ソニー経営方針説明会、足元のリスクマネジメントに重点--金融子会社は分離へ - (page 2)

「イメージセンサーNo.1ポジションの強化」が基本方針

 I&SS(イメージング&センシング・ソリューション)分野では、「イメージセンサーNo.1 ポジションの強化」が基本方針になるという。大黒柱と位置づけているスマホ向けCMOSイメージセンサーの大判化や高性能化に加えて、モビリティの安全に貢献する車載用センサーや、社会のスマート化に貢献する産業・社会インフラ用センサー群による事業機会の拡大にも取り組む。

スマートフォン用CMOSセンサーの大判化、高性能化
スマートフォン用CMOSセンサーの大判化、高性能化

 「スマホでは、カメラの差異化要素として、イメージセンサーへの期待が大きい。要求される技術水準も年々高まっている。画素の進化やロジックチップの貼り合わせによる高機能化、カッパーカッパー接続による高精度化や安定した品質を実現していく。業界をリードする技術力と生産能力をさらに磨き上げ、圧倒的なNo.1として、継続的に成長していく。車載や産業・社会インフラ領域に向けても、これまで培った技術を積極的に活用し、着実にシェアを拡大させていく」と語った。

 車載領域ではCMOSイメージセンサーやLiDAR向け SPAD距離センサーなどにより、モビリティの安全に貢献。産業・社会インフラ向けは多彩なセンサー群により、検査や認識領域でのユースケースを広げ、自動化や省人化などによる社会のスマート化に貢献するという。

 金融分野においては、「ブランディングの再強化」と「グループインフラ活用と成長投資」の2点が成長のポイントとした。

 「国内市場に特化したリテール金融においては、ソニーブランドが顧客に対する長期の安心、安全の約束になっており、ブランディングの訴求は継続的に強化していく必要がある」と述べた。

 今回の説明会では、ソニーフィナンシャルグループの株式上場を前提にしたパーシャルスピンオフの検討を開始することを新たに発表した。実行予定時期などの詳細は未定だが、2〜3年後のスピンオフの実行を念頭に置いて、2023年度末にかけて詳細の検討を進めるという。スピンオフの実行後も、社名を含むソニーブランドの活用と、ソニーグループ各社とのシナジー創出を継続できるように、ソニーグループが20%未満の株式を保有することになる。

 十時社長 COO兼CFOは、「金融事業の顧客基盤の拡大には、ソニーグループ各社とのデータ連携など、DXインフラを効果的に活用するとともに、ITシステム投資、M&A投資なども必要になる。また、金融事業には成長投資とともに、財務の健全性が強く求められており、多くの資本を必要とする。ソニーグループ全体のキャピタルアロケーションという観点でみると、拡大していくエンタテインメント事業、イメージセンサー事業などへの投資との両立は容易ではない。こうした課題に対処し、金融事業のさらなる成長を実現するために、新たに認められたパーシャルスピンオフを活用することにした。社名やブランド、グループ内での位置づけを変えることになく、金融事業を上場させ、独自の資金調達能力を備え、中長期での成長につなげることができると考えている」と語った。

 ソニーグループは、2022年に約4000億円を投じて、ソニーフィナンシャルホールディングスを完全子会社化した経緯がある。十時社長 COO兼CFOは、「当時は、親子上場の解消により、迅速な経営判断を可能にし、事業に則した戦略の実施とグループシナジーを追求することが目的だった。それにより、ガバナンスの強化、金融事業の業容拡大、ソニーグループ各社との連携強化などにより、経営力強化につながった。だが、今後の成長拡大を指向するには投資が必要になる一方、エンタテインメント事業も、イメージセンサー事業も、これまでとは次元が異なる投資が必要になることを考える必要がある。パーシャルスピンオフにより、これまでとは位置づけを変わることがなく金融事業を継続できる。金融事業を長期的視点で捉えて検討をしたものであり、2023年2月中旬から検討を開始した。中長期的なサステナブルな成長を実現するための準備でもある」と説明した。

 さらに、「事業ポートフォリオは動的なものであり、置かれた環境、競合の状況、消費者の傾向、マクロ経済の動向などによって影響を受ける。それに応じて選択肢を考えるべきである。ポートフォリオの最適化は常に考えているが、金融事業以外でパーシャルスピンオフを検討しているものはない。イメージセンサー事業は、投資は必要だが、まだ内部でやっていけると判断したことに加え、ソニーグループの他事業とのシナジー効果があり、センサー市場の広がりも見えている」と語った。

 なお、事業と人材の多様性の継続的な進化への取り組みについても説明。「ソニーグループが、長期視点で価値を創出するためには必要な取り組みであり、個人も企業も成長しつづけることができる姿を目指したい」と述べた。

ソニーはラテン語の音を意味するSONUSが由来

 ソニーグループの役員構成は、女性役員比率は5年前の約2倍となる12%、外国籍役員比率も2倍の24%に拡大。経営人材育成を目指すソニーユニバーシティにおいても、参加者の多様化を進めており、女性社員やエンタテインメント各社の参加比率を30%程度に引き上げているという。「多様な人材が、境界を越えて知や活動を共有し、事業の多様化を進化させ、有機的につながることで、ソニーグループのさらなる成長と長期的な企業価値向上を目指す」とした。

役員構成は、女性役員比率は5年前の約2倍となる12%、外国籍役員比率も2倍の24%に拡大
役員構成は、女性役員比率は5年前の約2倍となる12%、外国籍役員比率も2倍の24%に拡大

 一方、ソニーグループ 代表執行役会長 CEOの吉田憲一郎氏は、経営の方向性について説明。「ソニーは音を起源として事業が広がってきた。社名であり、ブランドであるソニーは、ラテン語の音を意味するSONUSが由来である。テープレコーダーやトランジスタラジオ、『ウォークマン』などの音の製品からエレクトロニクス事業を広げてきた。エンタテインメント事業も1968年のCBSソニーレコードの発足が起点であり、音が原点。それが、1989年のコロンビアピクチャーズの買収で映像に広がり、1994年のプレイステーションの発売でゲームにも広がった。エレクトロニクスのソニーと、エンタテインメントのソニー・ミュージックエンタテインメントジャパンの合弁としてスタートしたゲーム事業は、20世紀にソニーが実現した最大のシナジーだと思っている。いまでは、エンタテインメント事業の売上高、営業利益は、ともにグループ全体の50%を超えている」とした。

ソニーグループ 代表執行役会長 CEOの吉田憲一郎氏
ソニーグループ 代表執行役会長 CEOの吉田憲一郎氏
ソニーは、ラテン語の音を意味するSONUSが由来
ソニーは、ラテン語の音を意味するSONUSが由来
テープレコーダーやトランジスタラジオ、「ウォークマン」などの音の製品からエレクトロニクス事業を広げてきた
テープレコーダーやトランジスタラジオ、「ウォークマン」などの音の製品からエレクトロニクス事業を広げてきた

 長期視点の経営については、「トランジスタを開発し、エレクトロニクスの部品から始まった半導体も、21世紀に入ってからCMOSイメージセンサーを軸に進化し、長期視点で事業を広げてきた。長期視点の原点は創業者であり、金融分野の生命保険事業は、1979年に、創業者の一人である盛田昭夫が20年の長期ビジョンで始めた事業。ソニー生命は20年で累損を解消した」と語った。

金融分野の長期的成長
金融分野の長期的成長

 また、吉田会長CEOは、2012年2月に行われた社長就任会見で平井一夫氏が「感動(KANDO)」を打ち出し、これを受け継いでパーパスとして、「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」を策定したことを振り返り、「これを軸に、グループアーキテクチャーの再編とクリエイティブの強化、感動空間の拡張に取り組むことになる」と発言。それぞれの取り組みについて説明した。

 グループアーキテクチャーの再編では、2020年にエレクトロニクス事業の分社化、金融事業の完全子会社化などを推進。各事業が「感動」をキーワードに、等距離でつながることを目指したことを振り返りながら、「この再編は、エレクトロニクスとエンタテインメントの事業間連携だけでなく、エンタテインメント事業間のコンテンツ IP(知的財産)でのシナジー創出を後押しした」と、現在のビジネスの基盤になっていることを強調した。

 「クリエイティブの強化」では、音楽、映画、ゲーム、アニメなどの領域において、クリエイターに近づき、感動を創ることに注力すると同時に、「感動」を創る力にも投資。コンテンツIPには過去5年間で約1兆円を投資したという。「コンテンツを生み出すクリエイターに、世界で最も選ばれるブランドになることを目指し、コンテンツやテクノロジーなどの各領域でのクリエイションを強化している」と語った。

 また、「世界を感動で満たす」ために、パートナーとの連携を強化。PlayStationの自社制作タイトルをテレビドラマ化した「The Last of Us」の配信を行ったHBO Maxでは、同社史上において、欧州と南米で最も視聴された番組のひとつになった事例を紹介。さらに、アニメ、ゲーム、あるいはインド市場などのコミュニティが生まれる特定領域においては、DTC(Direct-to-Consumer)サービスを強化しており、アニメに特化した「Crunchyroll」では、視聴データをクリエイターに還元するための活動を行っていることも紹介した。

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