本発のコンテンツを「まずは一度、リセットせよ」との強攻策が提示されました。さて、Googleはどのように対応するのでしょうか。そして両者の主張に落としどころはあるのでしょうか。パネリストの皆さんのお考えを聞かせてください。


  • 佐々木俊尚
    佐々木俊尚さん (フリージャーナリスト)
    テレビ局や日本レコード協会、JASRACといった日本の著作権団体のこれまでの行動や思想から考えると、彼らがYouTubeに対して何らかの譲歩を行うということは考えにくいですね。そこで少しでも譲歩を行ってしまえば、一気に堤防が崩壊してしまいかねない−−という危機感を彼らが持っているためです。アメリカでYouTubeと組む大手メディア企業が現れてきている現状では、その危機感はますます高まっていて、だからこそ譲歩はますます難しくなっています。

    テレビ局はCM広告費だけで年間2兆円のカネを生み出していて、放送業界としてはこの収益に加えてDVDなどの二次使用料があれば十分だと考えています。だからテレビ局の頭の中には、YouTubeごときにコンテンツを無料で流動化させられるようなビジネスモデルはいっさい存在していないと言い切ってしまってもいいでしょう。

    だから折り合いが生じるはずもない。折り合う地点があるとすれば、YouTubeの側が日本の著作権団体の指示通りに、すべての違法コンテンツが事前に根絶やしするという体勢を完璧に取った時でしょう。

    でもYouTubeにはそのような完璧事前検閲制度を取るメリットが、どのぐらいあるのか。あまりに完璧すぎる事前検閲性はユーザーに離反されるのは間違いなく、ここぞとばかりに他の緩いサービスが海外から流入してくるでしょうし、日本発でゲリラ的にそのようなサービスを投入する人/会社も現れるかも知れません。WinMXで利用者が逮捕された直後、Winnyが現れたようにです。

    しかしWinMXやWinnyとまったく異なるのは、YouTubはバックにGoogleという力強い企業が存在し、しかもアメリカの大手メディア企業とすでに提携を始めているという実績もあるということ。これが日本の著作権団体には「外圧」となっており、だからこそ彼らはYouTubeとの間で「協議」という形を取らざるを得ない。もし本気で戦うつもりなら、裁判に訴え出ればいいのに、なぜチマチマと協議のテーブルに就いているのか?−−というあたりも興味深い展開です。

    いずれにせよGoogle/YouTubeは、今後どう出るのか。その答を探すためには、このYouTubeというサービスを日本でどう展開させるのかという同社の戦略にかかっていると言うしかないでしょうね。あくまでもWeb2.0的なコンテンツの流動化を押し進めるのであれば、著作権団体の抗議は適当にあしらっておいて既成事実化させていくのが正しい戦略となるでしょうし、そうではなく日本のメディア産業と組み、Web1.0的なメディア多面展開の一環にYouTubeを組み込んでいく(MXテレビと提携したようなかたちで)のであれば、著作権団体のいうことには素直に従いましょうという結論になるでしょう。

    言い方を変えれば、ここでGoogle/YouTubeがどう出るかによって、彼らの次の対日本戦略が見えてくるということにもなるわけです。

    2007-08-06 13:26:50

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