Googleの共同創設者Larry Page氏が出資した新興企業Kittyhawkは、1月下旬にカリフォルニア州サンノゼで開催された垂直離着陸機(VTOL)技術に関するカンファレンスTransformative Vertical Flight 2022で、電動垂直離着陸機(eVTOL)「Heaviside 2」の最新のプロトタイプを披露した。同社は、Heaviside 2が自動飛行タクシーの主力になり、いずれは大勢が手頃な料金で利用できるようになると考えている。
Heaviside 2は1人乗りのeVTOLで、60~100マイル(約100~160km)の距離を1時間もかけずに乗客を運べるよう設計されている。計8基のプロペラを、機首の両脇に突き出た小さな翼に1基ずつ、機体中央の大きな前進翼(前方に角度をつけた翼)に6基を配置した珍しい設計だ。各プロペラは、離着陸時には下向き、飛行時には後ろ向きに切り替えることができる。
Kittyhawkの飛行業務担当ディレクターであるChuck Taylor氏は、「既存のUberの乗車料金に近いマイル単価」で利用できる航空機を開発することが目標だと述べた。
Heaviside 2は、カンファレンスで展示された他の航空機と同様に、最新のVTOL技術を組み込んでおり、従来の固定翼機で必要な長い滑走路がなくても離着陸できる。主な改良点として、よりクリーンで静かな電気設計や、パイロットを減らすだけでなく完全に不要とすることも可能な自律航法技術を採用している。
こうした新設計のVTOLは、開発を手がける新興および既存大手の航空機メーカーが規制当局から認可を取得できれば、航空機の設計と利用における新たな活況に寄与する可能性がある。メーカー各社は一方で、一般市民を説得することも必要になるだろう。市民らは、無人操縦の航空機に乗ることに懐疑的になったり、騒音を懸念したり、高層ビルの屋上やショッピングモールが小規模の空港になることを不安視したりするかもしれない。
それでも、KittyhawkのTaylor氏は、20世紀に登場して交通手段を根本的に変えた自動車と航空機を受け入れたように、いずれ人々はVTOLも受け入れるだろうと楽観している。
VTOLの概念自体は、数世紀前から存在していた。15世紀に科学技術と芸術の両分野で天才ぶりを発揮したイタリアのレオナルド・ダ・ヴィンチは、「空気スクリュー(aerial screw)」を搭載した1人乗りヘリコプターのデザインをスケッチした。今回のカンファレンスにおける驚くべきデモンストレーションの1つは、レオナルド・ダ・ヴィンチのデザインに基づくクアッドコプタードローンだった。
VTOLは、ヘリコプターが設計され飛行したことで初めて実現した。その後、Boeingの「V-22 Osprey」ティルトローター機、Hawker Siddeleyの「Jump Jet」、Lockheed Martinの最近の「F-35B Lightning II」戦闘機といった少数の航空機に、垂直離着陸の技術が搭載されてきた。ただし、操縦の難しさと複雑な設計により、本格的な普及には至っていない。
しかし、現代のドローンは、VTOLのアイデアに新たな命を吹き込むのに役立ってきた。ドローンは、趣味のほか、運送や撮影などの業務でも利用されるようになり、空域規制当局は管制を見直すよう迫られている。Kittyhawkをはじめ、Archer AviationやNFTといった多くの新興企業の幹部は、今こそ新たなアイデアが必要だと考えている。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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