1480年代後半、レオナルド・ダ・ヴィンチは「空気スクリュー(aerial screw)」で飛ぶ1人乗りヘリコプターの素晴らしいデザインをスケッチとして残した。目にしたことがある人はこんなヘリコプターが本当に飛ぶのかと疑問に思ったかもしれない。
そして現在、われわれはその答えを知ることになる。天才イタリア人は正しかった。
メリーランド大学のエンジニアリングチームは2019年から、デザインコンテストの一環として、このヘリコプターの基盤となる技術を設計しテストした。そして1年半をかけて、チームメンバーのAustin Prete氏はダ・ヴィンチが描いたスクリューのようなデザインを用いて無人クアッドコプタードローン「Crimson Spin」を組み立て、短時間の飛行を何度か繰り返した。
Prete氏は「うまくいったことに本当に驚いた」と述べている。同氏は、メリーランド大学航空宇宙エンジニアリング学部の大学院生で、修士号取得のためにこのドローンを組み立てた。Prete氏も他のメンバーも最初は懐疑的だったが、いくつかのコンピューターシミュレーションや3Dプリントで作ったスクリューのプロトタイプが有望であることが分かってからは気持ちが高まった。
1月下旬にカリフォルニア州サンノゼで開催された垂直離着陸機の技術に関するカンファレンスTransformative Vertical Flight 2022で、Prete氏はこのドローンが飛行する様子を動画で初めて紹介した。
このプロジェクトは、最新のテクノロジーが従来の飛行機やヘリコプターからどれほど離れつつあるのかを示す良い例だ。とはいえ、15世紀に構想された空飛ぶコルク抜きのような航空機が、近いうちにAmazonの荷物を届けることはないだろう。今回のカンファレンスでは、ヘリコプターのように垂直に離陸し、飛行機のように水平飛行ができる風変わりな航空機の数々が披露された。Kittyhawk、Airbus、Transcend Air、Jauntなどの企業は、航空輸送に革命を起こし、空飛ぶタクシーで人々を運びたいと考えている。
Prete氏が製作したのは小さなドローンにすぎないが、このテクノロジーは人を運べるほど大きな航空機にも応用できる可能性がある。「これをうまくスケールアップできるはずだと確信している」と、同氏は語った。
Prete氏は、ダ・ヴィンチが手に入れられなかった材料の恩恵を受けている。
木材や皮など、ルネサンス時代に最先端だった建築材料は、航空機に利用するには比重が大きすぎる。また、ダ・ヴィンチの時代にはコンパクトなエネルギー源もなかった。
これに対し、Prete氏はアルミニウム、プラスチック、電動機、バッテリー、コンピューター制御システムを使って空気スクリューを設計できた。また、CADや計算流体力学ソフトウェアも、Prete氏が試作品を設計したりコンピューターで空気力学のシミュレーションをしたりするのに役立った。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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