●玄成秀氏(Agnavi)「全国の蔵元から厳選した日本酒缶ブランド」
特別賞に輝いたAgnaviの玄成秀氏は、45年間でピーク時の77%も消費量が激減した日本酒の危機的状況という課題に対し、日本全国約70の蔵元と連携して、すでに販売をスタートしている「全国の蔵元から厳選した日本酒缶ブランド」を提案した。
Agnaviは全国約70の蔵元と連携し、アルミ缶に厳選した日本酒を詰めた1合(約180mL)の日本酒ブランド「ICHI-GO-CAN(1合缶)」を展開している。
日本酒の消費量はピーク時の4分の1ほどに減少しており、それに合わせて酒米の消費量も低下している。さらにコロナ禍でその減少具合は大きく加速しているという。
「そこでわれわれは全国56蔵を支援する『日本酒プロジェクト2020』を開始したが、皆さんどの日本酒を選べばいいか分からない。また容量が多くて知らない銘柄を手に取りにくい。そこで『適量』『おしゃれ』『持ち運びが便利』『環境にも優しい』という全国から厳選した『ICHI-GO-CAN』ブランドの事業をスタートした。国内のみならずグローバルにも今後日本酒の新たな市場を構築するために動いている」(玄氏)
昔はビンビールしかなかったが、今はほとんど缶ビールになっているように、「缶は品質面、物流面、消費面において最適な容器だ」と玄氏は語る。
「UVを100%カットできることで品質面を担保できる。1号ビンが約400gなのに対し、1合缶は約200gぐらいになるので、海外への配送代金も半分ぐらいカットできる。リサイクル率も98%になるので、ビンと比較してCO2の排出量を約70%カットできる」(玄氏)
「われわれは蔵元から日本酒の充填委託を受ける一方で、日本酒の一部を買い取ってブランディングして販売している。多くの蔵元は生産においてはプロフェッショナルな一方、ブランディングや加工・販売においてはなかなか手が付けられないところも多いため、そこをアウトソーシングすることでWIN-WINの環境を構築している」(玄氏)
少量多品種のハイエンドなICHI-GO-CANブランドに加えて、海外向けや量販店向けには数種類で大量生産を行える「Canpai」ブランドもそろえており、「ブランドを構築しながら商品をしっかりと伸ばしていきたい」と玄氏は語る。
現在は既に香港、シンガポール、米国、ブラジルなどに輸出しており、「香港は毎月安定的にパレットが行っており、物流のメリットも大きく取れている。今年は米国や欧州の方も拡大していく」(玄氏)という。
世界のアルコール飲料市場は約150兆円で、そのうちの半分が缶を利用している。
「ビールは1兆円だった市場に缶が投下されたことにて3.5兆円になった。われわれも同じように日本酒の市場を倍にしていきたい。今後ICHIGO-CANが1億本を達成すると、酒米の消費量が5%上がる。我々は去年15万本達成しており、今年は100万本まで行きたい。国内で生産基盤販売基盤を作るとともに、海外にも展開し、日本酒を通じて地域に来てもらうような仕掛け作りをしていきたい。『知ってもらう』『買ってもらう』『地域に来てもらう』『リピーターを増やす』ということを目指している」(玄氏)
「全国の蔵元から厳選した日本酒缶ブランド」もシグマクシスの田中氏が講評した。
「数年前から私も日本のお酒が持っている可能性を感じていた。ワインにはソムリエがいるが、どうやったら日本酒の価値を知ってもらうことできるのか。日本酒の文化を世界に知ってもらい、さらに若い層にも知ってもらうことで、より知識や知見、日本の歴史に思いをはせてもらえる。生活者として新しい日本酒を飲むという行動、ライフスタイルを実現し、生産者とも一体になっていける可能性を感じた」(田中氏)
最後に審査員長を務めたユーグレナ 代表取締役社長の出雲充氏が全体を講評した。
「第1回のコンテストで受賞するのは皆さんが思っているよりも周りのステークホルダーにいいインパクトがある。この思いを糧に、ますます大成功、大活躍していただきたい。米国で10兆円産業に成長したAirBnBの創業者が多くのベンチャーキャピタルに断られたように、ベンチャーの目利は難しい。だから受賞しなかった皆さんも何の不名誉でもない。その次、明日、もう一度そのチャレンジをするかどうかにかかっている。フードテックやアグリテックの分野は日本で一番スタートアップやベンチャーに親和性の高い分野だと信じている。今はITやソフトウェアの産業が大きいが、フードテックが5年で必ずメインストリームの一つになると信じている。受賞した企業も、受賞できなかった企業も、繰り返し努力することによって大成功を収められることを心から祈念したい」(出雲氏)
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