インドの高い経済成長率を背景に、同国のスタートアップが世界中から注目され、投資が集まってきている。ソフトバンクはこの先10年間でインドに1兆円規模の投資をすると表明しているが、その主な投資先はスタートアップである。今回は注目のスタートアップを3社紹介したい。
日本では路上で簡単にタクシーを捕まえることができ、規制も厳しいため、タクシー配車アプリ「Uber(ウーバー)」は思ったほど普及していない。一方、インドのデリーでは、オートと呼ばれる三輪タクシーを路上で捕まえることはできるが、四輪のタクシーはなかなか捕まらない。そういった背景もあり、Uberは早くから同国でサービスを展開してきた。
しかし、2014年12月にUberの運転手が乗客をレイプする事件が起こり、デリーでは一時営業停止処分になった。同社はその後、運転手の身元確認などで安全面の強化をしてきた。2015年には無料クーポンを配布しており、タクシー配車サービスの利用者が急増したと思われる。
「Ola Cabs(オラキャブ)」はインド版のUberだ。車の種類は、普通車(セダン)から三輪車(オート)まで選ぶことができる。初乗り4キロで100ルピー(200円)程度である。また、事業展開もタクシー配車サービスに留まらず、Ola CafeやOla Storeなどのデリバリーサービスを立ち上げている。Ola Moneyという電子マネーも提供しており、それを軸に新規サービスを展開していくようである。
インドの高級ホテルは、クオリティが高く世界的に見てもランキングで上位にいる。一方で、安いホテルも多数存在する。
私も利用したことがあるが、シーツが湿っていたり、お湯が出なかったり、Wi-Fiがつながりにくかったりと不満は多い。そこに目をつけたのが、CEOが弱冠22歳の「OYO Rooms(オヨ ルームズ)」である。
彼らは提携先のホテルを審査し、一定のサービスをクリアした場合にOYO Roomsの看板を与えるという仕組みをとった。顧客はアプリを通じて予約やレビューを書き込めるようになっている。私が住んでいるエリア周辺でも、OYO Roomsの看板が増えてきた。
価格は1泊1000ルピー(2000円)からとリーズナブルである。既存のホテルやアパートを利用したシェアリングエコノミーサービスであり、ホテル界のUberとも言えよう。
インドでの買い物は一苦労である。近所の商店では品揃えが悪く、冷蔵設備がないので生鮮食料品の鮮度が悪い。週末に大型ショッピングモールに行こうとすると車の大渋滞に巻き込まれる。それらの悩みを一気に解決してくれたのが、「Grofers(グローファーズ)」だ。
Grofersは、オンラインで商品をオーダーすると、90分以内に届けてくれる画期的なサービスである。実際にはバイク便が提携先のストアに向かい、そこで商品を受け取り、顧客まで届けてくれる個人向けのバイク便サービスだ。
最近は取扱商品が、生活雑貨や食品に加え、電気製品、ベビー用品、ペット用品などに広がっている。
ここで紹介したスタートアップの中には、日本やグローバルから見れば、似たようなサービスも存在している。ただし、他国との大きな違いは徹底したローカライズである。インドならではの課題に立ち向かっており、インド在住の日本人ですら、どんどん便利になってきていると感じるレベルである。
その一方で、人口100万人以上の都市が50近くあるインドにおいて、複数都市での展開を始めた時に、サービスのクオリティを保つことができるのかという懸念もある。
今後、インドにも世界中からさまざまなサービスが上陸してくると思うが、どこまでローカライズできるかが肝になってくるだろう。
佐々木誠
マイクロアド・インディア 代表。2012年よりインド・デリー在住。
大学卒業後、商社に勤務後、2000年にサイバーエージェントに入社。
ネット広告事業に営業担当として携わり、「Ameba」の立ち上げや新規事業にも参画。
2012年マイクロアド・インディア代表に就任後、ディスプレイ広告の配信プラットフォーム「MicroAd BLADE」を主力サービスとしてインド企業や日系企業を開拓中。
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