フェイスブック ジャパン味澤代表に聞く「メタバース」や「インスタの若年層保護」

藤代格 (編集部)2022年01月27日 13時01分

 2021年10月、米Facebookは社名をMetaへと変更した。仮想空間という意味を持つ「メタバース」を視野に入れた動きだが、日本では具体的にどのような影響があるのだろうか。

 Metaの日本法人となるフェイスブック ジャパンで代表取締役を務める味澤将宏氏に、経緯や今後の展望などを聞いた。

フェイスブック ジャパンで代表取締役を務める味澤氏
フェイスブック ジャパンで代表取締役を務める味澤氏

——2021年10月、米Facebookが社名をMetaに変更しました。改めて理由や経緯、またMetaとしてのビジョンをお聞かせください。

 社名は変わりましたが、「コミュニティ作りを支援して、人と人とがより身近になる世界を実現する」という根本的なミッションは変わりません。(Metaになることで)新しいインターネットの体験として、新しい人のつながり、新しいソーシャルエクスペリエンスを構築していく、というビジョンです。

 インターネットの世界をデバイスという側面から見ると、この10年でデスクトップPCからモバイルへと変わりました。コミュニケーション自体も、テキストから始まって、写真、動画、ライブと多様に変化してきました。

 モバイルの次のインターネットのプラットフォームがメタバースになることで、さまざまな面が変わってきますが、一番大きな違いは没入感です。同じ“空間”を共有する、単純な2次元の世界ではなく、起こったことを楽しんだり、仕事をしたりすることが、物理的な距離が離れていても同じ空間で一緒にできる。その点が大きく異なり、小さなスクリーンだったモバイルとは全く違うものと言えるでしょう。

 また、強くメタバースを打ち出しているように見えるかもしれませんが、何かが急に始まったわけではありません。これまでずっと、AR/VRという分野に投資をしながら、テクノロジーを構築してきました。「Facebook」や「Instagram」といった、今ある、いわゆるソーシャルなプラットフォームがなくなるということではなく、その上にメタバースの体験を構築していく、というものが大きな方向性です。

 私たちのサービスは、Facebookという1つのアプリケーションから始まっていますが、この10年でInstagramやVR、また「WhatsApp」「Messenger」といったメッセージアプリなど、ポートフォリオを大きく広げました。Facebookという社名と実態が合わなくなってきている中で、今後10年をかけて進むメタバースという大きなビジョンに向けてのコーポレートブランドの変更は、非常に自然なことだと捉えています。

——現在取り組んでいることや、社名を変更したことによる変化などがあればお聞かせください。

 (Metaの)メタバースは、現在「Horizon」という形で矢継ぎ早に色々と発表しており、日本ではワークルーム、バーチャルのミーティングルームなどでよく使われています。また、ライブイベント用アプリ「Venue」を活用した取り組みも活発化しています。みんなが同じ空間に座ってチャットができるイメージで、非常に広くの人が使えます。多くの人が参加する、まさしくライブのような大掛かりなイベントをVRで体験できる機会もより広まっていくでしょう。

 加えて、その場所に行く必要がありません。例えば、外科医の研修やセールスのトレーニングなどのバーチャル実施など、エンターテインメント以外のビジネス面でも広がるでしょうし、広げる必要があると思っています。

 ただし、それらは私たちだけで作るものでもありません。また、急に0から100になるようなこともなく、5~10年かけて作っていくものと捉えています。クリエイターやデベロッパー、研究者、政府など、さまざまな業界の方と、共に作っていく必要があります。

 私たちのビジョンを明確化させたことで、開発の方向性や道筋がはっきり伝わったと感じています。ありがたいことに多くの方々からお声がけをいただき、ビジョンやできることについて情報交換する機会が増えました。共につくっていくというビジョンにあわせた動きになっていると実感しています。

——どういった方との情報交換が増えましたか?

 特に日本では、開発者の方々と話す機会が増えました。

 日本は、市場としての大きな存在感があります。しかし、ゲーミングやエンターテインメント分野をはじめとして、既に多くの産業が存在している市場でもあります。VRの普及率も高く、多くの開発者の方々がいらっしゃいます。同時に、キャラクターなどのIP(知的財産)分野も強く、VRやメタバースとして外向けに展開できるものが数多く存在しています。

 そのほか、多種多様な企業がさまざま分野で可能性を感じていただいていると実感しますが、中でも顕著な例としては、角川ドワンゴ学園のN高等学校(N高)、S高等学校(S高)との取り組みが挙げられるでしょう。多くの「Oculus Quest 2」を導入いただいているほか、彼ら自身でも学習システムを開発いただいており、いわゆる“エドテック”を一歩進んで取り組まれていると言えます。

 フルリモートの学校でありながら、同じ空間を共有する、移動するという、教育に必要な体験を提供しており、例えば歴史の遺跡を見る、離れていながらアバターで英語の授業を受ける、といった体験型の学びを実施しています。こういった部分は、日本が非常に進んでいる分野と言って差し支えないでしょう。

——Questの話がでましたが、ここでサービスごとのお話も伺えればと思います。QuestのほかにもFacebook、Instagramなどを展開していますが、それぞれの今後の方向性を教えてください。

 共通した大きなビジョンとして、どのアプリ、サービスも、同じ方向で開発を進めています。それぞれのサービスに共通して言えることは、急激に伸びているものは動画で、その中でもライブの伸びが顕著ということです。コロナ禍や、世の中の流れとしてコミュニケーションが映像にシフトしたことなどが背景にあるのでしょう。

 アプリごとで見ると、特に日本では、Instagramのユーザーの伸び率が高く、最も高いエンゲージメントで使っていただいています。日本に開発チームもあり、進んだ使い方をフィードバックしてグローバルでの製品開発に生かしています。動画の中ではショート動画「リール」の伸び率が最も高いですね。直近2年で急激に変わった部分です。

 2021年にローンチした代表的な例としては、地図機能が挙げられます。日本のユーザーはInstagramの中での検索数が多く、3倍以上の差がある国もあります。そういった日本のユーザーのインサイトから、近隣の人気スポットを地図で表示する機能を開発し、他の国でも展開しています。

 一方、好きなものや興味をベースとしたつながりであるInstagramに対して、コミュニティをサポートするという部分で優れていると感じるのがFacebookです。私が就任してから2年がたちますが、ソーシャルネットワークサービスの代表格のプラットフォームとされるだけのことはある、と再認識しました。

 コロナ禍で人のつながりが見直される中、Facebookはライブ、チャットといった機能を実装するなどで進化してきました。一部ではFacebookは廃れているという声もありますが、実は日本におけるエンゲージメントは伸びており、滞在時間は増えています。

 ミッションの話に戻ってしまいますが、コミュニティを支援する、とひとえにいっても、クリエイターや自治体、はたまた場所や興味など、さまざまな種類があります。Facebookでは活発化する人のつながりをサポートするような機能、取り組みなどを展開していけたらと思っています。

 また、Instagram、Facebookともに、コマースの体験を重視しています。例えば、InstagramやFacebookと統合した経験を提供する「Shops」が挙げられるでしょう。各アプリ自体は独立していますが、相互で乗り入れできるためユーザビリティが向上しており、ビジネスでも活用しやすくなっています。

 特に、Instagramの利用率が大きい日本では、ブランドの方々からのコマースに関する大きな期待を感じます。実際に多くのビジネスで使われていますが、日本のユーザーはコマースのエンゲージメントが非常に高く、商品タグをタップして先に進んでいく割合が高い傾向があります。米国に比べて5倍、グローバル平均で見ても最も高い国の1つといえます。

 Instagramで好きなものを探して、ブランドやプロダクトの周りにコミュニティができて、その中で購買体験をするーーといった一連の体験が非常に進んでおり、日本と相性がよく、高い可能性を感じています。

 コマース向けの機能は、私たちが近年注力してきたSMB、中小のビジネスで、かなり浸透してきました。特にこの1~2年ではユーザーのデジタルシフトも進み、購入体験のメインストリームとなりつつあります。まだまだ物理的な距離が必要な、ニューノーマルという私たちの生活に合わせ、デジタルコマースの機能をプラットフォームを問わずに提供していきます。無料で使えるものも多く、私たちが貢献できる部分と言えるでしょう。注力していく分野の1つです。

 また、クリエイター向けという部分も大きな軸の1つです。個人的にもこの業界は長いのですが、ソーシャルメディアが達成したことの大きな意義として、「情報の民主化」が挙げられると思っています。

 しかし今では、従来自分のクリエイティビティを世の中に出すために必要だった、流通やメディアという既存の垣根が急速になくなりました。表現方法もテキストに加えて画像や動画が登場し、動画にもライブ、ショートなどの種類が出てきました。アプリで加工もできるため、「クリエイターの民主化」が起きていると言って差し支えないでしょう。特にInstagramは、さまざまなクリエイターが参加しやすいように多様な表現方法を提供しています。もともとビジュアルコミュニケーションのプラットフォームとしてはじまったサービスなので、相性がいい部分でもありますね。

 これらのクリエイターコマースという部分も、プラットフォームを問わずに私たちが貢献できるところで、従来同様注力していく分野です。

 さらに、データもコマースも、メタバースの世界では非常に大きい要素になります。現在2D、いわゆるアプリの世界で構築しているものは、そのままシームレスにメタバースの構築につながります。

 例えば、 FacebookやInstagramでは、ARカメラエフェクトを作成、Instagramストーリーズで公開できる「SparkAR」など、以前からARの機能を提供しています。さまざまな開発者の方にも使っていただいていますが、ARと認識していない方も多いかもしれません。

 今の既存のアプリにおいても、こういったAR技術のテストを進めています。Instagramでは、数カ国でARを使ったコマースの体験をテストしています。物理的に離れている状態で実際の部屋に家具を置かずにシミュレーションで設置したり、化粧品を試したりといった具合です。今まで使っていた身近なアプリの中でも、そういった体験を提供していきます。そのほか、先日発表したスマートグラスのように、これらとは異なるプロダクトの展開も進めています。

 反面、Questに関しては、本格的な展開は少し先かもしれません。より力をいれて進化させていくプロダクトの1つとして米国で先行して広告などでテストしていますが、今は多様な企業、デベロッパーの方々を巻き込んで、一緒に作っていく段階と捉えています。すぐにマネタイズが起きるというよりは、アプリを買って楽しんでもらう入り口の段階、といったところでしょうか。

 ただ、今後のメタバースという文脈では、アプリの中に留まるのではなく、お互いに行き来できる体験になっていきます。今は想像もしていないようなビジネスが多く生まれてくることでしょう。

Oculus Quest 2と味澤氏
Oculus Quest 2と味澤氏

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