本誌CNET Japanが主催するオンラインセミナー「不動産テックオンラインカンファレンス2022」が、8月30日から9月9日までの2週に渡って開催された。「スマートな住まいや街がもたらす暮らしのイノベーション」と題された今回のイベントは、AI/VR、地域創生、持続可能な社会といった昨今のトレンドを幅広くカバーした8つのセッションで構成している。ここでは、そのなかで最終日の9月9日に行われた「ナスコンバレー」についてのセッション内容をレポートする。
栃木県の新幹線駅、那須塩原駅からクルマで30分、風光明媚な那須高原に、およそ800万平方メートル、実に東京ドーム170個分もの面積をもつ「ナスコンバレー」が広がっている。大企業からベンチャー、地元企業、自治体に研究・教育機関まで、さまざまな組織が同地を舞台に次世代の技術・サービス開発に向けた実証実験などに取り組んでいる。
その主幹団体となるのが、ナスコンバレー協議会。代表理事を務めるのは、日本最大級の不動産ポータル「LIFULL HOME'S」などを運営するLIFULLの代表取締役社長でもある井上高志氏だ。2021年10月に同協議会を設立し、那須町、那須塩原市など周辺自治体と連携するなどして、那須町にある一帯を実証実験および社会実装のフィールドに仕立て上げた。
これは、LIFULLや井上氏自身の目指すところでもある「幸福と安心で満たされる社会の実現」に向けた取り組みの一環でもあるという。AIやロボット、デジタルの活用によって生活に必要なコストをゼロに近づけ、低コストで持続的な暮らしができる「限界費用ゼロ社会」を実現し、SDGsはもちろん、さらにその先のウエルビーイングを多くの人が享受できるように、というのが同氏の思いだ。
スタートからわずか1年弱で協議会への参画企業・組織は40にまで拡大した。広告代理店の博報堂や不動産大手のPrimeLifeTechnologiesといった大企業も名を連ね、次世代モビリティ、次世代エネルギー、次世代ハウジング、ドローン、遠隔医療、フードテックなどのテーマで各企業が実証実験などを同地で進める。
たとえば次世代ハウジングの領域では、LIFULLと名古屋工業大学が共同で開発した「インスタントハウス」を活用し、ライフラインがない場所でも快適な生活・研究開発環境を構築する「オフグリッド・リビングラボ」のプロジェクトが展開している。インスタントハウスは、空気で膨らませて断熱材を加えることで、夏でも冬でも快適に過ごせるうえに耐震性能も高いのが特徴。蓄電池、太陽光発電システム、小型淡水化装置や水循環システムも組み合わせることで、電気や水を自給できるようにもなっている。
また、3Dプリンターを使うことで24時間以内で完成する家、荷物配送用のドローンや人を運ぶドローンタクシーの開発プロジェクトなどもある。ウエルビーイング領域では「Well-Being測定」として、心や体の健康、人とのつながりなどを数値化して分析できるような仕組みをスマートフォンアプリとして用意し、参画企業の人たちに利用してもらいながら実証実験を行っているところだという。
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