筆者はドイツのハンブルクで夕食の予定に遅れていた。歩いたり、バスに乗ったりする時間はない。ライドシェアリングアプリの出番だ。
だが、筆者が即座に開いたのはUberやLyftではなく、「MOIA」というアプリだ。アプリの指示に従って、通りを横断した。9分後に運転手がここに到着するという。予定通りに、金色の大型バンが目の前に停車し、サイドドアが開いた。「Sharaさんですね」と、ドライバーから確認を受けつつ、しゃれたクリーム色の座席に腰を下ろし、周りを見渡した。
広々とした車内は天井の白い照明で柔らかく照らされており、車体に屋根がないような錯覚に陥る。筆者は、車内のほかの乗客から顔を隠してくれる幅の広いヘッドレストにもたれかかった。目の前に取り付けられているモニターの情報によると、これから別の乗客を降ろして、新たな乗客を乗せる予定で、筆者の目的地への到着時間は今から15分後だという。
この体験は、高級であることを除けば普通のライドシェアリングサービスとそれほど変わらないように聞こえるかもしれない。だが、2018年7月にハノーバーで提供が開始され、6カ月前にハンブルクにも進出したMOIAは、Volkswagenが子会社として運営している。
この数年の間に、環境に優しく快適な移動というニーズに応えようとする新サービスがいくつか登場しており、MOIAもその1つにすぎない。ライバルの「CleverShuttle」は、先頃、ハンブルクを含む3つの都市から撤退したものの、現在ドイツの6つの都市で事業を展開している。「UFODRIVE」は18カ月前にルクセンブルクで事業を開始し、スマートフォンアプリ経由で電気自動車を素早くレンタルできるサービスを提供している。さらに、BirdからUber傘下のJumpまで、電動キックスクーターや電動自転車のシェアリングを手がけるさまざまな企業が、世界中の多くの都市に進出している。
多くの点で、MOIAは相乗りサービスの「UberPool」や「Lyft Line」に似ている。ユーザーはアプリ経由で自動車を呼び、乗車場所と目的地を設定すると、アプリが、ユーザーに乗車料金のほか、目的地への到着予定時刻、ドライバーの到着場所と時間を知らせてくれる。
サービス内容が似ている点は、ここまでだ。ドライバーが独立した請負業者であるUberやLyftと異なり、MOIAのドライバーは雇用されており、利用される自動車は特別に設計されたVolkswagenの電気バンだ。1台のバンには6人の乗客が乗車可能で、無料のWi-FiとUSB充電ポートが提供される。ドライバー個人の自動車が使われることの多いUberやLyftに比べると、贅沢なサービス内容だ。個々の豪華な座席は、各乗客に十分なスペースを与えてくれる。そして、乗客の頭を包み込むヘッドレストは、騒音を遮断してくれる。
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