岡山県の笠岡市が2023年3〜4月にかけてモニター実証した、親子ワーケーションプログラム「いくじもケーション」(育児と地元をかけあわせた造語)に参加した。平日は地元の保育園に子どもを預かってもらい、親は現地のカフェやコワーキングスペースなどで仕事。休日には観光地や地元料理を楽しめるプログラムだ。
前編では、富岡保育園での体験レポートや、同園が子ども主体の保育園にどのように変遷していったのかを関係者の声とともに紹介した。後編では、笠岡市でのバケーションにフォーカスし、3泊4日の期間中に楽しんだご当地グルメや観光地、笠岡駅から船で行くことができる白石島、そこでの「機織り」「魚捌き」体験について紹介する。
富岡保育園に通っていた前半の2日間は、園から車で20分ほどの場所にある「土倉邸」に宿泊した。ここは明治期に立てられた古民家をリノベーションしたゲストハウスで、普段は地域住民が集まって町づくりをする場やカフェとしても活用されているという。宿泊期間中は他の家族は泊まらなかったため、古民家を貸切で満喫できた。
昔ながらの長い木の廊下、ひんやりとして気持ちいい畳、夜になると子どもにとっては少し怖い本格的な兜飾り、脱衣所に突如として現れる巨大なクモなど、東京生まれの子どもたちにも、私が幼少期に祖父母の家で感じた「田舎のお婆ちゃんち」での経験を疑似的にさせてあげることができたように思う。
また普段は、子どもたちは朝起きたらすぐにテレビを見始めてしまうが、滞在中はテレビをほとんどつけることはなく、縁側でゆっくりと家族で朝食を楽しんだり、土倉邸の庭や周辺を歩き回ったりして、東京ではなかなか味わえない自然豊かな笠岡ならではのスローライフを楽しんだ。
笠岡市での食事については、瀬戸内海に面しているため魚を選べば間違いはないが、私がオススメしたいのが笠岡市内に十数軒あるご当地グルメ「笠岡ラーメン」。豚ではなく鶏のチャーシューを使い、斜め切りしたネギをたっぷり乗せた、鶏ガラベースの醤油ラーメンで、あっさりしつつもコクがあるスープがやみつきになる。笠岡に訪れた際にはぜひ味わってほしい。
笠岡ならではの観光地としては、カブトガニの繁殖地である神島水道をのぞむ世界で唯一の「カブトガニ博物館」や、実物大の恐竜たちの模型がいたるところにある大迫力の「恐竜公園」、春には見渡す限りの菜の花が咲き誇る「道の駅笠岡ベイファーム」などを巡った。今回は時間の都合で行けなかったが、笠岡市出身の日本画家である小野竹喬氏の作品を展示する「竹喬美術館」にも機会があれば訪れてみたい。
後半の3日目と4日目は、笠岡駅から船に乗って40分ほどで行くことができる白石島で過ごした。笠岡には30近い島があり、そのうちの7つが有人島となっている。椿や水仙などが咲き乱れている島や、迫力ある石切場がある島、昔ながらの漁村がある島など、それぞれに異なる魅力があるという。
わが家が滞在した白石島は、岡山県の三大海水浴場の1つである白石島海水浴場や、島内を一望できる巨大な岩が印象的なハイキングコースなどが楽しめる、人口約400人の穏やかな小さな島だ。子どもたちは人生初の本格的な船での移動だったが、親の心配をよそに、波しぶきや見たことのない島々に大興奮していた。
今回のいくじもケーションでは、子どもたちが島民の方から「機織り」や「魚捌き」を教わるプログラムも用意されていた。どちらも幼児には難しいだろうと私は勝手に決めつけていたが、子どもたちは島民の方に手順を教えてもらいながら、最後まで集中して取り組んでいた。こうした子どもたちの知られざる一面を引き出してもらえたことが嬉しい。
また、白石島では国際交流ヴィラに宿泊。白石島海水浴場にわずか徒歩3分で行ける高台に建てられたお洒落な宿泊施設で、普段は多くの外国人観光者が泊まっている。この日も2組の外国人夫婦が泊まっており、子どもたちは緊張しながらも、初めての国際交流を楽しんでいる様子だった。また親である私たちも、スマホを手放して、高台から眺められる美しい海や山を独り占めする贅沢な時間を過ごし、デジタルデトックスできたように思う。
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