大混乱に陥ったアフガニスタンの首都カブールで、米国大使館の上空を飛ぶヘリコプターの写真と、その前に立つCNNの記者。画像の下には、「Violent but mostly peaceful transfer of power」(暴力的だが、概ね平和な権力移譲)というテロップが付いている。
CNNの報道番組をキャプチャーしたように見えるこの画像は、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアで広く拡散され、信ぴょう性に疑問が投げかけられた。これがどうして平和な権力移譲といえるのかといぶかる人もいた。このテロップは風刺のつもりだったのだろうか。
結局、この画像は偽物だと分かった。
ReutersとPolitiFactは画像のファクトチェック(事実検証)を行い、これまでの多くの偽画像と同様、デジタル的に改変されたものと結論づけた。改変された画像は、2020年にウィスコンシン州ケノーシャで起きた警察官による黒人男性銃撃事件で、警察に対する抗議デモについて報じたCNN特派員Omar Jimenez氏が映った画面を利用していた。当時、保守派の中には、CNNが「Fiery but mostly peaceful protests after police shooting」(警察による発砲の後、火の手も上がるが概ね平和な抗議)というテロップを入れたことを批判する人もいた。
改変された画像や動画は、この数年FacebookやTwitterを悩ませてきた。2019年には、Nancy Pelosi米下院議長が酩酊しているように見せかけた改変動画が問題となった。今回、米国が20年に及ぶ戦争から部隊の撤退を進めたことで、急速に混乱に陥ったアフガニスタンから現地の情勢が伝えられる中で、この問題があらためて急浮上している。ソーシャルメディア各社はこれまでと同様に、ラベルや警告で、偽造されたコンテンツについてユーザーに注意を促している。
FacebookとInstagramでは、今回のCNNの画像は改変されたものとしてラベル付けされたようだ。CNNの偽のテロップは、別の映像を使ったYouTubeの動画のタイトルにも使われているという。改変された画像はTwitterでも拡散したが、Twitterではラベル付けされていないようだ。YouTubeも動画にラベル付けしておらず、この動画は規則に違反していないとしているという。
Instagramの責任者Adam Mosseri氏は、Bloomberg Televisionの取材に対し、米政府の制裁対象であるタリバンは、同社のポリシーで定める危険な組織に該当するため、タリバンを宣伝する投稿を禁止していると述べた。
ソーシャルネットワーク各社は、プラットフォーム上の生々しい画像を含む不快なコンテンツなどを監視しているが、アフガニスタンでの混乱は、各社がこれまで何度も経験してきた課題をあらためて突きつけている。Facebookに投稿された動画の中には、飛行機にしがみついた人たちが落下する様子を撮影したものもある。こうした動画は、Facebookの規則には違反していないものの、暴力的または生々しい内容が含まれている可能性があるとしてユーザーに注意を呼びかけている。TwitterやTikTokでは、同様の動画がラベルなしで公開された。
Facebookの広報担当社は、同社は「アフガニスタン国民やダリー語、パシュトー語を母国語とする人々を含む」専用のチームを有しており、状況をリアルタイムで評価していると話した。また、Facebookは危険な組織に関するポリシーの下、タリバンを禁止していると述べた。「米国の法の下でテロ組織として制裁対象となっている」ためだという。
Twitterは、暴力的な組織や不快なコンテンツに対する同社のポリシーについて示した。タリバンのZabihullah Mujahid報道官がTwitterを利用できるようになっていることについて、一部の保守派から批判の声も上がっているようだ。同社は、このアカウントがルールに批判したかどうかという質問に回答していない。Twitterは偽情報の拡散を防止する手段として、コミュニティーフォーラム「Birdwatch」をテストしている。ユーザーが誤解を招くツイートにフラグを立て、参考になる背景情報を追加することができるというものだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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