グーグルのAI検索「SGE」はネットの体験を変え、収益モデルも変えるかもしれない - (page 2)

Imad Khan (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2023年05月29日 07時30分

 SGEの登録受付(米国内で順番待ちリストに申し込む必要がある)は始まったばかりなので、使い勝手についてお伝えできるデータはない。だが、Microsoftは過去3カ月にわたってAIを組み込んだBingのフィードバックを集めているので、AIを搭載したGoogle検索に消費者がどう反応するかという判断材料になるかもしれない。

 「新しいBingによって生成された答えについてのフィードバックはおおむね肯定的で、プレビューを使った人のうち71%はAIを利用した回答を好評価している」、とMicrosoftの広報担当者は述べた。「チャット機能の利用状況も良好で、1回のセッションで複数の質問が投げかけられ、新しい情報の発見につながっている」

 AIによって生成されたニュース記事が、GoogleやBingのAIによる検索結果にどの程度入り込んでくるかは不明だ。米CNETも含めて、メディアでは、すでにAIを使った記事執筆の実験が進んでいる。あいにく、AI自体が常に正確とは限らないし、「幻覚」を起こすこともある。自信のある様子で何かを正しいと言うが、実は正しくないというケースだ。

 この幻覚の問題がいずれ解決した場合、生成AIを使った検索の方が消費者にとって高速で、最終的には質が高いという結果になるかもしれない。だが、デジタルパブリッシング業界にどのような影響が及ぶかは、今もなお不透明だ。まして、全体的にリンクのクリック回数が減ることになった場合はどうなるのか。

 Googleの広報担当者によると、「Google検索でLLM搭載の新しい機能を実験しているが、貴重なトラフィックを幅広いクリエイターに送り、健全でオープンなウェブをサポートするというアプローチを優先する姿勢は維持していく」という。Googleが、SGEでも目立つようにソースにリンクしているのは事実だが、SGEでサイトへのトラフィックが増えたり、改善されたりするのかどうかは、不確かだ。

 AI検索を使ったときのソースへのトラフィックに関する質問に対して、Microsoftから回答は得られなかった。Googleによると、パブリッシャーへの補償に関する情報を共有する予定はないが、「引き続き、幅広いエコシステムと連携していく」という。

 デジタルマーケティング企業SOCiで最高マーケティング責任者を務めるMonica Ho氏は、「(生成AIは)ソースへのトラフィック量を減らすことになる。それが狙いだからだ」と話している。だが、サイトに流入するトラフィックは質が高くなると同氏は推測する。ユーザーはサイト間を行ったり来たりせず、具体的な情報を探すからだ。

 トラフィックをGoogleに頼れなくなった場合、現実的な代替手段はないかもしれない。「Facebook」などのソーシャルメディアプラットフォームは、メディアにとって信頼できるパートナーではなく、気まぐれにニュースの順位を下げることがすでに分かっている、と指摘するのは、Reuters Institute for the Study of Journalismのディレクタ―を務め、オックスフォード大学の政治コミュニケーション学教授でもあるRasmus Kleis Nielsen氏だ。同氏はまた、「Instagram」や「TikTok」といったプラットフォームは、「外部サイトへの遷移を促すことが比較的少なく、検索サイトやSNSのように、リンクが目立つようには扱われていない」、としている。

 現在、検索エンジンは、ウェブサイトを日々「クロール」して新しい情報を拾い集め、それをインデックス化して検索結果を生成している。各ウェブサイトが検索エンジンによるクロールを無料で認めているのは、トラフィックのコンバージョンのためだ。だが、もし検索にAIが組み込まれてクリック数が減少するとしたら、検索の収益モデルは根本からの見直しを迫られる可能性がある。

 「元のコンテンツは有料扱いになり、LLMモデルはそれを読み取るために料金を支払わざるを得なくなるだろう」。対話型AIの企業であるSatisfi Labsの最高経営責任者(CEO)を務めるDon White氏はこう話している。同氏の予測する未来は、「Spotifyスタイルの報酬モデル」、つまりペイパービュー方式のサイトだ。

 最終的にGoogleは、質の高いコンテンツを制作するという動機を保つために、クリエイターやメディアに収益を届ける形を模索しなければならないだろう。

 「質の高いデータがエンジンにフィードされなければならないが、Googleが、独自の信頼性の高いオリジナルコンテンツすべてを作っているわけではない」と、Ho氏。「コンテンツを生み出すのはクリエイターのはずだ。Googleは、どうにかしてその検索エンジンにフィードし続けなければならないことも、コンテンツを生み出し続けることに見合った価値がともなうようにしなければならないことも、分かっている」

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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