ソニーグループは、2022年度(2022年4月~2023年3月)の連結業績を発表した。売上高および金融ビジネス収入は、前年比16.3%増の11兆5398億円、営業利益は同0.5%増の1兆2082億円、調整後営業利益は同3.7%増の1兆1804億円、税引前利益が同5.6%増の1兆1803億円、当期純利益が同6.2%増の9371億円となった。
ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏は、「売上高、営業利益はいずれも過去最高を更新した」と述べた。
一方、2023年度通期業績見通しは、売上高および金融ビジネス収入が前年比0.3%減の11兆5000億円、営業利益は同3.2%減の1兆1700億円、調整後OIBDAは同2.7%増の1兆7700億円、調整後EBITDAは2.7%増の1兆7500億円、税引前利益が同3.4%減の1兆1400億円、当期純利益が同10.4%減の8400億円とした。
「2023年度は不安定な事業環境のなか、足元のリスクマネジメントに重点を置き、中期経営計画の目標達成に向けた総仕上げを進める1年と位置づけている」と述べた。
セグメント別の通期業績と通期見通しについても説明した。ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高は前年比33%増の3兆6446億円、営業利益は28%減の2500億円と、大幅増収、大幅減益となった。また、通期見通しは、売上高は前年比7%増の3兆9000億円、営業利益は8%増の2700億円とした。
「2022年度の売上高は為替の影響や、『PlayStation 5』(PS5)のハードウェアの販売増加が貢献した。だが、営業利益は、自社制作ゲームソフトウェア販売の増加や、ハードウェアの収益性改善などがあったものの、ソフトウェア開発費の増加、買収関連費用の計上などにより、大幅な減益になった」とした。
PS5の販売台数は、第4四半期だけで630万台に達し、2022年度通期では1910万台を出荷したという。「流通在庫の正常化が進み、ほぼ全世界で、お客様をお待たせすることなく、PS5を届けられるようになった。引き続き、PS5の普及加速に努め、2023年度は、歴代コンソールでは最多となる年間2500万台の販売を目指す。『PS4』からスイッチするユーザー、新たに購入するユーザーをもとに予測したものであり、十分達成可能なターゲットである」とした。
加えて「どんな時代になっても、なんらかのハードウェアが必要である。コンピューティングパワーが手元にあるのか、クラウドにあるのかといった違いが発生するかもしれないが、クライアントがないとゲームが楽しめない。テクノロジーの進化とニーズにあったハードウェアを提供することが大きな価値になる」とも述べた。
また、「PS5の販売増はエンゲージメント指標にも影響している」と指摘。2023年2月および3月のサードパーティーソフトの売上げ(ドルベース)が、前年同月を上回り、3月のMAU(Monthly Active Users)は、前年同月から230万アカウントの増加となったという「ハードウェアの出荷時点から、エンゲージメント改善効果が表れるまでには1~2カ月を要するため、今後の動向にも注視していく」と述べた。
また、自社制作タイトルの拡充にも努めており、2022年11月に発売した「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」のヒットもあり、自社制作タイトルの売上高は前年比41%増(ドルベース)という大幅な伸長を見せている。2023年度は、「スパイダーマン2」のリリースを予定。「新規IPの創出やカタログタイトルのPC展開、ライブゲームサービスの開発強化も進める」とした。
音楽分野の売上高は前年比24%増の1兆3806億円、営業利益は25%増の2631億円。2023年度通期見通しは、売上高は前年比2%増の1兆4100億円、営業利益は前年並の2650億円。「音楽分野としては過去最高益を更新し、6事業セグメントのなかで最大の利益となった。第4四半期におけるストリーミング売上げは、音楽制作で前年比23%増(ドルベースでは8%増)、音楽出版で29%増(同13%増)という高い成長を達成。有力アーティストとの関係強化、新人の発掘および育成、The OrchardやAWALを通じたラインアップの拡充や新興市場での事業拡大を進め、市場を上回る成長を遂げている。2022年度のSpotify週次ランキングの上位100曲に平均43曲がラインクインし、前年度から大きくシェアを伸ばしている」などと述べた。
2023年1月にMiley Cyrusがリリースした「Flowers」は、Spotifyにおける1週間のストリーミング回数が過去最高を記録したことにも触れた。
映画分野の売上高は前年比11%増の1兆3694億円、米ドルベースでは8%減となった。営業利益は45%減の1193億円。2021年度にGSN Gamesの事業譲渡に伴う利益計上の反動により、大幅な減益となっている。2023年度の通期見通しは、売上高は前年比11%増の1兆5200億円、営業利益は前年並の1200億円とした。
「2023年度は劇場公開作品数の増加や、Crunchyrollおよびインド事業の成長により、増収を見込んでいる。だが、映画公開におけるマーケティング費用の増加や、前年度に大型作品の公開が少なかったことによる減収影響がある」とする一方、「1000億円台の営業利益を創出できる事業構造となっている。米国では3月以降、他のスタジオや大手動画配信業者による大型作品の公開が本格化しており、劇場興行の活性化が期待される。テレビ番組制作においては低予算作品へのニーズの高まりを受けて、9つの製作会社を擁するSPT’s(Sony Pictures Television) Nonfictionを立ち上げ、制作力を強化した。
さらに、日本のアニメ産業全体に占める海外市場比率が48%にまで上昇しており、世界最大級のアニメ専業DTCであるCrunchyrollの有料会員数も1070万人に達した。新興市場での事業拡大に加えて、アニメ映画作品の海外配給やグッズ販売などの多面的なビジネスも強化することで、ファンコミュニティとのエンゲージメントを深めている」と述べた。
エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野の売上高は前年比6%増の2兆4760億円、営業利益は16%減の1795億円となった。通期見通しは売上高が前年比4%減の2兆3800億円、営業利益は前年並の1800億円とした。
「テレビの減収はあったものの、為替影響がプラスに働いた。2022年度は厳しい事業環境のなか、オペレーションの強化と費用コントロールの徹底により、期初の計画通りの利益を達成した。2023年度は景気減速などのリスクをより厳しく見込んでいる」とした。
また、「事業環境が厳しいテレビやスマホでの固定費削減を進めていく。テレビはかなり慎重に見ており、スマホの台数も大幅に絞り込む。デジカメに対する需要は堅調であり、競争力ある商品市場投入などにより、収益機会を最大化していく。ヘッドホンは高付加価値モデルにフォーカスする。また、既存事業の収益性を維持と、成長領域へのシフトを進める二軸経営を進めている」と述べた。
イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年比30%増の1兆4022億円、営業利益は36%増の2122億円。2023年度通期見通しは、売上高は前年比14%増の1兆6000億円、営業利益は6%減の2000億円とした。
「2022年度は、モバイル機器向けイメージセンサーが増収となったが、スマホ市場は中国を中心に想定よりも若干悪化しており、2023年度の事業計画も発射台が一段下がった形で見積もる必要がある。2023年度の事業環境は不安定であるとの認識のもと、上期までは需要が低迷するとの予測を織り込んだ。しかし、モバイルセンサーの大判化や高画質、高性能のトレンドを牽引しており、大判1インチセンサーを搭載した中国スマホメーカーのフラッグシップモデルが次々と市場投入されている。競合を大きくアウトパフォームしており、2022年度のイメージセンサーの市場シェアは51%に達している。難易度が高い差異化技術をしっかりと立ち上げ、高付加価値化のリーディングポジションをさらに強固なものにすることで、2024年度以降に、最終製品市場の回復が本格化した段階で、再度成長を加速できる事業基盤を構築する」と語った。
金融分野の金融ビジネス収入は前年比5%減の1兆4545億円、営業利益は49%増の2239億円となった。通期見通しは、金融ビジネス収入は前年比40%減の8700億円、営業利益は20%減の1800億円としている。2023年度は、IFRS第17号の適用に伴い、生命保険事業において、従来は保険料収入に含まれていた解約返戻金相当額が収入から控除されることなどが大幅なマイナスに影響している。
2023年度は第4次中期経営計画の最終年度となる。同社では、2023年度までの3年累計の調整後EBITDAを4兆3000億円としていたが、これを修正し、5兆円とした。また、整備投資では、イメージセンサー向け設備投資と、全社R&D、G&NSにおけるサーバー投資などの増加分として4000億円を追加。3年間で1兆9000億円を見込んでいる。
「音楽、映画分野を中心に当初計画を大幅に上回る進捗となっている。中長期的な成長に向けた投資は継続し、短期的には市場環境の変化を踏まえ、バリエーションや実行時期をより慎重に見極めていく」と述べた。
なお、次期中期経営計画については、「中長期的な事業成長をより強く意識しつつ、利益成長とのバランスを取った内容にしていく。2023年度にしっかりと準備を進め、2024年初めに示したい。事業を成長させ、優秀な人材を集め、企業価値を高め、社会に還元するポジティブスパイラルを生み出していく」と語った。
なお、メタバースについては、「期待先行となっているが、どこかで花が開くだろう。ソニーグループは、エンターテインメントを中心とした企業であり、3DやCGレンダリングなどの技術もある。市場の成長にあわせて、これらの技術をタイムリーに生かしたい」と述べた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」