フードテック官民協議会、初のビジネスコンテスト--5つの社会的課題解決のアイデアとは - (page 3)

■高齢化社会における健康課題を「グミ」で解決

 ●安孫子眞鈴氏(山形大学大学院)「米Time for Your Health」

 学生賞に輝いた山形大学大学院在学中の安孫子眞鈴氏は、年々要介護認定者が増え続ける状況に対し、「オーラルフレイル(口腔機能の低下)」を解決するためのソリューションとしてお米を主原料にしたグミ「米Time(マイタイム)」を発表した。

山形大学大学院在学中の安孫子眞鈴氏
山形大学大学院在学中の安孫子眞鈴氏

 高齢者が要介護状態に陥らないためにはオーラルフレイルの症状に早期に気付いて口腔機能を改善する必要があるが、その改善にはそしゃくが効果的だという。

要介護状態に至らないために重要な「オーラルフレイル(口腔機能の低下)」の予防
要介護状態に至らないために重要な「オーラルフレイル(口腔機能の低下)」の予防

 そしゃくによって唾液を分泌することで口腔内の清潔を保つことができ、虫歯リスクを抑えられるだけでなく、認知症や肥満の予防もできる。そこで我孫子氏が着目したのがグミだ。

グミをかむことでそしゃく機能を向上できると安孫子氏は語る
グミをかむことでそしゃく機能を向上できると安孫子氏は語る

 グミは食べる人の年齢や健康状態に合わせて食感を自由に変えられるため、それぞれに合った食感でそしゃく力を鍛えられる。

 「私たちが開発するグミはお米の持つ粘りを生かすことでモチモチかつ歯切れの良い食感に仕上げられる。さらに野菜の粉末を添加することで、高齢者が不足しているビタミンや食物繊維を摂取することも可能になる。私たちが開発した米Timeを高齢者の方に食べていただくことで口腔機能を向上して、健康寿命を延ばしていきたい」(安孫子氏)

「米Time」ではお米の粘りをグミの食感に生かした
「米Time」ではお米の粘りをグミの食感に生かした

 既存のグミは食材をゼラチンで固めており、ゼラチンやペクチン、水あめなどの材料比によって弾力を調整している。一方米Timeは米の力で固めており、蜂蜜やジャムなどの濃厚溶液に漬け込むことで、浸透圧による弾力調整ができる。「米Timeはとても高弾力のため、満腹感が得られることも特徴の一つだ」と安孫子氏は語る。

浸透圧によって食感を調整できるという
浸透圧によって食感を調整できるという

 既に実証実験を進めており、通販サイトでの購入者からの感想をフィードバックして研究開発を進めている。

 「現在3種類の硬さの異なるグミを開発しており、同時並行で製造委託先、販売会社の検討を行っている。2024年にはテストマーケティングを実施する予定で、既に介護施設1件、運動施設1件を確保している。こちらでそしゃく力に合わせて弾力や形状を改良し、2025年にはカフェや道の駅など店頭での販売をスタートさせる予定だ。また、私の持つ米粉やでんぷんの知識を生かし、米粉やでん粉を利用した食品の開発アドバイス、レシピ開発も行っていく」(安孫子氏)

事業展開のスケジュール
事業展開のスケジュール

 米Timeはグルテンフリーのため、小麦アレルギー患者の対応食になるだけでなく、「既存のグミでは使われている動物性のゼラチンを不使用とすることで、ビーガンの方にも対応した米タイムも開発する」と安孫子氏は語る。

 「未利用資源を活用した新規食品への応用も見据えている。野菜の葉や根の部分を粉末化してグミの一部とすることで、未利用資源の活用に貢献する。これによりそしゃく力向上だけでなく、栄養摂取の手段としても活用していただくことが可能になる」(安孫子氏)

今後の展開
今後の展開

 審査員を務めたセブン&アイ・ホールディングス執行役員 経営推進本部 サステナビリティ推進部 シニアオフィサーの釣流まゆみ氏は次のように講評した。

 「高齢化社会の中で健康は本当に貴重なものであり、それに対してしっかり向き合っていることが心を打った。これはまだまだ一つのアイデアだが、多分これからもビジネスとしての広がりがあると思う」(釣流氏)

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