ソニーグループは、2023年度の経営方針説明を行った。説明会のなかで、ソニーグループ 代表執行役社長 COO兼CFOの十時裕樹氏は、金融事業を担当するソニーフィナンシャルグループの株式上場を前提にしたパーシャルスピンオフの検討を開始し、2〜3年後にスピンオフの実行を目指すことを明らかにしたほか、2023年度を最終年度としている第4次中期経営計画において、3年間累計の調整後EBITDAを当初目標の4兆3000億円から、5兆円に修正したことを改めて示した。十時社長COO兼CFOは、「2023年度は不安定な事業環境が想定されるが、KPIの確実な達成に向け、足元のリスクマネジメントに重点を置いた事業運営を進めていく」と述べ、各セグメントでの取り組みについて説明した。
G&NS(ゲーム&ネットワークサービス)分野では、「アクティブユーザーの増加」を中核戦略と位置づけ、PlayStation 5の普及拡大やファーストパーティゲームポートフォリオの強化に力を注ぐ考えを示した。
「PlayStation 5」は、2022 年度第4四半期の販売台数が630万台に達し、フルキャパシティで生産したことを報告。パブリッシャーやデベロッパーとの連携を通じて、コンテンツパイプラインの拡充と、革新的および魅力的なゲーム体験の強化により、PS5のインストールベースを拡大し、アクティブユーザーを増やすという。
2022年7月に買収が完了したBungieが持つ知見の共有を進め、ライブサービスゲームの開発および運営力を強化。PC上でのアクティブユーザーも増加させていく考えも示した。
音楽分野では、ストリーミングサービスおよび新興メディア市場の伸びを上回る成長を目指し、4つの戦略を推進。「ソニー・ミュージックが所有するレーベルや所属アーティストの新曲訴求によるシェア拡大」、「The Orchardを核に、ディストリビューションレーベルへのサービス拡大」、「AWALなどを通じた新興アーティストとの接点の早期確保」、「地元アーティストの発掘を含む、新興市場の開拓」に取り組む。
また、「音楽はどんなエンターテインメントメディアでも必要とされる。ソーシャルメディアやゲーム内ライブコンサートは最たる例であり、新たなメディアにおける音楽利用での収益化とアーティストへの還元を進め、ソニーの成長につなげたい」と語った。
映画分野では、「長期的なIP価値の最大化」を戦略の中心に据える。ストラテジックサプライヤーとしてのポジションをいかし、独自の配信プラットフォームを持つ強みを活用。同時に、クリエイティブ領域に投資して作品の質を向上させるという現在の方針を継続。その魅力を理解する配信プラットフォームにコンテンツを提供することで、長期的なIP価値の最大化を目指す。
また、劇場公開を重視する姿勢を堅持。「劇場公開が生み出す文化的なインパクトは、長期的な収益を向上だけでなく、クリエイターにとっても重要である。こうした姿勢が業界でも支持されている。映画部門はここ数年、記録的業績を達成している」とした。
さらに、エンタテインメント3分野を横断したIP活用の深化による価値の最大化についても説明。エンタテインメント事業間でのシナジーでは、ゲームIPの映像化として、昨年映画公開した「Uncharted」やテレビ放映された「The Last of Us」に続き、2023年度は、「グランツーリスモ」や「Twisted Metal」などの映画化やテレビシリーズ化を推進。アニメでは、「鬼滅の刃」を手掛けるアニプレックスと、アニメ専業DTCのCrunchyrollの連携により、海外市場において、日本のアニメ価値の最大化や、アニメファンの拡大を推進する。「これらの事例は、ソニーならではの事業間連携を通じたシナジーであり、今後も積極的に取り組む」とした。
また、ロケーションベースエンタテインメントとして、タイにおいては、テーマ&ウォーターパークである「Columbia Pictures Aquaverse」を開始。スペインでは、アミューズメントパーク内に、Unchartedの世界観を投影し、暗闇を駆け抜けるライドアトラクションを開始。日本では、東急歌舞伎町タワー内の屋内体験型アトラクション「THE TOKYO MATRIX」において、「ソードアート・オンライン−アノマリー・クエスト−」を開始。十時社長 COO兼CFOは、「先日体験してきた。面白いのだが、攻略の難易度が高い。挑戦を待っている」と呼びかけた。
ET&S(エンタテインメント・テクノロジー&サービス)分野では、「法人から個人までの幅広いクリエーター向けにテクノロジーを駆使したソリューションとサービス群を着実に拡大することであり、クリエーターに近づくことに力を注ぐ」とした。
フォトグラファーや放送事業者に対して、「α」シリーズを通じて獲得したテクノロジーに対する信頼を起点とした提案を加速。クラウド上での効率的な映像制作や低遅延高画質伝送、ライブAR映像制作支援などのサービス領域での事業拡大を進めるという。さらに、個人クリエイター向けに最適化したクリエイターズクラウドなどを通じて、クリエイターエコノミーのトレンドのなかで、裾野拡大に貢献していくという。
また、映像制作者向けには、「VENICE」シリーズなどの映像制作用カメラと、バーチャルプロダクションといった新たなクリエイションテクノロジーを、ハードとサービスの両面から進化させ、時間と空間の制約からクリエイターを解放するという。「ソニーPCLでは、すでに50以上の作品をバーチャルプロダクションで制作している」という。Epic Gamesとの連携も強化し、3月に公開したUnreal Engine 5.2では、よりリアルな表現が可能であり、さらなる活用方法の探索にも取り組むという。
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