最終更新時刻:2011年3月8日(火) 20時54分

「SaaS」によるビジネスアプリケーション市場の変革──セールスフォース・ドットコム

増田千穂(エースラッシュ)

2006/10/13 11:00  

SaaSのもつ7つの特徴

 Tien Tzuo氏はSaaSの特性は7つあるとしている。

  1. 「Multi-Tenant, Shared Systems」。これにより全ユーザーが同じプラットフォームに乗ることで、リソースをイノベーションに注ぐことができるとしている。
  2. 「Trusted Security Reliability & Performance」。salesforce.comのSaaSは99.9%の稼動実績と、300ms/transaction以下のパフォーマンスをもち、リアルタイムでのシステム稼働時間のレポーティングも可能だとしている。また、セキュリティについても万全の備えを持っているという。「データを全て自分のところで持っていなければならないという考えは終わる。自分の家でお金を保管するよりも銀行に預ける方が安全である、というように自社でシステムを保持するよりもオンデマンドのシステムを利用する方が安全だという時代になる」(Tzuo氏)。
  3. 「Customizations and Seamless Upgrades」。従来のシステムではアプリケーションのカスタマイズやアップグレードにコストと労力が必要だったが、SaaSではその必要がなくなり、サービス提供側によって適宜アップグレードされたアプリケーションが提供され、ユーザーが実施したカスタマイズはアップグレード時も継承される。
  4. 「Standard Web Services Integration」。SaaSではSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)を採用することで既存ソフトとの連動などもコストをかけずに行うことができる。既存システムのインテグレーションにかかるコストを考えると負担が少なくなる。
  5. 「Try Before You Buy」。これはアプリケーションの購入前にその評価を行うことができるというもの。従来のシステムでは購入前段階では何ができるのか、何をしたいのかがはっきりしない状態で実装しなければならなかったが、SaaSではそれを考えた上で確認することが可能になる。
  6. 「Pay-as-You-Do Subscription Model」。これは利用したい分だけ料金を支払えばよいという料金体系だ。これは携帯電話の利用料金と同じだとしている。導入後も絶えず評価されることでベンダーが顧客の要望により注意を払う必要があり、よりよいサービスになる。
  7. 「Democratization of Applications」。従来のシステムは開発や導入のコスト負担が大きいため、中小企業がその対象から除外されていた。しかしSaaSならば大企業と同様のアプリケーションを利用することができ、そのメリットを享受できる。

 これら7つの特性を踏まえ、SaaSは単なる技術のアーキテクチャではなく、ビジネスモデルなのだとTzuo氏は語る。さらに、「従来とは違った配信モデルであり、収益モデルとなるものだ。以前ならば実現が難しかった小さな事業がAmazonなどのプラットフォームを利用してコンシューマ向けに実現されているのと同じように、ロングテールにはなりづらい小規模なビジネスもSaaSを利用することでより多方面にアピールできるようになり、新たな市場を創設することができるはずだ」と述べ、セッションを締めくくった。

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