過度の期待と興奮という名の列車がまもなく出発する。出発地は(またしても)クパチーノだ。
2022年はAppleにとって忙しい年になるだろう。うわさを信じるなら、1984年の初代「Macintosh」、1999年の初代「iMac」、2007年の「iPhone」に匹敵する、新たなテクノロジー製品が登場することになる。
今回の主役は、Appleを「AR/VRグラス」という新たな領域に導くことになる。
Appleにとって、この数年間で最も野心的な取り組みの1つだと言われるこのプロジェクトは、拡張現実(AR)と仮想現実(VR)に関わるものだとうわさされてきた。ARは現実世界の映像にコンピューターの情報を重ねて表示するもの、VRはスクリーンで視界を覆うことで、コンピューターで作られた世界に入り込んだかのように脳を錯覚させるものだ。具体的に言うと、Microsoftの「HoloLens」がARの例、Metaの「Quest」がVRの例となる。HoloLensは、米石油大手Chevronが現場の技術者が点検や修理を行う際の情報共有に活用している。一方、Questは没入感のあるゲームや体験を提供するために活用されている。時間制限内のクリアを目指すパズルゲーム「SUPERHOT」やアクションゲーム「Vader Immortal: Star Wars」はその一例だ。
Apple製ヘッドセットに関するリークやうわさは、超高速ワイヤレスネットワークや超精細な映像表現など、主に製品仕様に関するものが多かった。しかし仕様以外の部分でも、この新製品には不明な点が多い。商品名は、その1つだ。ここでは仮に「iGlass」としておこう。
発売日も謎に包まれている。一時は2020年に発売されると言われていたが、情報筋がBloomberg等のアナリストに語ったところでは、現在は2022年に延期されているという。iGlassで何ができるのか、「Apple Watch」や「AirPods」のようにアクセサリーとして発売されるのかもまだ分かっていない。
アナリストや業界の専門家は、Appleの優位性はハードウェアよりも、むしろ洗練されたソフトウェアや、「App Store」や音楽ストリーミングサービス「Spotify」のようなオンラインサービスとの連携にあると指摘している。
「Appleが注目を集める理由は、優れたハードウェアデザインに限らない。アプリのエコシステムも強力な要因になっている」と、Creative StrategiesのアナリストCarolina Milanesi氏は言う。
Appleは新しい製品ラインだけでなく、大規模なアップデートも準備しているようだ。同社では現在、Macコンピューター用の次世代チップの設計、人気の「MacBook Air」やプロ仕様のデスクトップコンピューター「Mac Pro」の新モデルの開発、そして新型iPhone 14のデザイン刷新が進んでいると言われている。
しかし、最も注目度が高いのは、数年ぶりの大型新製品と目されるiGlassだ。Appleの新製品が成功するかどうかは、iPhoneとの連携にかかっているとアナリストは言う。例えば2010年に登場したタブレット「iPad」は、App Storeを利用できることが大きなメリットになっていた。また、Apple Watch(2015年発売)とAirPods(2016年発売)はiPhoneのアクセサリーとして販売された。
iGlassの登場は、VR/ARの未来や人々の生活との関わりについて、多くの議論を巻き起こすことになるだろう。Metaの最高経営責任者(CEO)Mark Zuckerberg氏は、2014年に30億ドルでVRヘッドセットメーカーのOculusを買収するなど、Reality Labsの活動に数十億ドルを投じてきた。この取り組みは今も続いているが、大きな注目を集めながら、肩透かしに終わったスタートアップの例もごまんとある。例えばMagic Leapは、大いに期待されていたARグラスを2018年に発売したが、売れ行きは悪く、2年後の2020年には人員整理を発表し、創業者のCEOが辞任した。
Appleにとって、iGlassは新たな製品カテゴリーへの挑戦を超える意味を持つ。アナリストや経営者の多くは、ヘッドセット型のテクノロジーが普及すれば、ハイテク業界は一変すると考えている。売上高の約半分をiPhoneに依存しているAppleの場合、iGlassは「Appleは次の主軸製品を見つけられるか」という問いへの答えになるかもしれない。
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