米国時間1月18日の朝、目を覚ますと、Microsoftがまたもや大手ゲームパブリッシャーを買収することが報じられており、週の初めから困惑してしまった。買収される企業はActivision Blizzardで、買収金額は670億ドル(約7兆6600億円)を超えるということを知って、さらに困惑した。しかし、Microsoftは今回の買収について、「Xbox」とサブスクリプションベースサービス「Game Pass」にとっての勝利と評しているだけではなさそうだ。Microsoftの最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella氏は、Activision Blizzardの買収を、メタバースに向けた動きだともみなしている。
公式のプレスリリースには、「この買収は、モバイル、PC、ゲーム機、クラウドにまたがるMicrosoftのゲーム事業の成長を加速させ、メタバースの基礎的要素となるだろう」と書かれている。
だが、ちょっと待ってほしい。Facebookが2021年秋に社名をMetaに変更して以来、メタバースは、あらゆるものに関して、過剰に宣伝されるキャッチフレーズになっており、その傾向は加速する一方だ。「ゲームはメタバースである」という考え方の流行についても、同じことが言える(確かに、ゲームの世界では、すでに多くの人々がバーチャルな生活を送っている)。
Activision Blizzardの買収(手続きが完了するのは早くても2023年6月)という今回の動きは、メタバースに向けた動きなのだろうか。それとも、ゲームやコンテンツなど、あらゆる場所ですでに起きていることの延長線上にあるのだろうか。この動きを「メタバース」関連だと決めつけるのは、たやすいことだ。筆者もそうしてしまっている。しかし、水面下で起きていることに注目すれば、本当の狙いを推測できるかもしれない。
メタバースに関する未来のビジョンの大半(Facebookのものも含む)は、あらゆる人が参加する大規模な共有宇宙のようなものをうたっている。確かに、インターネットもそれに似ているが、誰もが同じ時間に同じ場所にいるわけではない。筆者はこの2年間、Microsoftの「AltspaceVR」でバーチャル開催されたイベントの「Burning Man」に参加してみたが、依然として、同時に同じ空間にいることのできる人数が上限に達してしまうと、並列する別のインスタンスに送られてしまうことが分かった。「Second Life」の制作者であるPhilip Rosedale氏が筆者に話してくれたところによると、それこそ、何年も前から存在するSecond LifeでRosedale氏が解決しようとしている大きな問題だという。
Activision Blizzardの最も人気のゲーム、つまり、ニュースで大きく取り上げられているゲームはすべて大規模なマルチプレーヤー型のものであり、ほとんどはeスポーツに重点を置いている。「Call of Duty」や「World of Warcraft」「ハースストーン」「Starcraft」「オーバーウォッチ」は、オンラインでつながり、競争できるプラットフォームとなっている。Epic Gamesは「Fortnite」をメタバースと呼んでいるし、Microsoftはすでに「Minecraft」とAltspaceVRにそれぞれメタバースを有している。
仮想現実(VR)または拡張現実(AR)のヘッドセットが普及するかもしれない未来の世界はさておき、Microsoftは競争の激しいモバイルゲームという、非常に現実的で目の前にある分野もターゲットにしているようだ。Nadella氏は投資家との電話会議で、「メタバースがどんなものになるのかという将来像について、われわれは、単一の一元的なメタバースが登場することはないし、登場すべきでもないと考えている」と述べていた。「多くのメタバースプラットフォームをサポートするだけてなく、コンテンツやコマース、アプリケーションで構成される強力なエコシステムを作らなければならない。ゲームの分野では、われわれはメタバースについて、あらゆるデバイスでアクセスできる、強力なコンテンツフランチャイズによってつながれたコミュニティーと個人の集合体と考えている」
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