ワーケーションはしてみたいけれど、小さな子どもがいたら無理――そう思っている方もいるのではないでしょうか。我が家もそうでした。
しかし、今では各地の企業や自治体が取り組むさまざまなワーケーションプランを利用して、東京を拠点に、各地を点々としながら暮らしています。計算すると、2023年のうち3カ月は「自宅とは違うどこか」に住んでいることになりそうです。
今回は、6月中旬から7月上旬までの3週間、北海道室蘭市での滞在を紹介します。
我が家は、40代事実婚カップル&3歳になったばかりの息子という構成です。基本は東京都で暮らしていて、筆者は1人PR会社を経営し、夫はフリーのウェブエンジニアです。息子は生後5カ月から都内の保育園に通っています。
旅行好きな私たちは、息子が生まれた直後から、PCを片手にさまざまな地域に旅行に行って、旅をしながら仕事に取り組んでいました。
しかし、小さい子どもを抱えてのワーケーションは大変です。遊び盛りの未就学児を一人でウロウロさせるわけにもいきません。結局、どちらかが仕事中は、どちらかが子どもの面倒を見て…の繰り返しになりがちです。そこで、私たちが目をつけたのが「保育園留学」という取り組みです。
「保育園留学」は、子どもは地元の保育園に行って普段とは異なる環境で思い切り遊び、親も非日常な空間で思いっきり集中して仕事に取り組むことができるという、素晴らしい取り組みです。私たちもこの取り組みを利用して、2022年秋に北海道厚沢部町、2023年春に熊本県天草市に滞在しました。
この「保育園留学」に惚れ込んだ私たちは、同じような取り組みができる全国の自治体をリサーチするようになりました。そして、その1つが、今回滞在した北海道室蘭市です。室蘭市には「室蘭市ワーケーション向け短期入園受け入れ」という制度があり、私たちはこの利用者第一号となりました。
まず、室蘭市のことを簡単に紹介します。北海道の道央エリアに位置する人口約8万人の都市で、新千歳空港まで特急列車でも自動車でも1時間ほど。札幌までは1時間半程度。交通アクセスが非常に良いです。
街は三角に海に突き出したような形をしており、さらに絵鞆半島(えともはんとう)によって形成された室蘭港を有しており、海との接地面積が多いのが特徴です。ここに、日本製鉄をはじめ、鉄鋼業の会社、巨大工場が広がる重化学工業・港湾都市として栄えています。
近年は、産業構造の変化から、大手企業の撤退、それに伴う人口流出が問題になっていると聞きますが、市内には大きなスーパーもたくさんあり、病院やドラッグストア、コンビニなどもたくさんあって、たった3週間の滞在でしたが、非常に暮らしやすかったです。
この室蘭市が始めた「室蘭市ワーケーション向け短期入園受け入れ」は、未就学児を連れて室蘭市でのワーケーションを希望する家族に対して、保育園・幼稚園を自治体が探してくれるサービスです。全く縁故がない土地で、突然保育園を探すのは至難の技です。自治体が間に入ってくれることで、安心して保育園・幼稚園を探すことができます。
私たちは、市の紹介で「ならの実学園・桜ヶ丘幼稚園」に3週間通わせていただきました。おそろいの制服に、かわいいカバン。のりやハサミを使った制作物やお絵描き、都心の保育園では考えられない広い園庭を駆け回り、木の実を拾ったり、虫を観察したり。息子は、「おかあさんにおみやげ!」と言って、毎日のように折り紙の制作物や木の実を持って帰ってきました。
また、運良くタイミングが合って、運動会に参加させていただきました。近所の小学校のグラウンドを借りて、晴天の中行われた運動会。私たちが通常お世話になっている園にはそもそもお庭がありませんので、屋外で運動会をするのはこれが初めてです。息子は、夢中になって競技に取り組んでいました。また、お遊戯の時間には、保護者も一緒になってダンスをしました。これは一生物の経験でした。
たった3週間の滞在でしたが、息子はこの幼稚園が大好きになり、親友もできました。東京に帰った今でも、親同士の「LINE」を使って写真やボイスメモを送り合ったりしています。また、短い滞在にも関わらず、愛情いっぱいで息子に向き合ってくださった幼稚園の先生方に、感謝してもしたりないくらい感謝しています。
「室蘭市ワーケーション向け短期入園受け入れ」では、保育園・幼稚園は紹介してもらえますが、今の段階では、滞在中の住まいは自分たちで探す必要があります。ホテル暮らしという選択肢もありますが、長期間の滞在ですし、子どもがいるなら家が楽ということで、ウィークリーで貸し出している眺望の良い一軒家を借りました。業務効率を考えて、ワーケーション先にも使い慣れたデスクトップPCを持参する我が家(ノートPCと合わせて2人で最低4台のPCを持って移動しています)。広い家だったので、仕事道具を広げても伸び伸び働くことができました。
もちろん、自宅で仕事する以外の選択肢もあります。市内には、「THINK M」というまだ新しくて美しいシェアオフィス&コワーキングスペースや、自治体が運営しているコワーキングスペース「サテライトオフィス室蘭」もあり、自分に合った環境で仕事をすることができます。
夏の北海道は朝が早く、夜も遅くまで明るいのが特徴です。私たちが滞在した時期はちょうど夏至。早朝3時半にはあたりが薄明るくなります。朝型で仕事をしたい人に、夏の北海道のワーケーションはオススメです。
室蘭は比較的人口が多い街なので、子どもを連れて遊びに行ける場所も充実しています。我が家のそばには「室蘭民報みんなの水族館」という、水族館と遊園地がセットになったような市立水族館がありました。なんとここ、北海道で最初にできた水族館だそうです。息子もすっかり気に入っていました。また、イルカウォッチングや工場夜景を楽しむクルーズ船も出ています。
また、室蘭から東に向かうと登別温泉、西に向かうと洞爺湖、有珠山・昭和新山などがあります。どちらも室蘭から自動車で1時間以内で到着できます。室蘭を拠点に、海も、山も、湖も、温泉も楽しめる。平日の日中はガッツリ働いて、夜や休日はしっかり遊ぶ。室蘭での滞在は、非常に満足度が高いものとなりました。
いかがでしたか。室蘭でのワーケーション、個人的には非常にオススメです。特に、未就学児連れでワーケーションに臨みたいという方は、ぜひチャレンジしてみてください。きっと、一生に残る家族の貴重な時間を過ごすことができるでしょう。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス