井上氏がナスコンバレーの最大のアドバンテージとして挙げるのは、一帯の土地が協議会の発起人の1社である日本駐車場開発がもつ「私有地」であること。それこそが40もの多様な企業・組織が短期間で集まった要因の1つとなっている。
海外では企業が島を買い取るなどして、そこで次世代の暮らしに向けた実験場を作る動きがあるなか、「日本にはそのための技術はあるのに出遅れている」ことに危機感を抱いていた井上氏。日本国内の一般の居住地域では法規制の壁もあって実証実験の場にしにくく、行政に届出をしても許可が得られるまで時間がかかるのも「出遅れ」の理由だ。未来型都市開発に向けた施策としては、政府が掲げる「スーパーシティ構想」もあり、特区として指定されることで同様に実証実験の場などとして活用できるようになるが、そのためには地域に住む住民との「合意形成」が必須で、ハードルは決して低くない。
しかし私有地であればそうした課題はクリアしやすい。ドローンの飛行や道路上での自動運転走行など、通常なら煩雑で時間のかかる事前手続きが必要な検証にもスピーディに取り組める。別荘地ということもあって定住者が多くはないため、住民の理解を得やすい側面もあるという。
すでに多数のプロジェクトが同地で展開されているが、今後は那須塩原駅からクルマで30分かかる現地までの移動にドローンタクシーを活用することも考えていきたい、と井上氏。築年数の大きい別荘を改築するにあたって「DXの力で安く、早くリノベーションし、快適に使えるようにする」ような取り組みも、次世代ハウジング領域の1つとして推し進めているところだ。
協議会への参画は、大企業は一定の会費がかかるが、条件を満たすスタートアップ・ベンチャーや中小企業、研究・教育機関、個人などであれば会費無料で会員になることが可能。また、日曜日から木曜日まで、現地コテージで宿泊できる「ワーケーションプログラム」も破格値で提供しており、自然にあふれる環境で仕事したり、新しい暮らし方を体験したりできることもアピールする。
事業者による現地での取り組みの内容には特に制約はないが、相談があったときは協議会が他の参画企業とマッチングし、共創をアドバイスすることもあるのだそう。これから新たなサービス等の開発をしていくにあたり、宿泊場所や広い土地、適切な協業相手が必要と感じている事業者にとって、魅力の多い場所であることは間違いない。10月12、13日の両日には、実証実験中のプロジェクトや技術などを実際に目にしたり体験したりできる「ナスコンバレーサミット 2022」が開催される。まずは現地を訪れてから参画を検討してみるのも良さそうだ。
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