法人向けクレジットカード「UPSIDER」を提供するUPSIDERは5月11日、シリーズCラウンドで総額150億円を資金調達すると発表した。
第三者割当増資で約54億円を調達する見込みで、4月末で約49億円の増資が完了。加えて、5月末前後のファイナルクローズに合わせ、大手金融機関から約100億円の追加融資枠を確保。創業からの累計調達額は約200億円になるという。
第三者割当増資は、既存株主のWiLと、新規引受先となるベンチャーキャピタルのDST Global Partnersがリード投資家を務める。海外投資家のArena Holdings、Tybourne Capital Management、国内金融大手で三菱UFJフィナンシャル・グループの三菱UFJキャピタル、クレディセゾングループのセゾン・ベンチャーズが新規引受先となるほか、ANRI、グローバル・ブレインが追加で出資する。
Facebook、Spotify、Alibaba、Slackなどに投資してきたDST Global Partnersにとっては、日本初のリード投資案件になるとしている。
UPSIDERは、成長企業を対象に、利用限度額や会計処理などの財務課題を解決する法人向けのクレジットカードを提供。前払い、後払いどちらにも対応できる最大1億円以上の利用限度額や、バーチャルカードの発行と管理機能、会計処理の早期化を助けるSaaS機能などが好評だ。
アクティブな利用企業は1000社以上、利用継続率は99%以上で、売り上げは2021年対比10倍、2021年10月のシリーズB完了から半年で4倍以上に成長したという。
同社は今回の資金調達の背景に、「企業間決済の次世代化」というグローバルな流れの中で、米国などで類似ビジネスを展開するユニコーン企業と遜色ない成長速度を実現していること、日本市場のリーディングカンパニーとして日本固有の事情、ニーズに深く根付くプロダクトを展開していることなどがあると分析。顧客満足度と利用継続率も高く、著名な海外投資家の注目が集まったとしている。
また、UPSIDERで代表取締役を務める宮城徹氏は、成長の大きな要因として、クレジットカード市場そのものの拡大を語る。
「法人向けのクラウドサービスやレンタルオフィス、ウェブの広告枠など、法人がクレジットカードを使う機会が増えた。少数の役員が経費などに使う時代から、各業務の責任者それぞれが使う時代へと変化した」と宮城氏は現状を説明する。
使う用途と回数の変化に伴い、使う人の数や決済額が増加。決済総額が数百万円から数億円規模まで増えた企業もあるという。クレジットカードの使用ルールや許諾範囲は会社ごとに異なる。加えて、支払い情報の詳細まで把握する必要がある。こうした背景を踏まえ、企業ごとにより強固な管理体制が必要になってくる。宮城氏は「UPSIDERの法人向けクレジットカードを使っていただければ、許諾管理や支払い後の確認が容易になり、経理の負担が軽くなる」とメリットを話す。
調達した資金は、マーケティングのほか、海外進出を見据えたプロダクトの多角化などに充てる。その1つが、新規投資家として参画したクレディセゾンと2月から共同で提供する、すべての企業間決済をカード払いにできる決済サービス「支払い.com」だ。
書類提出や面談、審査の必要なく、最短60秒で支払い期日を延長可能。「リボ払い」「分割払い」などが可能な個人向けクレジットカード同様、法人向けクレジットカードにも支払いの選択肢を増やし、資金繰り改善の解決策を提供するという狙いがある。ベータ版をリリース以降、すでに数百社以上の企業が利用し、資金繰り改善に寄与しているという。
採用にも注力していく。宮城氏は特に、エンジニアへのこだわりを強調。「UPSIDERは従来からエンジニアが半分以上という構成だが、今後もそうありたい。現在エンジニアが多い企業の次のウェーブとして、日本のエンジニアのトップ層を大きく抱えたい」と、テクノロジーで大きな価値を提供するという同社の方向性を語った。
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