Olaは、製造業、複雑なサプライチェーン、バッテリー技術、消費者製品、モビリティー、あるいは電気自動車(EV)全般のどの分野でも全く経験がない、インドのライドシェア企業だ。先頃、そのOlaが、間違いなく世界有数のEV市場になる同国で、最初の100台の電動スクーターを納車した。
インドのEV市場におけるOlaの野心はきわめて壮大だ。EV車両数が現時点で12万1900台にすぎない国に、1年以内に200万台の電動スクーターを販売しようと計画している。実際には、こうしたEVのうちほとんどがスクーターだが、デリーに拠点を置くシンクタンク、Council on Energy, Environment and Waterによると、年間2000万台というインドの自動車販売台数に比べると、販売されているEVの総数は1.66%にすぎないという。
だが、Olaの創業者であり最高経営責任者(CEO)も務めるBhavish Aggarwal氏の意気込みはさらに高い。同氏によると、タミル・ナドゥ州に建てられた敷地500エーカー(約2平方km)に及ぶ同社の最新工場では、2022年までに電動スクーターの生産台数を年間1000万台にまで引き上げ、その後は電気自動車の開発にも着手するという遠大な計画があるというのだ。
企業の歴史上でも最大規模の魔法のように思えるかもしれないが、真の意味でこうした偉業を生んだのは、資金をめぐる魔法の力だ。しばらく前から、世界中の資本が集まる起業家の動きには、一定の傾向があった。歴史を振り返ってみると、ソフトバンクやTiger Capitalといった世界のファンドから資金を集めるうえで、製品や真のイノベーションに対する長年の情熱が成功の秘訣となったことは、ほとんどない。
それより重要だったのは、潤沢なキャッシュストックを活用して膨大な資金調達を行い、それを萌芽期の市場で利用して、強引に市場で優勢を築くことだ。損益計算書で損失が立て続いたとしても、それは株式上場という栄誉を勝ち取るためにやむをえない損害とみなされているのだ。
インドのEコマース大手FlipkartがWalmartに買収されたのも、そうした成功例の1つだ。Flipkartは、最終的に160億ドル(約1兆8000億円)で買収された時点で10年以上にわたって赤字を続けていたにもかかわらず、創業者たちにとってはドル箱となった。
Agarwal氏は、Uberのライドシェアモデルを模倣することで、Flipkartと同じ道のりを正確になぞってきた。だが、誰もと同じような出費と損失を重ねていたところで、コロナ禍がOlaの航路に立ちふさがった。2020年、Olaは全従業員の33%以上に当たる1400人を解雇するまでに追い込まれてしまったのだ。
それでも、Olaのライドシェア事業は成功し、電動二輪の開発・販売を手がけるグループ企業Ola Electricは今もなお雇用を続けていると報じられている。
Olaの電気自動車の夢が始まったのは、コロナ禍より数年前のことだったようだ。Olaは、1万台の保有車両全ての電動化を試み、それに失敗している。充電インフラの不足が関係していたとOlaはかつて語ったが、全般的な値段の問題もあった。結局のところ、ドライバーにとって電気自動車は高すぎたのだ。
にもかかわらず、新時代の経済戦略を通じて、Ola Electricはユニコーン企業、つまり評価額10億ドル(約1140億円)を超える企業となった。しかも、出だしでつまずいてから、わずか2年後のことだった。Aggarwal氏は、冷静でありながら確固たる意志をもつCEOのようで、FlipkartのSachin Bansal氏と同様、勝利の日を迎えるまで、勝利の日を迎えるまで、決然と舵をとり続ける構えだ。
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