収入減でもやりがい選ぶ--HPによる人と仕事との関係性調査、日本は最下位、1位の国は?

 「仕事への愛着度が高まるのであれば、収入が減ってもかまわない」――HPの調査によると、世界12か国で行った世界規模の主にデスクワーカーに従事している人への調査で、平均で83%がそう答えたという。

 新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)を経て、世界規模で人々の働き方は大きく変わった。HPは、独自調査による社会における仕事との関係性に関する50以上の項目を分析したワークリレーションシップ・インデックス(対仕事関係指数、WRI:Work Relationship Index)を発表。10月にオーストラリアのシドニーにて開催されたSXSW Sydneyにてワークリレーションシップのセッションを開催し、ビジネスリーダーや従業員が考慮すべき点を語った。

HP New Zealand Country ManagerのOliver (Ollie) Hill氏
HP New Zealand Country ManagerのOliver (Ollie) Hill氏

 なお、この調査は、HPがエデルマン・データ&インテリジェンス(DxI)に委託してオンライン調査を実施。2023年6月9日~7月10日にかけて米国、フランス、インド、英国、ドイツ、スペイン、オーストラリア、日本、メキシコ、ブラジル、カナダ、インドネシアの12カ国で調査したもの。合計1万5624人の調査回答者の内訳は、ナレッジワーカー(主にデスクワーカー)1万2012人(各国約1000人)、IT意思決定者3612人(各国約300人)、ビジネスリーダー1204人(各国約100人)。

  1. リモートワークでも成果を出せる--コロナ禍でわかったこと
  2. ワークリレーションシップ・インデックス、日本は5%で最下位、1位はインド
  3. ツールや機器、在宅勤務の自由度--職場環境が厳しい日本
  4. 83%の人が「仕事への愛着度が高まるのであれば収入が減ることを受け入れる」
  5. 「感情的な反応を抑える」時代から「感情を伝え合う」時代へ

リモートワークでも成果を出せる--コロナ禍でわかったこと

 HP New Zealand Country ManagerのOliver (Ollie) Hill氏は、「パンデミックが起きる前は、仕事をする物理的な場所にフォーカスされており、家で仕事をするとその日は休んだとみなされた。しかし、リモートでも同じあるいはそれ以上の成果を出せると学んだ。そして発見したのが、仕事と私たちの関係だ」と説明した。

 健全な仕事と不健全な仕事の関係性をもたらす要因は何か。HPは、「充実感(Fulfillment)」「リーダーシップ(Leadership)」「人中心主義(People-centricity)」「スキル(Skills)」「ツール(Tools)」「職場・ワークスペース(Workspace)」の6つの指標に分けられるという。

仕事を健全に支える指標となるのは、「充実感」「リーダーシップ」「人中心主義」「スキル」「ツール」「職場・ワークスペース」の6つという
仕事を健全に支える指標となるのは、「充実感」「リーダーシップ」「人中心主義」「スキル」「ツール」「職場・ワークスペース」の6つという
6つの指標の日本語訳
6つの指標の日本語訳

ワークリレーションシップ・インデックス、日本は5%で最下位、1位はインド

 調査では平均で世界のナレッジワーカーの約4分の1(27%)しか仕事と健全な関係性を築けていないことが明らかになったという。中でも、仕事と健全な関係性を有する就労者の比率は、トップのインドが50%と飛び抜けて高い一方、日本はたったの5%、米国は28%だ。このように各国でかなりばらつきがあるが、上位にはインドネシア(38%)、ブラジル(37%)といった国が挙がっており、一部の成熟市場国よりも勢いのある新興経済国の方がその関係性はよい傾向にあることがわかった。

ワークリレーションシップ・インデックス(対仕事関係性指数)の1位はインド、日本は最下位
ワークリレーションシップ・インデックス(対仕事関係性指数)の1位はインド、日本は最下位

 HPは、「最高値の50%でさえ、あまり安心できる数字ではない」と指摘する。不健全な仕事との関係性が蔓延している状況は、従業員にとって身体的にも精神的にも悪影響を及ぼし、従業員が仕事との関係性に満足していないと、ビジネスにも損失をもたらすとした。

仕事との不健全な関係性は、従業員の精神的、感情的、身体的なウェルビーイングを低下させる
仕事との不健全な関係性は、従業員の精神的、感情的、身体的なウェルビーイングを低下させる
不健全な仕事との関係性による悪影響を感じている就労者の比率
不健全な仕事との関係性による悪影響を感じている就労者の比率

ツールや機器、在宅勤務の自由度--職場環境が厳しい日本

 なお、世界平均では回答者の約6割に上る、58%の従業員が仕事との関係性に対する期待が過去2~3年で大きく変化したと答え、57%が仕事や職場での待遇に関する期待が高まったと回答しているのに対し、日本のナレッジワーカーの回答は27%と世界の近年の変化とかけ離れた停滞傾向が見られる。

世界全体では、仕事との関係性の質に関する期待が近年高まっているのに対し、日本はかなり低い
世界全体では、仕事との関係性の質に関する期待が近年高まっているのに対し、日本はかなり低い

 そうした理由はどこにあるのか。その一つに職場環境やツールが挙げられそうだ。「会社は自分が仕事で成功するために必要なツールを提供してくれる」「自社のオフィスには、自分が成功するために必要なすべての機器、テクノロジー、スペースがある」「簡単かつシームレスに在宅勤務ができる」といった質問に対し、実感できている人の割合は、グローバルでは23~30%を超える平均値なのに対し、日本は3~6%の一桁台に留まっている。

仕事との健全な関係を支える推進要因調査結果の一例、日本のナレッジワーカーとグローバル平均との比較
仕事との健全な関係を支える推進要因調査結果の一例、日本のナレッジワーカーとグローバル平均との比較

83%の人が「仕事への愛着度が高まるのであれば収入が減ることを受け入れる」

 一方で、ナレッジワーカーの期待が高まった結果として、給与に関する考え方が改まってきているという。実際にナレッジワーカーの83%は、仕事への愛着度が高まるのであれば収入が減ることを受け入れると答えたという。特にインド、ブラジル、インドネシア、メキシコといった新興市場国のナレッジワーカーは、仕事との関係性の向上と引き換えに減給を受け入れる比率が90%を超えている。

 日本でも、84%のナレッジワーカーが仕事との関係性を向上させるために減給を受け入れると回答したという。希望の時間と場所で働くために、希望の時間に働くため、従業員エンゲージメントが平均以上の場所で働くために受け入れられる減給率は世代によって異なっており、Z世代の受け入れる減給率が高い。

83%が仕事の満足度が高まるなら給料が下がってもかまわないと回答
83%が仕事の満足度が高まるなら給料が下がってもかまわないと回答
ナレッジワーカーが受け入れる減給率
ナレッジワーカーが受け入れる減給率

「感情的な反応を抑える」時代から「感情を伝え合う」時代へ

 プロフェッショナルであるためには、感情的な反応を抑える必要があるという時代は終わった――。今回の調査を通じ、重役、上級リーダー、中小企業の経営者、VP、CFO、CEOといったビジネスリーダーにも変革が求められていることがわかる。

 ナレッジワーカーの64%が「人々が職場で感情を伝え合うことを奨励されることが重要である」と回答。また、新しいタイプのリーダーシップが必要であると同意している。またその77%は、上級職のリーダーが共感を示すことの重要性を認識しており、70%は、リーダーが成功するためには高い感情知能を有することが重要であると回答している。一方で、リーダーは自身の行動目標を達成しておらず、ナレッジワーカーの41%は、自社のリーダーが発揮する感情知能は、ナレッジワーカーの期待に応えていないと考えているとした。

世界平均で、「共感力の高いリーダーの下で働く」は「感情知能の高いリーダーの下で働く」「従業員エンゲージメントが平均以上の場所で働く」なら11%の減給率を受け入れるという
世界平均で、「共感力の高いリーダーの下で働く」は「感情知能の高いリーダーの下で働く」「従業員エンゲージメントが平均以上の場所で働く」なら11%の減給率を受け入れるという
ビジネスリーダーと従業員の結びつきと共感の構築も重要になる。そのために受け入れる減給率
ビジネスリーダーと従業員の結びつきと共感の構築も重要になる。そのために受け入れる減給率
HPワークリレーションシップ・インデックス(日本語版・PDF)
HPワークリレーションシップ・インデックス(英語版)

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