Twitterの買収から2週間後、Elon Musk氏が新たに導入した灰色のチェックマークと「公式」ラベルが、一部の著名なアカウントのスクリーン名の下にようやく表示された。こうして、アカウント認証の輝かしい新時代が始まった。ソーシャルメディア上のすべてのユーザーが平等になり、あらゆる場所に存在したなりすましがついに撲滅された。
もちろん、これは冗談だ。
どのみち、衝動的な性格の億万長者のMusk氏が関与しているのだから、そんなに簡単に事が運ぶはずはない。灰色のチェックマークは、認証バッジ(ユーザーがなりすましでないことを証明する公式のマーク)をすべての人が利用できるようにするというMusk氏の壮大な計画の一部となるはずだった。しかし、灰色のチェックマークは数時間しか提供されず、登場した時と同じく、突然姿を消した。
Musk氏は米国時間11月9日、Twitterでの1時間にわたるライブ音声チャットで、公式ラベルについて「見た目が悪夢」と評している。その2日後、Twitterのページといくつかの大手ブランドやパブリッシャーのページに、再びラベルが表示された。
灰色のチェックマークが登場したのと同時に、Musk氏の別の計画も実行に移された。月額8ドルを支払えば、自分がなりすましでないことを示す青色のチェックマークを取得できるサービスだ。当然のことながら、詐欺師たちは偽の「認証済み」アカウントを作成できるチャンスにすぐ飛びついた。製薬会社のEli Lillyなどになりすました多くのアカウントが偽の投稿で大混乱を引き起こしたことを受けて、Twitterは11日、このサービスの提供を一時停止した。
その1週間は最後まで波乱続きだった。Twitterを440億ドルで買収したMusk氏は、従業員(同氏が前週に従業員の半分を解雇して3700人が同社を去った)に対し、倒産の可能性があると語ったことが報じられた。同氏は、混乱状態に動揺する広告主を呼び戻そうとしているにもかかわらず、そのようなメッセージを発した。
つまり、Musk氏とTwitterは出だしでつまずいてしまった。
とはいえ、混乱と苦痛を伴う紛糾状態は、壮大な見世物だ。Twitterに愛着のない人はそれを非常に面白いと感じるだろうし、愛着の強い人は気が滅入るだろう。
私たちは今、世界で最も影響力のあるソーシャルメディアプラットフォームの1つが急速に内部崩壊していく様子を目撃しているのかもしれない。このプラットフォームは、(良い意味で)革命のきっかけを作り、(悪い意味で)大統領選挙の運命を変えた。「Friendster」や「Google+」といった過去のプラットフォームはひっそりと姿を消していったが、TwitterはMusk氏特有のやり口で、SpaceXの「Falcon Heavy」ロケットの打ち上げのように、派手に退場するのかもしれない。
調査会社Creative StrategiesのアナリストであるCarolina Milanesi氏は、「Musk氏が一歩下がって、大人に舵取りを任せない限り、Twitterがこの難局を切り抜けるのは難しいだろう」と述べている。「Musk氏が変化の必要性を感じていることは理解できるが、外から乗り込んできて、すべてを投げ捨てるやり方が成功につながることはめったにない」
半数の従業員解雇から、灰色のチェックマークの出だしでのつまずきまで、Twitterの性急な動きが生み出す予測不可能性は、ビジネスにとって恐ろしいことだが、崩壊していく様子をリアルタイムで見るのが大好きな人にはたまらないことだ。この「次は一体何が起きるのか」という期待感は、リアリティー番組のプロデューサーを嫉妬させるだろう。
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