仮想世界を感じさせるスリップオン式振動グローブというアイデアは、昔から、仮想現実(VR)のSF的なビジョンの1つとして存在していた。Metaの研究部門は7年前から触覚グローブの開発に取り組んでいるが、開発されている最新のグローブは、今もなお持ち運びはできない。だが、それはいつか実現するかもしれない。
同社のReality LabsのリサーチディレクターであるSean Keller氏と、チーフサイエンティストであるMichael Abrash氏が、最近の進展について、筆者に語ってくれた。
Metaの膨張式空気袋を使用するグローブのプロトタイプは、将来登場するかもしれない消費者向けグローブへの一歩だ。とはいえ、このテクノロジーに改めて注目すると、「Quest」シリーズのVRヘッドセットの後継機に同梱されるようになるまでには、しばらく時間がかかりそうなことが分かる。
最新のグローブの設計では、マイクロ流体力学を利用し、グローブに並べられた空気袋を通して空気を押し出す。これは、グローブに多数の小型モーターを搭載する設計に比べると、概念的には難易度が低い。奇抜なアイデアであり、まるで、Metaが映画「DUNE/デューン 砂の惑星」のスティルスーツを参考にして、グローブを開発したかのようだ。
「われわれは、文字どおり素材の硬さを変えている」とKeller氏。「空気を使って指先で何かを上下左右や内側に動かしているように感じさせる(せん断力を発生させるのに役立つ)素材や、小さな空気袋を使って圧力を発生させるものもある」
Metaは、この触覚技術がこれまで不可能だったことをやれる水準まで進歩したと確信している。Facebook Reality Labs Researchは2017年、伸ばした指に、さまざまな素材のボールが落とされる感覚を作り出すデモを試みた。木製のボールは、ビー玉のボールや柔らかいスポンジボールとは異なる感覚を作り出す。そうした錯覚は、圧力をかける何百個もの空気袋(空気圧アクチュエーター)とVRからの視覚入力の組み合わせによって生まれたものだ。Michael Abrash氏によると、2D画面では同じようには機能しないため、これは拡張現実(AR)とVRに特化したテクノロジーであるという。
このテクノロジーは現在、研究所の中にとどまっているが、Metaの研究では、一体的な触覚レンダリングエンジンが必要であることが分かっている。
「手に多数の空気袋などのものが乗っかっており、それぞれにチューブが付いている。次のプロトタイプでは、それらの数が10倍に増えるだろう。システムの観点から、それは、大きな問題になる。将来、マイクロ流体マイクロプロセッサーのようなものが開発されなければ、その問題を解決することはできない」(Keller氏)
Metaは耐久性の面で適切な素材を作り出す方法にも取り組んでいるので、将来的には、このグローブを研究所の外の世界のどこかで着用することが可能になるかもしれない。しかし、現在のところは純粋に研究段階にある。
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