ソニー経営方針説明会、足元のリスクマネジメントに重点--金融子会社は分離へ - (page 3)

「三苫の1mm」捉えたソニーのミラーレス一眼カメラ

 ソニーグループでは、直接つながる人を 10億人に広げるという長期的なビジョンを発表しているが、「まずは特定領域で感動を届け、クリエイションにつながる“Community of Interest”につげたい」と述べた。

 加えて、ET&S(エンタテインメント・テクノロジー&サービス)分野でもクリエイションを強化。ハリウッドの映画スタジオにおけるデジタルシネマカメラ「VENICE」シリーズの採用拡大や、映像表現をテクノロジーで支えるバーチャルプロダクションの活用のほか、審判判定支援で知られる Hawk-Eye Innovationsを「スポーツの感動を生み出すエンタテインメントテクノロジーサービス」と位置づけるとともに、CMOS イメージセンサーを、「感動を生み出すクリエイション半導体」と定義。

 カタールの「FIFAワールドカップカタール2022」での「三苫の1mm」の映像を捉えたのが、ソニーのミラーレス一眼カメラ「α1」であったことに言及。「一瞬を切り取ることを目標に開発したイメージセンサーが、勝敗を分けた瞬間を撮ることに貢献した」と胸を張った。さらに、スマホへの搭載を通じて、世界中のユーザーがクリエイターになることに貢献していることも強調した。

「FIFAワールドカップカタール2022」での「三苫の1mm」
「FIFAワールドカップカタール2022」での「三苫の1mm」

 「この分野には、過去5年で1兆円以上を投資しており、今後もクリエイションを支えるキーデバイスとして注力していく」と語った。

 なお、吉田会長CEOは、「最近、六本木の映画館で、ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービーを見た。素晴らしいIPであり、エンタテインメントであると感じた。私がスーパーマリオのゲームに、集中してプレイしていたのは30年前だった。愛されるキャラクターは、30年、50年、100年と生きる。私たちも、そういう領域にしっかりと投資をしていきたい。感動は懐が深く、排他的ではない。エンタテインメントは、成長領域であり、人と人を結びつける力がある」と語った。

 「感動空間の拡張」については、「感動の場を、現実空間から仮想空間、移動空間に広げるという長期視点でのチャレンジを行う」とした。

 仮想空間は、「クリエイションの場であり、人と人とがつながる場を提供できる」と位置づけ、ゲームのライブサービス、音楽アーティストのライブ、スポーツのファンエンゲージメントを高める取り組みを推進。『PlayStation VR2』によって仮想空間に導いたり、手軽に仮想空間に参加できたりするモバイルモーションキャプチャー「mocopi」、スポーツ選手の現実の動きを再現するために骨格情報を推定するトラッキングシステムなどのテクノロジーを活用し、仮想空間と現実空間をシームレスにつなぐことにも取り組むという。さらに、ゲーム空間のなかでの体験価値を高めるレーシングAIエージェント「Gran Turismo Sophy」は、リアルとバーチャルをAIで結んだものになるとして、「AIは、クリエイターの創造性を拡張することができる重要なテクノロジーである。今後も、研究開発から社会実装まで進めていく」と語った。

 移動空間では、イメージング・センシング技術、エンタテインメント、5Gを含む通信・ネットワークなどの領域で、モビリティの進化に貢献。ソニー・ホンダモビリティの自動車の新ブランド「AFEELA(アフィーラ)」にもこれらの技術を提供。ホンダやEpic Games との協業により、リアルタイム3D制作ツール「Unreal Engine」を活用した新たなエンタテインメントを追求するという。

 宇宙空間においては、超小型人工衛星『EYE』を通じた感動体験の探索にも取り組んでいるとした。

1980年代から取り組むインドでの事業展開

 説明のなかでは、インドでの事業展開について、時間を割いて説明した。ソニーは、1980年代からインドに進出。エレクトロニクス製品を皮切りに、感動を創り、感動を届ける製品を提供してきた一方で、ここにきて、ソニー・ミュージックエンタテインメントインディアでは、20%以上のシェアを獲得したり、Sony Pictures Networks India(SPNI)では、DTCサービス「Sony LIV」を提供し、高い評価を得ていることを示した。また、SPNIは、Zee Entertainmentとの合併を計画しており、地域文化に根差したクリエイションのさらなる拡大を目指すという。

インドでの事業展開
インドでの事業展開

 SPNI CEOのN.P.シン氏は、「インドで注力しているのは、プラットフォーム全体での視聴者の拡大につながる感動コンテンツを制作することで、業界内でのリーダーとしての地位を強化することである」と前置きし、「インドのGDP成長率は6.3%と高く、14億人の人口を擁し、メディア&エンタテインメントの2030年までの年平均成長率10%、2030年には600億ドルを超える市場規模になると予想されている。インドは、アーティスト、コンテンツクリエイター、ゲーム開発者、各種スタジオやプラットフォーム、テクノロジー企業にとって大きな機会がある市場である」と述べた。

Sony Pictures Networks India CEOのN.P.シン氏
Sony Pictures Networks India CEOのN.P.シン氏

 さらに、「SPNIは26チャンネルを運用し、167カ国7億人に視聴サービスを提供しており、Sony LIVは8言語で、合計4万時間以上のコンテンツを保有し、有料会員数は3300万人に達している。SPNIはスポーツコンテンツにも多額の投資を行っており、クリケットの主要な公式試合や、テニスの世界4大大会なども放映している。また、SET IndiaのYouTubeチャンネルへの登録者数は1億5600万人となり、世界で3番目に多い」などとした。

 さらに、Sony Research Indiaでは、ビデオ分析やレコメンドエンジン、音声認識などのAIモデルを開発していることを紹介したほか、ソニー・インタラクティブエンタテインメントでは、ゲームクリエイターを支援するIndia Hero Projectを開始していること、22組織と連携し、LGBTQ+の支援を強化。約5万人をサポートしていることなどを紹介した。

 なお、2010年からスタートしている環境負荷ゼロを目指す長期環境計画「Road to ZERO」に関して、吉田会長CEOがユニークな観点からコメント。「Road to ZEROを発表した2010年のソニーの純利益は2600億円の赤字だった。会社がサステナブルではないのに、こういう議論をしている意味があるのかと思ったが、いまはそう思った自分を反省している。13年前に、このメッセージを出したソニーを誇りに思っている」と述べた。

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