今年も慣例通り10月最初の平日に内定式を行った企業も多く、2024年卒学生の就活も、ほぼ終わりを迎える時期となっています。
コロナネイティブと呼ばれる2024年卒学生たちは、就活をどのように捉えていたのでしょうか?また、彼らの就活の特徴とは? Google人事部で新卒採用を担当していた草深生馬氏(くさぶか・いくま/現RECCOO CHRO)が、1000名を超えるアンケートデータなどを元に、2024年卒学生の就活動向を解説します。
2024年卒学生たちは、コロナネイティブのど真ん中と言える世代です。大学入学前にコロナ禍が始まり、大きく影響を受けながら学生生活を送りました。授業はオンラインが主流で、サークルや部活動などにも打ち込めず、海外留学も難しく、アルバイトの経験も少なかったことでしょう。
就活も、2023年に入った頃から、ようやく対面の活動もできるようになりましたが、全体的にオンライン、オフラインが入り混じっていたと思われます。
彼らはコロナ禍とは無縁だった世代や、学生生活の途中からその影響を受けた2022年卒、2023年卒の学生たちと比較して、どのような就活を行ったのでしょうか?今までも、コロナネイティブという視点で、2024年卒学生の動向に着目していましたが、就活がほぼ終了したと言える現在、改めて、その調査結果をまとめてみます。
2024年卒学生の就活動向として、興味深かった特徴は3点あります。
一つ目は、「コロナ禍はむしろ就活にポジティブな影響を与えた」と捉える学生が7割近かったことです。
2つ目は、「内定承諾後の辞退に抵抗がない」と3割以上の学生が回答していること。実際に内定を辞退した人も3割ほどに上ります。これは、企業側からすれば、驚くべき数字でしょう。
そして3つ目ですが、半数近くの学生が「タイパ」、いわゆるタイムパフォーマンスのよい「効率的な就活」を重視している点です。オンラインと対面を使い分けることで、より効率がいい、効果の高い就活を行っていたようです。
それでは、この3つの特徴を一つ一つ見ていきましょう。
一つ目のコロナ禍自体をポジティブに捉えている点ですが、<新型コロナウイルスの感染拡大による就活への影響を教えてください>という質問に対する回答結果を見てください。
「ポジティブな影響があった」と「どちらかといえばポジティブな影響があった」を合わせると、実に70%近くがポジティブだと捉えています。「ネガティブな影響があった」と答えた学生は10%強に過ぎません。
具体的な理由として挙げられているのが、「オンライン面接が多く、移動時間を気にする必要がなかった」という回答です。今まで地方圏に住む学生は、説明会やインターンに参加するために東京や大阪などの首都圏に出向かなければならなかったので、オンライン化は大きなメリットでした。
地方在住者に限らず、都内、都市圏に住む学生も、移動時間を加味しなくて済むので、例えば13時から1時間の説明会に参加して、その後すぐに14時から始まる説明会に参加できる、という具合に、効率よく就活ができたのです。
理系の学生から、オンライン化のおかげで就活を効率よくできたので、授業や研究活動にも同時に力を入れることができた、という声も上がっています。また、海外留学中にオンラインで海をまたいで日本の企業の説明会に参加した、という学生もいました。
一方、ネガティブな影響として、コロナ禍のせいで「ガクチカ」のネタが作れなかった、という声が聞かれました。就職の面接で尋ねられる定番質問の「ガクチカ」、これは「学生時代に力を入れたこと」の略で、例えば学業、部活動、サークル活動、それを通じたリーダーシップ経験などが含まれます。課外活動では、アルバイト、ボランティア活動、インターンシップ、あるいは何かのコンテストに参加したというような体験談、社会貢献の実績です。コロナ禍がピークだった頃は、そのような活動が大幅に制限されていたため、2024年卒学生たちは、これといった「ガクチカ」経験が積めなかったのでしょう。
また、ネガティブな面として、オンラインは対面と違って会社の雰囲気を知ることができない、という声もありました。企業の人間とコミュニケーションを取ることはできても、そこで働く社員たちの雰囲気やオフィスの様子など、リアルな部分を肌で感じる機会が少なかったというわけです。
ただ、同じようにコロナ禍の影響を受けたとはいえ、2022年卒、2023年卒の学生たちは、先輩たちが就職活動をしている姿を目にする機会がありました。一方、2024年卒の学生はコロナ禍前の様子を全く知らずに就職活動を始めました。その結果、先輩はこんなふうに活動していたのに、自分たちはコロナのせいでそれができない、と不満を生じさせる比較対象がなかったのです。それもポジティブに振れた理由だと感じます。
企業側も、2022年、2023年卒学生の就活に対しては、オンライン化への急激な移行を迫られ、ベストプラクティスを作り切れていませんでした。それが2024年卒学生の就活時期には、1?2年かけて積み上げたオンラインの採用ノウハウを遺憾なく発揮できたのではないでしょうか。
企業が、就活生たちが満足できるクオリティの高いコンテンツをオンライン上でも提供できるようになったことも、コロナ禍の影響がポジティブに捉えられた要因だと推測できます。
次回は残り2つの特徴、「内定承諾後の辞退の増加」と「タイパ重視の就活傾向」について解説します。
草深 生馬(くさぶか・いくま)
株式会社RECCOO CHRO
1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやコンサルテーションを実施。
2020年5月より、株式会社RECCOOのCHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は、スタートアップ企業の組織立ち上げフェーズやや、事業目標の達成を目的とした「採用・組織戦略」について、アドバイザリーやコンサルテーションを提供している。
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