約450サービスを分別した「不動産テックカオスマップ最新版」発表

 一般社団法人 不動産テック協会は、「不動産テックカオスマップ最新版(第7版)」を7月8日発表した。2020年に発表した第6版から約90のサービスを追加し、450程度をカテゴリー分けして紹介している。傾向や注目しているカテゴリやサービスについて、同日開催されたオンラインでの発表セミナーで解説した。

「不動産テックカオスマップ最新版(第7版)」
「不動産テックカオスマップ最新版(第7版)」

 不動産テックカオスマップは、2016年6月に第1版を発表。その後1年にほぼ1度(2018年のみ2度)の改訂を重ね、今回最新版が登場した。過去のカオスマップについては、不動産テック協会のウェブサイトにて確認できる。

 不動産テック協会 代表理事(リマールエステート 代表取締役社長)の赤木正幸氏は「業務支援、VR/AR、価格可視化などのサービスが増え、今までとは違う動きがあった。シェアリングや業務支援系は毎年コンスタントに増えていたが、今回は非対面など、リモートワークを後押しするようなサービスが増えてきている。また、技術が普及してきたためか、以前は難しいとされていた不動産情報の価格可視化サービスを始める新規の会社が増えてきた」と振り返った。

 新たな注目領域として「システムを自前で作らなくてもサービスが提供できているようになってきている」(赤木氏)とし、不動産クラウドファンディングサービスなどのシステムを提供する企業が増えてきたことを指摘。「不動産事業者が自分たちがやってきたサービスを踏まえ、テックサービスとして展開し始めるパターンが増えてきた」とコメントした。

 また、6月にウェブサイト、アプリの運営終了を発表し、KC Technologiesに事業承継した不動産賃貸事業「OYO LIFE」ついては、「鳴り物入りで日本に上陸したが、日本独特の障壁もあったと思う。このあたりに不動産テック事業の難しさがある」と触れた。

 セミナーの後半では、不動産テック協会 顧問(NTTデータ経営研究所シニアマネージャー) の川戸温志氏、理事(コラビット 代表取締役社長)の浅海剛氏、代表理事(リーウェイズ 代表取締役)の巻口成憲氏、理事(サービシンク 代表取締役)の名村晋治氏を迎え、パネルディスカッションを開いた。

 赤木氏がこの1年間における不動産テックの変化についてたずねると、浅海氏は「コロナ禍という厳しい状況だったが、みなさん耐えしのいでいる印象。撤退は最小限にとどまっていると思う」と現状についてコメント。さらに巻口氏が「不動産テックという単語が市民権を得たレベルになってきていると感じる。テクノロジーを使ったサービスが浸透しやすい土壌が整った。中でもVRはこの1年で急速に増え、オンライン型サービスも使いやすい環境になってきた」と、不動産テックが成熟期に入ってきたと明かした。

 名村氏も「中〜大手の不動産会社が業務支援サービスに対して、だいぶ前のめりになってきた。どんなサービスがよいのか、どんなことができるのかなど相談されるケースが増えてきたように思う。一方で、会社名やサービス名を知らなければウェブサイトで検索はできず、サービスは増えているのに使っていただく側にうまく伝わっていないように感じる」と認知拡大に対する課題を話した。

 川戸氏は「スタートアップと大手不動産の協業の増加、在宅ワークの普及によるリモート関連のサービスの普及、海外サービスの日本進出とこの1年で3つの変化を感じた」と分析。加えて「コロナ禍で在宅時間が増え、株式、不動産投資をする人が増えた」とし、投資領域に注目が集まっていることを示した。

 次に気になるカテゴリーやサービス、企業について問うと、浅海氏は「個人的には新しくはじまったマッチングサービス」とし、巻口氏はオーストラリアの不動産テック企業でバーチャルステージングなどを手掛ける「BoxBrownie.com(ボックスブラウニー・ドットコム)」を挙げ「便利そうで価格も安く、サービスの質も高い。バーチャルステージングの認知度はまだ伸びると思っている」とコメントした。

 名村氏は「この1年投資系不動産を手掛ける会社から、多くの話しを聞いたのがクラウドファンディング」と実体験を交え話し、川戸氏は「価格可視化や物件情報など、一社で査定するのではなく、各社を横串で刺して全部のサービスの平均値をとるといったサービスに注目している」とした。

 これから1年間の不動産テックの変化について、浅海氏は「小さな淘汰がはじまっていくと思う」とし、巻口氏も「テックサービス側はそろそろ淘汰される時期になる気がしている」とコメント。名村氏は「不動産テックサービスをどう使うかに踏み込むように軸足をもっていかなければならない」と不動産テック企業側からの見方を示した。

 川戸氏は「変化があると思うのはオフィスや、住宅周りでほかの業界と交わる部分。家の中まで宅配が届くような世界観が今後進むではないかと思う。もう一つは商業や物流とのつながり。不動産を中心に物流やスマートシティなどの業界全体がテックに進んでいくような波を感じている」と不動産の周辺も含めた変化について話した。

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