「ググる就活」が生んだ罪--元Google人事が抱く「日本の就活」の違和感

草深生馬(RECCOO CHRO)2021年07月02日 09時00分

 新型コロナウイルスの蔓延にともない急速にオンライン化が進んだ日本の就活。それまでもいわゆる「経団連ルール」の廃止が決まり、ジョブ型採用も解禁に向けて動き出すなど、就活スタイルが急速に変化しつつありました。

 この先、日本の就活はどうあるべきなのか?労働力人口の減少が続く採用難の時代に、企業はいかにして、「優秀な新卒」をリクルートすべきなのか?

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元Google Japanの人事である草深生馬氏(現RECCOO COO兼CHRO)

 この連載「元Googleの人事が解説--どんな企業でも実践できる『新卒採用』の極意」では、Google Japan(グーグル)で新卒採用を担当していた草深生馬(くさぶか・いくま/現RECCOO COO兼CHRO) が、新卒採用マーケットにおける課題や違和感、そして今後の展望などをお伝えしていきます。

「ググる就活」が生んだ罪

 「ぶっちゃけ就活って、どうしたらいいんですか?」

 よく大学の後輩からのOB訪問を受けていた私が、頻繁に聞かれた質問です。

 生まれて初めての就職活動をこれから始めようという学生からすれば、当然の質問だと思います。とりあえずスーツを買えばいいのか。会社説明会にはどうやったら参加できるのか。面接では何を聞かれるのか……などなど、いざ就活を始めると一気に浮上する疑問の数々。大学の先輩であり、なおかつ名の知れた外資企業の新卒採用担当でもある私の元には、そんな素朴な質問が毎年たくさん寄せられました。

 そして、その度に私は日本の就活に対する強い違和感を覚えるのでした。その違和感とは、「就活には正しいやり方があり、それを間違えるともう二度とチャンスが得られない」という強迫観念に近い学生の心理です。

 それもそのはず。今やインターネットでまさにググれば、ありとあらゆる就活ノウハウが手に入り、「どんなふうに就活に臨めば、内定を得られるか」の方法論で溢れ返っています。エントリーシートに書くべき“ガクチカ”、グループディスカッションの立ち回り方、面接で話すべきエピソードなど。さらにそれぞれの項目が業界別、企業単位で研究され、公開されている状態です。

 これだけ方法論が先走れば、当然学生たちも「ゲームルール」に従って行動するようになります。よっぽどのツワモノでなければ、わざわざルールから逸脱しようという思考には至らないでしょう。結果、「個性」は埋没していくのです。

疲弊する新卒採用の担当者たち

 こうした学生側の動きに対して、企業はどう対応しているのか?「ゲームルール」に従い続ける学生の強迫観念を解いて、それぞれの個性を正しく見極めようとしている企業がどのくらいあるか? 

 答えは、残念ながら「ほぼない」のが現状です。企業も「ゲームルール」に則った就活に終始し、さらに言えば採用の現場は疲弊しています。具体的には、毎年とにかくたくさんのエントリー数を追いかけ、「大学偏差値」や「リーダー経験の有無」といったざっくりとした要件でふるいにかけ、「志望動機は?」「学生時代に取り組んだことは?」「強みと弱みは?」といった面接質問を繰り返し、「返答の流暢さ」をよしとする。

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 3月から5月にかけて何千、時に何万というエントリーシートに目を通し、6月の選考解禁以降は最初の1週間で数百もの面接をセッティングし、やっと内定受諾に至ったとて、「辞退」を抑止するために翌年4月の入社まで神経を尖らせる……。さらに、就活の早期化は顕著で、今年で言えば2022年卒の大学生向けの選考が始まる遥か前に、2023年卒向けのアプローチを始めている企業が多くいるのが現状です。

 そんなふうに「ゲームルール」に随って、息つく暇もなくさまざまなKPIを追い続けることに徒労感を覚えている、そんな企業の新卒採用担当者は珍しくありません。

 つまり、学生も企業も本来は存在しない「一般解」を追い続けていることに、日本の就活の課題が凝縮されているように思えます。そして、その「解」から少しでも逸脱した途端、学生が自分の「才能」を伝えるチャンスも、企業がそれを見出し組織の中で活かすチャンスも失われてしまっているわけです。

「グーグルだからできたんでしょ」とは言わせない

 こう書くと、身も蓋もないように聞こえてしまうかもしれませんが

 就活に「正しいやり方」はない。

 これが、この先の日本の就活を設計する上で、一番大切な根本思想だと私は考えています。学生の側は「就活は一生に一度しかないから失敗したくない」という思いから、企業の側は「目標採用数を達成しなくてはいけない」という思いから、双方ががんじがらめになってしまっている「ゲームルール(一般解)」をいったん脱ぎ捨てる。そして、どんな方法であれ、目の前の人の「才能」にとことん向き合い続ける。究極的にこれしかないというのが、グーグルで新卒採用に携わり続けてきた私の結論です。

 元グーグルという肩書きで発信すると、すぐに「それはグーグルだからできたんでしょ」というツッコミが返ってきますが、そんなことはないと勇気をもって断言させていただきます。この連載でお伝えしていく考え方や方法論は、知名度や規模感に関係なくどこの企業でも実践できるものだと信じています。そう信じているからこそ、現に私は今、グーグルからHRベンチャーに飛び込んで日本の新卒採用マーケットを変革すべく取り組んでいるところです。

企業は「学生の才能」に蓋をさせていることに気づくべき

 さて、話を戻しましょう。学生も企業も「ゲームルール」に凝り固まってしまっている現状について書きましたが、では、どちらが先に変わるべきか? 

 それは当然ながら企業の方です。「最近の学生は面接でも通り一遍の回答ばかりで個性が見えない」と嘆く前に、自分たちがその学生に通り一遍の回答をさせてしまっていることに気づいて欲しいのです。実際、どれほどの企業が、立て板に水で型通りの志望動機を繰り返す学生に「本当にあなたのやりたいことは何?」と立ち止まって尋ねることができているでしょうか。そして、どれだけの学生が、この質問に対して正直に自分らしく回答できる心理的安全性を確保できているでしょうか。

 学生の側が内面化してしまっている就活の「ゲームルール」は、思いのほか強固です。漠然とした不安や強迫観念に、ゼミやサークルのOBOG、そしてネット上の不特定多数の「先輩」から脈々と伝えられる「正しそうな方法論」が植えつけられ、その上でしか思考できなくなっています。「自分にしかない個性=才能」に気づくより先に「型」を覚え、それで「才能」に蓋をしてしまっているのです。

 言ってしまえば、今の就活は終始「当事者不在」のまま進められています。

 学生は「当事者」である自分について何も知らないまま就活を始め、「当事者の魅力」を表現する手段も機会もないまま選考が進んでいきます。そして企業も、「当事者」を直接見ようとしないまま、ESや面接で淡々と「処理」してしまっている。ここまで「当事者不在」の状態では、真の意味でマッチングを図るのは至難の業。新入社員の3人に1人が、入社後3年以内に退職に至ると言われる昨今の状況もうなずけます。

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