UPSIDERは6月7日、AIチャット型の業務効率化ツール「AI Coworker」を8月にリリースすることと、グロースステージ以降のベンチャー企業に対する融資を推進する子会社「UPSIDER Capital」を5月31日に設立したことを発表した。
UPSIDER 代表取締役を務める水野智規氏は、「創業時から、『挑戦者を支える金融機関になる』という思いがあった。(今回発表した取り組みで)総合的な金融機関になっていきたい」という。
AI Coworkerは、法人向けクレジットカード「UPSIDER」、ビジネスあと払いサービス「支払い.com」に次ぐ同社第三のサービスで、初の決済領域以外のプロダクトとなる。
契約書管理システムや会計システムなどの外部ツールと、チャットツール「Slack」を連携し、契約書の締結、稟議承認、支払いなどのアクションを、Slack上の会話形式で完結できる。AIは企業の申請ルール、組織図なども学習し、従業員の役割に応じたリマインドや、各ツール間のデータ突合の代行なども実施するという。
これにより、企業の管理者、従業員が複数のSaaSにそれぞれログインして行う必要があった苦労する細かな業務を、同ツールで対応可能。契約書や請求書、決済処理までを一気通貫で管理でき、上場企業に求められるレベルのガバナンス体制を簡単に構築できるとしている。
AI Coworkerデモ動画
水野氏は、AI Coworkerを提供する背景として、「さまざまなSaaSが出てきていて、100以上を利用している企業もある。使いこなせない、それらに伴うさまざまな社内ルールを覚えきれない、それらに情報が散在しすぎている、などの課題が出ている。SaaSで便利になったはずなのに、その間を人が埋めている。Slackの会話という形式で提供することで、ワークフローというよりは“派遣の秘書を1人雇う”イメージで活用できる」と説明した。
AI Coworkerは、UPSIDERと支払い.comの既存ユーザー2万社以上や、スタートアップ企業へ無償で提供する予定。既存ユーザーの利用率が高いSlackから対応するが、「Microsoft Teams」などのチャットツールにも対応する予定だ。
子会社となるUPSIDER Capitalでは、資金を直接融資するのではなく、大手金融機関とタッグを組み、その資金を活用した企業融資を目指す。具体的には、UPSIDER Capitalで成長企業の信用力を適切に評価し、大手金融機関に対して提供していくという。
同社のUPSIDERカードでは、過去のデータである財務諸表をベースとした与信に加え、AIを用いて取得したリアルタイムのデータから導き出す“AI与信”を活用し、事業成長スピードの速い企業への高額な利用限度額を実現している。
UPSIDER Capitalでは、UPSIDERカードで培ったノウハウをもとに、「これから何を仕入れるのか」「これから誰を採用するのか」「いつオフィスを移転するのか」といったAI Coworkerで取得するさまざまな情報を組み合わせ、現在と未来の企業情報を取得。大手金融機関に提供し、スピーディーかつ、大きな金額の融資の実現を目指すという。
「スタートアップ企業、特にグロースステージやレイターステージ以降の企業が、より大規模な融資を受けやすくする。通常、成長企業が融資を借りるためには、『3年以上』『黒字である』『担保がある』といった条件をクリアする必要があり、なかなか借りることができていない。UPSIDERカードで培った与信のノウハウをもとに、“ノーリスク・ローリターン”が多い現状を、“ミドルリスク・ミドルリターン”“ハイリスク・ハイリターン”なところまで広げたい」(水野氏)。日本におけるスタートアップ企業の資金調達に新しい選択肢を提供することで、世界で戦える日本企業を生み出すことを目指す。
なお、同社のVPoP(Vice President of Product)として、人工知能技術の研究開発・AIソリューションおよび、AI SaaSを提供するPKSHAグループで、AI SaaSシリーズの開発全体統括を務めた森大祐氏が加入。AIを用いたプロダクト開発の経験が豊富な森氏の経験と知見を、AI Coworkerの開発および、UPSIDER Capitalのプロジェクト推進に生かしていくとしている。
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