この数週間に、Appleは最新の「iPhone」と「Apple Watch」を発表した。どの機種も人々の安心感を高める一連の機能を備えている。2022年のモデルは、海でのダイビングや人里離れた場所でのハイキング、あるいは人混みでの友達探しや、自動車での下校といった、もっと日常的なことをしているユーザーを追跡できるように設計されている。そうした機能には、自動車衝突事故検出機能や、携帯電話サービスが利用できない場合でも衛星を使用して助けを呼べる機能などが含まれる。
Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏は、9月に新型デバイスを発表したとき、「これらの製品は私たちの生活に不可欠なものになっている」と述べた。その点を強調するかのように、同社幹部陣も最新機種を披露しながら、「不可欠な」という言葉を何度も繰り返した。「これらのデバイスは、常にユーザーと共にあり、必要とされる場所とタイミングで便利な機能を提供する。しかも、デバイス同士がユーザーの介在なしでシームレスに連携するように設計されている」
こうした機能は極端なものに思えるかもしれない(ほとんどのユーザーは、荒涼とした砂漠を探検することなどないだろう)。しかし、それらの機能は、Appleが築き上げたいと考えている信頼感を高めてくれる。何度も繰り返されるプライバシー侵害や政治的な論争、テクノロジー企業幹部による見え透いた嘘が原因で、テクノロジー業界に対する人々の信頼が揺らいでいる時代において、Appleが人々にもっと信頼してもらいたいと考えていること自体が、ばかげているように思えるかもしれない。それに、人命救助に関するAppleのマーケティングも、過剰な印象を与えるかもしれない。
しかし、Appleは、広告主や法執行機関、そのほかのテクノロジー企業をいら立たせるほど効果的なプライバシー機能の強化と共に、健康と安全の機能を今後の方向性としている。
米国の調査サービス企業Creative StrategiesのアナリストであるTim Bajarin氏は、「Appleは個人の安全という概念を発展させ、全く新しいレベルに引き上げている」と述べた。さらに、Appleの競合他社もおそらくAppleの安全機能を模倣すると思われるが、セキュリティやプライバシー、そして今回の個人の安全に対するAppleの非常に大規模なアプローチは、同社の差別化要因になるだろう、とも付け加えた。「『われわれがあなたを見守るので、安心してほしい』というのが彼らの基本的なメッセージだ」(同氏)
Appleは今も新しい安全機能を追加し続けているが、これらのアイデアに重点を置くようになったのは、何年も前のことである。
Appleは2017年、異常な心拍を検知するオプション機能をApple Watchに追加した。それ以来、心臓発作や脳卒中のリスクが顕在化する前に、この機能が健康上の問題を警告してくれた、と多くの顧客が報告している。2018年には、転倒検出機能をApple Watchに追加した。転倒を検出した後、ユーザーからの応答がなければ、緊急連絡先や緊急通報サービスに電話をかけてくれる機能だ。この機能も、実際に何人もの命を救っている。
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