「就活で大学の授業を休む」は海外ではあり得ない--日本の新卒採用が陥る悪循環  - (page 2)

草深生馬(RECCOO COO兼CHRO)2021年08月12日 09時00分

「学生の相手は若手社員にさせる」という悪しき慣習

 時代遅れの新卒採用の「仕組み」から抜け出せない原因が、もう1つあります。それが、日本企業特有のジョブローテーション制度です。この制度は、終身雇用制を前提とした組織では、ジェネラリストの育成や、社内リレーションの強化といったメリットがありますが、一方で「スペシャリストが育ちにくい」という大きなデメリットがあります。これは新卒採用についても言えます。つまり、「新卒採用のプロ」が社内で育ちにくいのです。

 学生にとっては、接する相手として若手社員がいることは、その企業への「親しみやすさ」につながります。そのため新卒採用担当に入社1〜3年目の若手社員をアサインしている企業が多いのです。そして早ければ1年程度でまた新しい若手社員に交代します。ところが新卒採用には足掛け2年程度の計画が必要な点は上述の通りですから、この若手社員を次々のアサインする短期ローテーションでは、知見が社内に蓄積されていきません。さらに言えば、蓄積された知見をもとに採用戦略に磨きをかけ、担当者一人ひとりが専門的知識やスキルを深め、工夫を凝らし、採用活動の習熟度を上げていくには何周も採用活動を経験する必要があります。

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 たとえば、「面接」は非常に難度の高い業務で、専門スキルとしてもっと評価されるべきです。学生の人物像を理解し、本音を引き出し、能力を見極め、その人の人生に大きく関わる「採用可否」を判断するのですから、生半可な仕事ではありません。自社事業や業務への深い理解はもちろんのこと、会話だけでなく表情などからも多くの情報を読み取る非言語コミュニケーション能力、本音を引き出す雰囲気づくりやファシリテーション力、学生をゲストとして適切にもてなすマナーやアピアランス(印象作り)など、多岐にわたる知見が必須です。

 これだけの専門性を、短期のジョブローテーション制度で身に付けるのはほぼ不可能と言っていいでしょう。専門性が身につかない→既存の「仕組み」に頼らざる得ない→余計に専門性が社内に蓄積されない→「仕組み」を変革できないまま毎年膨大な業務に忙殺される、という悪循環に陥っていくのです。

「個性と向き合えない企業」に未来はない

 今回は、日本の新卒採用の現場で何十年も回り続けてしまっている「仕組み」を考察してみました。なぜこのような仕組みが生まれて定着したのか? なぜ時代に合わなくなったいまも仕組みから脱却することができないのか?そのあらましをざっくりとでも理解していただけたでしょうか。

 いまは企業が人を選ぶのではなく、人が企業を選ぶ時代です。それはグーグルのような「人気」と言われるグローバル企業でも同じでした。その個性を思う存分組織の中で発揮してくれる「人」に選んでもらえなければ、組織に未来はない。その感覚はグーグルの新卒採用担当者だった時から、自分の中に強くありましたし、いま一介のベンチャー企業で働くようになってからは、より強烈に危機感を持つようになりました。

 ジョブ型の採用を取り入れる会社も近年どんどん増えている中で、いままで以上に個々人の才能を見出し、それが生きる仕事を用意すること、そして適切なマッチングを演出することが求められます。それを確実に実行しなければ、もはや企業は生き残れないと思います。現行の就活システムそのものが、個性にあふれた人材の「入口」として、もはやまったく機能しなくなっていることを認識するべきです。いち早くいまの「仕組み」から抜け出さなくては、日本企業全体が危ういと痛感しています。

 次回は「仕組み化」が進んだ日本の就活市場でも、特に「面接」をテーマに取り上げ、現状の課題やあるべき姿について、私の考えをご紹介したいと思います。

草深 生馬(くさぶか・いくま)

株式会社RECCOO COO兼CHRO

1988年長野県生まれ。2011年に国際基督教大学教養学部を卒業し、IBM Japanへ新卒で入社。人事部にて部門担当人事(HRBP)と新卒採用を経験。超巨大企業ならではのシステマチックな制度設計や運用、人財管理、そして新卒採用のいろはを学んだのち、より深く「組織を作る採用」に関わるべく、IBMに比べてまだ小規模だったGoogle Japanへ2014年に転職。採用企画チームへ参画し、国内新卒採用プログラムの責任者、MBA採用プログラムのアジア太平洋地域責任者などを務めるかたわら、Googleの人事制度について社内研究プロジェクトを発起し、クライアントへの人事制度のアドバイザリーやプレゼンテーションを実施。

2020年5月より、株式会社RECCOOのCOO兼CHROに着任。「才能を適所に届ける採用」と「リーダーの育成」を通して日本を強くすることをミッションに掲げる。現在は経営層の1人として自社事業の伸長に取り組みつつ、企業の中期経営計画を達成するための「採用・組織戦略」についてのアドバイザリーやコンサルテーションをクライアントへ提供している。

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